ラムネの記憶
縁日でつめたい氷水の中に沈んだ青磁色の透きとおった瓶を手にしたことも、駄菓子屋の端でがたがたと音を立てるゆるやかに涼しい白い透明ケースの中から瓶をひとつ取り出してもらって飲んだこともないのに、私は確実に夏のラムネの味を知っている どうしてだろうね
存在しない夏のきらめきをすべて知っている 何も失ってなんかいないのにすべてを失っている 最初から何もないのにあったふりをして失ったことを憂いている
うそ、本当はすべてが手のなかにあったのだ 夏は私のものだった
夏のいつかに書いていたものの蔵出しです。
なにか感じていただけましたら、よろしければ。よろしくお願いいたします。