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諸字百物語/蛇蠱の子を作った

個人誌を作った。

先日開催された第34回文学フリマ東京にて頒布した『諸字百物語』『蛇蠱の子』の2冊である。架空の間取り・空間をテーマにしたアンソロジー『閑窓』は定期的に作っているが、まったくの個人誌となると19年10月に作った『星の幽霊』以来のことだった。年に1回、秋の文学フリマ東京に併せて作品をこしらえよう!と息巻いていたのはずっと遠い過去の話。

当日のお品書き。

『星の幽霊』は18年の暮れにTwitter上で #いいねした人をイメージして小説の書き出し一文 を募集、半年かけて書いた掌編76作をまとめたもの。カメラマンの友人にお願いして掌編からイメージした写真を撮ってもらい、見開きで見られるようにデザインした。自分でもけっこう気に入っていたので、こういう造りの個人誌をまた作りたいな〜、これなら毎年似たようなスタイルでいけるかもな〜と思っていて、その延長線上が『諸字百物語』であった。

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『星の幽霊』の中身。
左に画像・右に掌編。タイトルは色名で統一。

百物語の場合は  #リプライでもらった漢字ひと文字のお話 というお題。いいねに比べてリプライは躊躇する人が多かったのか(気持ちはメチャわかる)はたまた私の作品に対してもう興味がなかったのか(悲しいね)前年のような冊子の形にするには少し心もとなかった。加えて『星の幽霊』で作った28文字×15行の正方形フォーマットは、不思議・ホラー系の作品と相性がいいな〜と『星の幽霊』の途中あたりから気づいてもいて、実際にそういう系統の掌編をよく書くようになっていたので、作品集は百物語と銘打つのがいいのでは……と思い、結局20、21年と3年間で書き溜めた作品たちをまとめ、いくつか書き下ろしを加えることにした。

『星の幽霊』のときは「文章と写真」がヒキとして強かったと思っていて、『諸字百物語』はそういう打ち出し方は難しかったので、とにかく冊子自体の見た目や佇まいを強くキメてゆくことにした。

強くなりたい。

しなやかな質感のカバーとつるつるな紙質のオビをつけ、表紙はキラキラしたガラスフレークが散りばめられた黒い紙、金糸が織られた和紙を遊び紙として使い、小口はすべて黒色で染めた。スクエア型118ページ。とにかくつよつよな要素を詰め込んだと思ってほしい。詳しい見た目なんかは通販リンクからご確認ください。表紙はイラストレーターのすり餌さんにお願いした。

しばらくは閑窓の方で原稿をいただいて組んでゆくことばかりだったので、ひとりだとすべてが自分のペースで進められるし、しかもほとんど揃っている原稿を手直しして書き足すくらいだから楽だな〜とか思っていたが、同時に(これまで手に取ってもらえていたのはぜんっぜん自分の力なんかではなく、他に目当ての人がいたからでは……?)と思い至って途端に恐ろしくなることもあった。実際、イベント会場で手に取ってもらうことはあれど、中をしばらく読んでから置かれる方もそれなりにいて(あと一歩……私の力があれば……!!)みたいな状況も目の当たりにした。強くなりたい。


決まったキャラクターが登場するお話を書いてみたいな〜とは前々から思っており、去年の4月から6月にかけて800字くらいの連作掌編をいくつか作った。小豆島に伝わる憑き物筋の家で育った少女と、その友人である私の物語。それらをまとめ、書き下ろしを加えたのものが『蛇蠱の子』になった。

キュートでありたい。

百物語と同時に頒布したいと考えていたので、統一感を持たせるため判型を揃えた。イースターエッグ的な要素として、百物語の方にはふたりのエピソードのひとつを混ぜたりもした。百物語での題は【唆 そそのかす】、蛇蠱では【真夜中のいざない】として、ふたつ持っている人だけがわかる仕組み。あ、それぞれ独立してるので単体であってもまったく問題ないです。表紙込の24ページ中綴じ本で10編入り、ふたりが暮らす部屋の間取り図付き。例のごとく通販リンクからどうぞ。

ふたりの関係性や物語性がビジュアルでわかってほしかったので、表紙のイラストは友人の橋本ライドンさんにお願いした。キュートな百合漫画を載せているのでぴったりだと思った。ざっっっくりしたイメージだけの依頼だったので、あがってきた作品を見て驚いた。自分の書いたやつに絵をつけてもらうのって本当に嬉しいものなんですね……。


『星の幽霊』から併せて4年くらい同じフォーマットを使っている。
まとめるにあたりあらためて読み直してみたら、書きざまの変わりようや、飛躍の方法や、似たようなモチーフや言い回しが浮かび上がってきてけっこうおもしろい。ただ最近、ある程度の文量を書くときも書き方がかなり引っ張られているのでそれは良し悪しだなあという感じ。そもそも最初はTwitterのサムネイルがスクエア表示だったからそれに併せていたのと、短歌や文庫本メーカーなど、ひとめで見られる/読まれる方が広く伝わるかもなあ、という感触もあり、自作を知ってもらうきっかけになり得るのでは、と思ったからであった(それをちまちま続けた結果“物語をやみくもに消費してるあれでは名刺代わりにもならない”とかなんとか言われることがあり人間関係がひとつ終わった。思い出してもあらゆることが悲しい)。でもたしかに一理もあって、実際「閑窓に書いてもらいたい!」とお願いするときは長い作品を読んでからのことがほとんどなので、このフォーマットではこれ以上にはなっていかないのかも……とかは思う。精進します。

今はなんとなく、物語を無理やり削いで使い慣れた器に落とし込む、みたいなフェーズに来ているような気もしていて、このやり方も続けつつ、新しいやり方も考えなきゃな〜なんて思っている。小説投稿サイトで長い作品を載せた方が、たとえ即座に読まれなくても自己紹介的な意味合いとして成立するよな〜など。このnoteにもいくつか載せているので、気が向いたら読んでみてください。これは最近の書きざまにすごく引っ張られてるやつです。


とりあえず完成してよかった〜という感じ。長いスパンでいろんな方のもとに届いたらいいなと思ってはいるけれど、そりゃもちろん早ければ早い方が嬉しいよ。私がやっている通販以外にも

・長崎 本屋ウニとスカッシュさん
・大阪 犬と街灯さん
・香川 本屋ルヌガンガさん

で取り扱っていただいています。ウニスカさん、犬街さんは以前に作ったアンソロジーを取り扱っていただいており、まだ店舗にうかがえていないのでいつか足を運びたい。あと地元の香川にも置いていただいて本当にありがたいかぎり。嬉しい。さてさて、個人誌はもちろん、またなにかアンソロジーを作りたいな〜とは思ってるので、その際はよろしくお願いします。いえい。

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