愛は不時着
10年以上、韓国ドラマを観ている。
その間、これほど韓国ドラマが話題になったことはない気がする。
10年の間、韓国ドラマが好きだというと、
え、なんで? どこがいいの? なんか意外・・・と言われるので、
その度に一回観てみて、すごい面白いからと言い続けてきた。
今回のNetflix「愛の不時着」「梨泰院クラス」から遡って、
トッケビ(2017)
太陽の末裔(2016)
密会(2014)
応答せよシリーズ(2012〜2014)
ここ10年で韓国ドラマ好きの枠を超えて話題になっていたのは
このくらいでしょうか。そうでもない/もっとあるかもしれない。
今年はアカデミー賞「パラサイト」の快挙があり、
ベストセラー「82年、キム・ジヨン」の話題があり、
コロナ禍という予想外の状況があった。
それでも今のこの観られ方というのは、
もうこれまでの『韓国ドラマ』という認識とは違ってきている気がする。
今、韓国ドラマを観ているというと、きっと
私も! 愛の不時着? 梨泰院クラス? 面白いよね!
と盛り上がるんじゃないだろうか。
「愛の不時着」はスタジオドラゴン制作、大ヒットが続く脚本家による
北朝鮮と韓国を舞台にした壮大なラブストーリー。
韓国ドラマを観ていると、個人の問題が最終的に国家的な問題に行き着くことが
多いと気がつく。
ポン・ジュノ監督はアカデミー賞のスピーチで、
「最もパーソナルなことが、最もクリエイティブ」
スコセッシ監督の言葉を引用し、リスペクトを表していた。
とすると、最もクリエイティブなことは国家の問題、となり得るのかも!?
そう感じた「愛の不時着」だった。
脚本家パク・ジウンがこれまで「星から来たあなた」「青い海の伝説」
「プロデューサー」で書いてきたのは、どれも図らずも辿りついてしまった
『異世界』に不時着するラブストーリー。
恋とは、心がどこかに迷い込む、不時着するようなもの、という一貫したテーマを象徴的に設定していると感じるが、
今回この不時着が、国家的な最もクリエイティブな構造と融合して
最強のケミ(化学反応)を起こしたのではないだろうか。
韓国ドラマお馴染みのSF、ファンタジー要素がなくても、リアルな状況が十分SF、ファンタジー感満載で、観ているこっちも、
もうこの世界に不時着したのだからしょうがないとばかりに、
リアルでファンタジーの世界に迷い込んでいく。
初めて韓国ドラマを見始めた頃、面白さと新鮮な驚きにただオロオロしながら
広大な世界に入っていった。
まさに、韓国ドラマの世界に不時着したようにさまよいながら、
10年後の今も、それは続いている。