見出し画像

悲しみを乗り越えたその先に幸せが訪れる ~AKB48『Green Flash』~

ノスタルジーを感じさせてくれる美しいメロディのミディアムバラード。
格調の高さを感じさせてくれるストリングスとラップとの取り合わせが、独特な雰囲気を醸し出している。

「見たり聞いたりしたことで印象に残るフレーズなどは、どこか記憶の片隅に残っているもので、作詞しているときにそういったフレーズがふと思い出されて、そのフレーズを詞の中で使うこともある」といったようなことを、いつだったか秋元Pが話していたことがありましたけれども、「Green Flash」もそういったフレーズのひとつなのでしょう。

2番のラップ部分の歌詞には、

いつか観た古いフランス映画
その中で言っていたそれが
太陽が沈んでく瞬間
最後まで残る緑の光
それを見たらしあわせになれる

とありますけれども、おそらくこれも秋元Pの実体験なのでしょう。
古いフランス映画を観ていたときに「Green Flash」という現象があることを知ったという。
「Green Flash」という珍しい自然現象を説明するために、この体験をそのまま詞の中にさりげなく紛れ込ませたといったところでしょうか。
「Green Flash」と言われても、知らない人にとっては、なんのことやらわからないでしょうからね。

ところで、ここでは「Green Flash」というフレーズは出さずに、

その中で言っていたそれが

とか

それを見たらしあわせになれる

とか、何やら謎かけをしているような物言いをしている。
そして「それ」が何なのかは、歌詞の最後になって初めて出てくるわけです。
こういった言葉の操り方は上手いですよね。

この曲はまぎれもなく失恋ソングなのですけれども、1番の歌詞を見てみると、

別れの日近づいたことくらい
わかってたはずなのになぜつらい?
本当は好きだったんだろ?
恋だって認めなかった feel low

とありますから、恋人同士の別れではなくて、片思いのままそれぞれ別の道を歩むことになったという状況なのではありませんかね。
考えられるのは、高校卒業といったようなシチュエーションでしょうか。
この曲は3月リリースということでもあり、歌詞の内容からしても、卒業ソングであると言ってもよいのでしょう。

さて、この曲の肝になっているのは、Cメロの歌詞

涙がいっぱい流れるのは心を消毒してるんだ
つらくなるだけの恋のウイルスは洗い流してしまおう

ということになるのでしょう。
MVを制作した是枝監督も、テーマを一言で表すなら「浄化」だとコメントしていますけれども、おそらくここのフレーズを意識してのことなのではありませんかね。

ここの歌詞は以下のように続いている。

失恋をしたその数だけ 人は誰かと出逢うんだ
その不安に負けないで Just get stronger

つまり、つらいことや悲しいことがあったら涙を流せばいい。
涙で洗い流したら、少し強くなって前を向いて歩き出していける。
と元気づけてくれているわけです。

そして歌詞の最後に、

もう少し強くなれたら
そうきっと君にも見える
しあわせが君にも見える
Green Flash

とあるように、いくつもの悲しみを乗り越えたその先で、最後にはきっと幸せが訪れるということを、太陽が沈む最後の瞬間に見られるという「Green Flash」で象徴させている。

ところで、卒業をテーマにしたAKBの曲には、『桜の花びらたち』をはじめとする一連の桜ソングや『GLVE ME FIVE』などがありますけれども、この『Green Flash』は、他の曲に比べて歌われる機会があまりないような気がする。
とても良い曲だと思いますので、もっと歌われても良いのではありませんかね。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「Green Flash」 (2015年)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?