#02 瀬戸焼って何と問われると意外と困ったりします
瀬戸焼とせともの
今はあまりに「せともの」という言葉は一般的な焼き物全体を指すようになってしまっています。もともとせとものは「瀬戸で作られたもの」という意味でした。しかし今、瀬戸のやきもののブランディングを考えると「せともの」はあまりにざっくりしすぎているわけです。
そこで地域ブランドとして「瀬戸焼」を使っていこうという流れになります。
瀬戸の焼き物を話す時に「せともの」と言ってしまうとちょっと話がややこしくなりがちなのは感じていましたので、瀬戸焼という言葉はありがたいです。このnoteで私が書く文章も瀬戸の焼き物を話す時には基本「瀬戸焼」と書くことにします。
そう言われれば…
以前に「瀬戸焼ハンドブック」という本を瀬戸市や関係団体で編集したことがありました(2014年発行)。
「瀬戸で生まれた瀬戸焼の歴史、特徴、関連施設紹介に加え、年表や用語集などを収録」というこの本。今も瀬戸市美術館などで入手が可能のようです。
私も組合(瀬戸陶磁器卸商業協同組合)からこの編集会議に参加しました。その際にちょっとびっくりしたのが、最初の会議で「瀬戸焼の特徴って何ですか?」という問いに関係団体から集まった参加者の中に明確に答えられる人はほぼいなかったことです。という自分もその時点ではっきりとした答えを持ち合わせていなかったわけで、それ以後はその答えを端的に言えるようにするのが目標になりました。
何でも出来ます、白い土
その産地の特徴を一番わかりやすく示すのは「土」です。今でこそ瀬戸でも各地の様々な土は入手できたりしますが、昔は土(重いです)はその土地で掘り出され、精製され、形を作り、窯で焼かれ製品となりました。土こそがその産地のDNAといってもいいように思います。
では、瀬戸の土の特徴はというと「白く、きめ細かな土」ということになります。様々な用途に使える万能性があります。器だけでなく、瓦やタイル、便器のような衛生陶器、碍子など工業製品などあらゆる陶磁器製品に使われてきました。これを理由に「瀬戸の土は何でも出来る、万能で特徴がないのが特徴」という方もいます。さらに他の産地の土が鉄分やそのざらつきなどからいい土味が出るのに比べて乏しく感じることから、「器用貧乏な土」と言ってしまう方すらいます。これはちょっと自虐的すぎます。
瀬戸焼の特徴
白くきめ細かなことから、その上に掛けられる様々な色の釉薬が発展します。器の素地が白いゆえに(真っ白なキャンパスの上で鮮やかな絵の具がはえるように)数々の釉薬が発達してきました。織部に黄瀬戸に瀬戸黒、志野・御深井などなど……釉の種類においては他の産地とは比較になりません。
さらにこのきめ細かな白い土から江戸時代に磁器生産が始まります。本来石の粉から作られる磁器土を使用しますが、この瀬戸の土をアレンジすることで対応しています。
この陶器と磁器の両方を生産できる産地は稀有な存在です。瀬戸染付も九州産地の磁器とは違った魅力があります。
まあ、簡単に言えそうな特徴ですが、こういった説明に対して「美濃焼と何が違うの」という声が聞こえてきます。
歴史であったり、意匠的な部分で違いはあると思いますが、瀬戸焼と美濃焼の特徴はほぼ同じと思います。これはある意味、当たり前とも言えます。瀬戸と美濃焼の産地(多治見・土岐・瑞浪)は背中合わせの位置にあります。たまたま昔は尾張と美濃の国境が、今は愛知と岐阜の県境がその間にあるだけで同じような特徴の粘土の層はその下に広がっていて、(歴史上)技術的な交流もあったわけですから、その特徴が似通っていても不思議ではありません(と私は考えています)。長い歴史の中で互いに影響を与え合いながら発展してきた隣り合った産地です。
今回のまとめ
・瀬戸焼の特徴は白くきめ細かな土で様々な分野に利用されてきた。
・白いが故に色とりどりの釉薬が発達。磁器と陶器の両方を産み出す稀有な産地。
懐の深い産地です。
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