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ナミビア旅①〜餓死寸前の入国編〜


大地にひびが入っている、
ように見えたのだ。

「エチオピア航空をご利用頂き、誠にありがとうございました」

片言の英語で告げられたアナウンスに窓から外に目を下ろす。
そこには果てのない大地が広がっていた。

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赤と緑を混ぜ合わせたような色の地面に、白い直線が走っている。
どうやって道路を敷いているのか、方法は分からないが、縦横無尽に伸びる直線。
見るからに乾燥した空気。


まるで地球の表層がひび割れているような感覚に陥った。



アフリカ大陸の南、ナミビア。
ついに私たちは来たのだ。



2/8から10日間。
この日のために取った有給。
この日のために貯めたお金。
服と寝袋をリュックに詰め込み、
私と友人のMは、コロナの蔓延する日本を飛び出した。

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日本の関西国際空港から、
ナミビアのウィントフック空港。
なんと驚異の乗り継ぎ4回にも及ぶ道程。
時間にして約24時間。
時差の影響もあり、頭も体もグチャグチャだ。


意気揚々と飛び出したものの、あまりの長さに萎んでいく心。

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↑萎んでいく心。


そして、
今思い出しても最悪の5時間がやってきた。
最終中継地、エチオピア航空からのフライトだ。


・席は窓側
・テレビ無し
・隣の席が肥満体型の夫婦
(聞くところによるとオーストリアから来て、英語は苦手らしい)

まったく動けず、携帯の充電もできない。
お腹もすいて飲み物も持ち込めない。
右の太ももに、常にデブの肉圧を感じる。


これで5時間耐えるんか!?
地獄。最悪。拷問。
思わず涙が出そうになる。


(寝るしかないか…)
私は諦めと共に目を瞑った。



…30分後。
空腹で目が覚めてしまった。
喉も乾いている。

そしてふと隣の夫婦を見ると、そいつらは美味しそうにマフィンを食べていた。


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※イメージです


なんで?????
めっちゃ美味そうやねんけど。
そんでお腹空いてる。
死ぬほどすいてる。


(移動中は基本、機内食しか食べないので乗り継ぎが長いと食事のタイミングを逃したりするのだ。)


私は乾燥してカラカラの唇を舐めた。
唯一自由に動かせる首を巡らせ、周りの様子を伺う。

「みんなめっちゃマフィン食べてる…」

どうやら寝ている間に配られたらしい。
己の眠りの深さを呪った。


隣ではデブがニコニコとマフィンを食べて
暖かいコーヒーを飲んでいる。
デブが動く度に、二の腕が揺れる。


憎い。


これほどまでにデブを憎く思った事はない。

私は勇気を出して回ってきたCAさんに声をかけようとした。


「あの…」
「○△□×☆〜」


威圧的にも見える黒人女性。
海外の女性は基本、無表情だ。
英語で同じセリフを繰り返し、手にはゴミを回収しているのだろう大きな袋。


「あ…あ…」


デブが視界を遮る。

言えねぇ…
この状況でオレンジジュースとマフィンを下さいなんて言えねぇ…

私は大人しく席に収まる事しかできなかった。


2020年のこの時代に死ぬほどの飢えを経験するなんて。
当たり前にご飯が食べれる日常のありがたみを感じながら、私は再び目を瞑るのであった。
(1時間後に出された機内食が死ぬほど美味しく感じた。)


そんなこんなで到着したナミビアの
「ウィントフック空港」。


飛行機出た後、席の離れた友人Mと合流するも、
なんだかぐったりとした様子だ。
話を聞くと、前に座っていた男性とトラブルで言い合いになったらしい。


「どうしたん」
「なんか…俺の枕濡らしたやろって言いがかりつけられた…」


枕を濡らすてなんやねん。
どんな嫌がらせや。

うだるような熱さ。
さらにコロナでピリつく空港。

空港に入るやいなや、Mは体温が高いと検問で止められ、
私は入国審査で引っかかり、空港を抜けるのに1時間以上かかってしまった。


厳しいかな、エチオピア空港…。

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⇨ぼったくり編に続く。


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