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君の目に映る世界

好きな人がカメラを買った。

149万円もするカメラである。
毎月の収入をクッキーで得ている(という設定の)彼からしたらとんでもない買い物である…と言いたいところだが、彼はとんでもない量のクッキーを得ている事が容易に推察される為、そこまで苦しい買い物という訳ではないのだろう。
カメラを趣味にする、と息巻いているものの彼は好奇心旺盛だが飽きっぽいところがあり、このカメラを何処まで活用するかは未だ不明である。
少しは活躍し、願わくばその写真が私達ファンの目にも触れれば良いのだけれど。

写真を撮るのが好きな人ばかりが好きだ。
彼らは写真を撮る。そして時折私達ファンの目に触れる場所でそれを披露してくれる時がある。
それは会員しか見られない有料サイト内のブログだったり(SixTONESのメンバーである森本慎太郎や髙地優吾、SUPER EIGHTのメンバーである丸山隆平は個人ブログ『もりもとーく』『優吾のあしあと』『丸の大切な日』に自身が撮影した風景写真を掲載する事がある)、自身のInstagramアカウントだったり(King & Princeのメンバーである永瀬廉やtimeleszのメンバーである松島聡は自身のInstagramアカウントに時折風景写真を投稿する事があるし、NEWSのメンバーである増田貴久は時折私物の洋服やアクセサリーの写真をInstagramに投稿している)、時には写真やカメラをテーマにした雑誌である事もある(NEWSのメンバーである加藤シゲアキの撮影した写真は時折『GENIC』という雑誌に掲載される事がある)。
King & Princeのメンバーである髙橋海人の様に自身が撮影した写真をあまり公開しない人も居る。でも見せるか見せないかは正直どうでも良い。良くはないけれど。
その自慢のカメラで何かの写真を撮り続けているのであれば、それで十分だ。

好きな人の撮る写真が好きだ。
勿論彼ら自身が写る写真も好きだけれど、実は私は彼らが写る写真より彼らが撮る写真の方が好きなのだ。もしかしたら私はかなり変わったファンなのかもしれない。
だから私はSixTONESのメンバーであるきょもこと京本大我が「見習いアーティスト」という名前でInstagramを始めた時嬉しかった。
このアカウントには本人の姿は一切登場しない。彼が自分の感性の赴くままに撮影した風景写真がタイトルと短い解説と共に並んでいるだけだ。「京本大我」という名前を前面に出していないのもあってかフォロワー数が目立って多い訳でもない。
それでも私は彼が撮影した写真集の様なInstagramを見られるのが嬉しくて仕方がなかった。

好きな人の地元を歩くのが好きだ。
阿佐ヶ谷姉妹だったら阿佐ヶ谷だし、加藤シゲアキなら渋谷。SixTONESのメンバーであるジェシーなら立川。彼ら彼女らと縁のある街を歩き回っては、彼ら彼女らが見ていたかもしれないものを見る。
聖地巡礼なんて大袈裟なものじゃないと言いたいけれど、きっとそういう事なのだろう。

多分私は、好きな人の目に映っているものを知りたいのだと思う。私より彩度の明るい世界で生きている人達。彼ら彼女らが何を見て、何を考えているのか。同じものを同じ様に見られる訳ではないけれど、私はそれを知りたいと思う。
写真には人柄が出る。どの写真を誰が撮ったか見分けられるとかそういう訳ではないけれど、彼ら彼女らが写したいもの、残しておきたいものには感性が出る。私はそれを面白いと思う。理解できるかはさておき。

写真を撮るのが好きだ。
カメラを持っている訳ではない。フィルターや加工アプリも使わない。撮りたいものを見つけた時にスマホのカメラを向けてシャッターを押す。切り取られた一瞬が永遠になる。
撮った事に満足して、見返す事は少ない。たまに見返してもセンスの欠片もない。大好きな人の大量の画像や動画達に混じっている写真は建物などの風景や空、花、料理などを写したものが多い。

2024年4月12日撮影。夜空に浮かぶ弓なりの月はまるで光る船だ
2024年4月20日撮影。SixTONESのライブツアー「VVS」東京ドーム公演に行った際の1枚
2024年4月21日撮影。花の名前はわからない


落ち込みながら家に帰る。私は未来に怯えている。未来に楽しい事がなかったらどうしよう、と思いながら私はしょぼくれている。ふと空を見上げたら、真っ白な月が綺麗だった。
「あ、三日月!」
と思った。厳密にはこれは三日月ではない。三日月はもっと細いのだ。次に
「これを撮らないと!」
と思った。上手く写そうとしたけれど、空の月は遠過ぎるからか全然ピントが合わなかった。何故月には上手くピントが合わせられないのだろう。
急にanewhiteの「ソフト」という曲の「目に映る綺麗な月が写真には上手く写らないのがなんだか嬉しかったなんて」という歌詞を思い出した。同時に脳内で「ソフト」が流れ出した。
そんな事がいやに嬉しくて、私は「ソフト」を聞きながら家に帰った。ついでに安売りしていた焼き鳥も買った。

2024年6月11日撮影。6月11日はSixTONESのメンバーであるジェシーの誕生日でもある
2024年6月11日撮影。スマートフォンのカメラでピントを合わせるのはこれが限界だった


歌手の福山雅治さんがラジオで言っていた言葉で忘れられない言葉がある。
いつだかのラジオで彼は武道館で行った自身のコンサートの話をしていた。
その時彼はステージの上から見た景色を
「宇宙の様だった」
と評した。
アイドルや歌手というものはペンライトを振られて応援されるなかなか珍しい人達だと思う。少なくとも私はファンにペンライトを振られる職業をアイドルと歌手以外に知らない。
グループによってペンライトの種類は様々だ。メンバーカラーが灯るもの、1色しか灯らないもの、自身で色を変えられるもの、演出に合わせて制御されるもの。
私は何度かアイドルのライブに足を運んだ事があるけれど、ペンライトの種類は違えどどのライブでもペンライトで生み出される景色は綺麗だ。それこそ星の海の様に。
ずっと気になっていた。ステージの上のアイドルの目にはこの景色はどう映っているのだろう。少しでも綺麗であれと私は身勝手に願っている。
答えを教えてくれたのはきょもだった。
ある日、彼のInstagramに「光だけで創る世界」というタイトルの写真が投稿された。

フィルムカメラで撮影されたという写真に写っているのは、真っ暗な客席に浮かび上がる無数の光の点。
世界で一番大切な誰かに向かって放たれる、世界で一番眩しい光達。
「皆さんのペンライトがいつも綺麗なので、僕達からどう見えているのか少しでも感じ取って頂けたら嬉しいです。」
「ここまで美しいと、アートですね。」
彼の言葉で私は何だか凄く救われた様な気持ちになった。
一生見る事などない筈だった景色。
私の目に映る景色が彼の目にも綺麗に見えていたという事実に私は酷く感動した。

写真を見る事はきっと、感性と感性を結ぶ事だ。
私は今日もInstagramを見る。そして写真を撮る。
近いうちに「写真」が趣味になる予感がしている。


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