見出し画像

#10 窯を焼く人たち

 せとものは土をこねて、形をつくり装飾をして、釉薬をかけて窯で焼成されて製品となります。普段、瀬戸では窯に入れて製品を焼成することを「窯を焼く」と言っています。
 「窯で焼く」とか「製品を焼く」とはあまり言いません。窯元の人を(時には作家さんも)「窯やき」と呼んだりしています。「うちは代々窯やきの家だから…」なんてよく聞きます。
 私はこの「窯を焼く」という響きが、とても好きです。


 古い薪窯を見学する機会があれば、ぜひ中に入って(もちろん焼成中じゃないですよ)窯の壁を見て下さい。その窯が古く使い込まれていればいるほど、壁に付着した薪の灰が融け厚いガラスのようになっています。それが外からの光を受けた時、キラキラと美しく輝きます。昔から窯やきの職人たちは多くのすばらしい陶器を作り出すとともに、窯自体もひとつの作品として代々焼き続けてきたのではないかとさえ感じます。


 古から陶工たちは瀬戸の地で窯を焼き続けてきました。山を掘り土をこね、心を込めて作ってきたものが、美しく喜ばれるせとものになるかは、最終的な「窯の焼き方」次第で大きく左右されます。窯を焼くという作業は最も重要な作業。「窯を焼く」というのはやきもの作りを象徴する作業とも言えます。
 薪で焼かれていた窯は、石炭になり重油・灯油が燃料になり、今はガスや電気が主流です。しかし、「窯を焼く」という作業の大切さは全く変わることはありません。電気窯のスイッチオンでも、自動制御されるような窯の時代でもかわりません。


 自らの仕事を誇りをもって「窯焼き」と称する人たちの仕事は間違いない……いつもそう感じています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?