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少年よ、神話は終わった。これから君たちが世界をつくるんだ。【シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の感想】

※3月8日公開のエヴァンゲリオン最新作のネタバレを多数含む記事です。
未視聴で結末を知りたくない方は絶対に、見ないでください。


・エヴァと14歳、シンジくん達はボクらの姿だった
・どんな時でも、希望はあるよ
・終わらない14歳が終わった感覚
・さよなら、ありがとう、おめでとう

・エヴァと14歳、シンジくん達はボクらの姿だった

ボクがエヴァンゲリオンを初めて見たのは14歳の時でした。
と、言っても95年のリアルタイム視聴ではなく、地元のビデオ屋さんで借りたVHSを2003年に視聴した形です。
そんなバリバリ思春期のボクに、エヴァンゲリオンは金槌で頭を叩いたような衝撃を与えたのでした。
少しだけ、私事の話をさせてもらうと当時ボクは不登校の真っ只中でした。

もうほんとに「他人が怖い」という主人公シンジくんの思っている事がビリビリと自分と共感した次第であります。
97年の劇場版「Air/まごころを君に」を視聴し終わった瞬間、当時のボクは「…こんなふうに明日世界が終わればいいのに」と、安い感想を抱いて、なんの成長もないまま視聴を終えました…

さて…
エヴァンゲリオン(エヴァンゲリヲン)に登場するパイロット、チルドレン達は皆14歳です。
新劇場版だと、レイちゃんアスカちゃんやマリちゃんも、シンジくんもずっと子供の姿のままで、精神だけが実年齢28歳になっていたり。

まるで14歳というなにかに縛り付けられた、呪われたように時が止まっています。

思春期前後に後暗い出来事や蟠りがあった人は何となく解っていただけると思いますが
「満たされない、自分の中の少年少女の残り火」みたいな感情があって、前に進めない。
歳をとるのが、不器用なような。
鬱屈した物が累積して、沈殿していて消化しきれていない感覚がずっとあるような。

…まるで14歳という何かに呪われたエヴァのパイロットの子達のようにです。

シンジくんは他人との関わり方が、下手くそです
アスカちゃんは自分のアイデンティティが危ういです
レイちゃんは自分という者がわからない子です
カヲルくんは自分の幸せを完全に見失っている子です
ミサトさんは自分がシンジくんにけしかけた事がどれだけ酷い惨状を招いたかを自問自答しています
リツコさんはエヴァを作った責任と十字架をずっと背負っています

そしてゲンドウさんはユイさんを見送る事が出来ずに孤独にさまよっています

…まるで「14歳のあの頃」に縛り付けられたボクらを写し取るみたいなキャラクターだと思います。過去に、呪縛に囚われているように。

三十路になって、多少の事を経験した自分になったから言えるのですが
「ああ、あの子達は(エヴァのパイロットや登場する人達は)きっと人生がとても不器用なボクらだったんだ。」
と。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||のクライマックスでついに、ゲンドウさんが孤独すぎる自分の内面と葛藤と過去、ユイさんへの気持ちを消化できない事を自分の息子に吐露しますが、きっとゲンドウさんはシンジくんと同じで、孤独で不器用な「14歳」なのだろうな、と。

エヴァにはロクな大人が居ない
と、よく出る話だと思いますが…

当たり前だったんです。皆心の大事な場所を「14歳」に置き忘れてきた、「エヴァの呪縛」に囚われた人達だったんですから。

自分の大事な場所を、物を置き忘れてきた人達の為の物語だったんだ、それを「補完」するのが、このアニメのメッセージだったんだと映画を観終わったボクは思いました。

・どんな時でも、希望はあるよ

カヲルくんがQで言っていた言葉ですね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||で、破で起こったニア・サードインパクトを生き残った人達が静かな集落で生存していました。

シンジくんの同級生だったケンスケくん、トウジくん、ヒカリちゃんは大人になりそれぞれの家庭や、自分に与えられた役割を全うしています。
そして、集落の皆が必死に生きていました。

まさに絶滅に瀕している中での希望です。
シンエヴァが中盤に差し掛かる辺りで、レイちゃん(量産された6人目)は人間らしい、暖かくて優しいコミュニティで生きながら人として最低限の感情を学習していきます。
そして
「どうして皆、ボクに優しくしてくるんだ」というシンジくんの問いに

「皆、あなたの事が好きだから」とだけ言い遺し消えてしまいます。

そしてシンジくんは、父親とケリをつけるために、過去とケリをつけるために再びヴンダーに決意を胸に乗り込みました。

希望を護るために。必死に生きていた友達みんなの世界が壊されないように。そして自分の希望を叶えるために。

おそらく、カヲルくんがQで言っていた事はこの事だったんでしょう。
どんな時でも、希望はあるよ。

そして、シンジくんは人間の最後の希望を護る闘いに、父親との確執のケリ、自分がした事への償い、全ての過去を断ち切り未来へ進む決意をしてミサトさんが命を賭して届けてくれた「ガイウスの槍(人間の意思の槍、ヴンダーの背骨)」で、エヴァも使徒もいない世界をまた再建した上で
レイちゃん、アスカちゃん、カヲルくん、ゲンドウさんの魂を救って解放しました。
今まで全てがループしていた終わらない「14歳の呪い」を断ち切って皆が未来へ向かえるように。

ここで大事になるのはマリちゃんの役割です。
きっとマリちゃんも大事な「希望」だったんです。
エヴァンゲリオン新劇場版は「序破Q」と「シン」で成り立っていますが序破急とは歌舞伎の物語の構成であり、マリちゃんは所謂「ゲームチェンジャー」や「トリックスター」「狂言回し」というキャラなのは明確です。
そして、マリちゃんはユイさんやゲンドウさんの過去を全て知っていました(多分実年齢はシンの時点で40代半ばの年齢)。
推測ですがマリちゃんの目的は最初から
「シンジくんを、最後のインパクトの中から救う」事だったのだと思います。
きっと、心から想った人のユイさんの忘れ形見であるシンジくんを助けたかったのでしょう。

おそらくシンジくんは「全てをやり直す」事が終わったら、そのまま消える覚悟だったのはヴンダーの甲板での悟ったような表情から推測できます。
そのシンジくんを救うために、マリちゃんは終わらない14歳を「演じて」いたんだと思います。


逃げちゃダメだと震えていた「14歳」のシンジくんが、未来を護る決意をした「大人」になる映画と25年の話。

そしてラストシーンのマリちゃんと2人で階段を昇るシーンで

「過去に何があっても、他人との関わり方が下手でも、怖くても、大事な事は未来へ進む決意と行動だ」と、映画を観ていたボクらに道を示したわけです。

まるで「14歳」に縛り付けられた全ての人達を激励するように。
きっとマリちゃんとシンジくんは新たな世界で未来へ、2人で歩くことでしょう。


・終わらない14歳が終わった感覚

劇場版が全てが終わって、シンジくん達は未来へ進みました。
過去の円環と、ループを繰り返していた「14歳」の自分を卒業して。

ボクも映画を視聴したあとは、憑き物が落ちた感覚でした。
「呪いの14歳」が、消えたように。

きっと庵野総監督のメッセージは

「虚構に逃げる事だけが人生じゃないよ。色々な人を認めて、時には肩を抱き合い時には助け合い、未来へそろそろ進んでみたら?背中は押してあげるから。頑張って。自分の人生を必死に生きてね。」

という事をエヴァンゲリオンに込めたのだと思います(※旧テレビ版から新劇場版までを見たボクなりの感想です)。

悪い意味での14歳は終わり、良い意味での14歳の自分という歴史と軌跡を抱きしめて先へ進む。
「14歳」に呪われた全ての人への応援歌のようにボクは感じました。

と、同時に「14歳のあの頃から、少しだけ前に進める」と
ボク中でもやっと「14歳」が終わった気がしました。
長い思春期ですね。


・さよなら、ありがとう、おめでとう

25年という長いシリーズ、スタッフの皆さん、役者さん、庵野監督。関わった全ての人達へ。
お疲れ様でした。

あなた達が終わらせてくれた「終わらない14歳」を忘れずに抱きしめて、そろそろ未来へ進むために必死に生きます。
良い作品をありがとう。

そして、おめでとう!
次の作品を、楽しみにしています!

以上、拙い解釈と感想。
エヴァンゲリオンという作品から学んだ事をまとめた記事でした。


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