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書評ブログ「インクの匂ひ」 vol.6

無類の本好きのわたし。どうせなら読んだままにせず思いっきり主観の入った書評を書いてみたいと思い立ちました。この記事がきっかけとなり、実際に読んでくださる方がいたらとても嬉しいです。

≪読み終わった本≫
『父からの手紙』 小杉健治

本屋さんでポップ付きで平積みされているのを目にし、帯の「涙が止まらない……」に魅かれて買いました。著者の小杉健治さんの本を読むのはこれが初めてなので期待外れだったらどうしようと少しの不安もあったりしましたが数ページ読みすすめると、これは面白い!に代わり、それまでの不安は消えました。その後は、途中から止められなくなって一気読みでした。ネタバレしない程度にご紹介します。

≪読み終わって…感想≫
近所でも評判の子煩悩な父、阿久津伸吉はある日、2人の子供を前にして「父さんと母さんは離婚することになった」と別れを告げました。その言葉でそれまでとても仲の良かった家族4人の生活が一変してしまったのです。どうしてお父さんは私たちを捨てたのか。悲しみと怒りを胸に伸吉の娘、麻美子は24歳の誕生日を迎えます。
子煩悩な父は二人の子供の前から姿を消したとはいえ、毎年娘の麻美子と息子、伸吾の誕生日には欠かさず手紙を送っていました。その手紙に書かれている言葉がとても素敵で、小説なのに付せんを貼ったほどです。
父、伸吉がいなくなって十年が経ち麻美子は結婚することに。しかし彼女の婚約者が何者かによって殺害され、弟の伸吾が容疑者として逮捕されてしまうのです。自分の力で弟の容疑を晴らそうと立ち向かう麻美子は事件の真相を暴くにつれ父が自分たちを捨てた本当の理由を知ることになります。そこには父の深い愛情が隠されていて涙なくしては読むことができません。

≪ふせんを貼ったところ≫

人生の目標は財産、地位、名声などを得るためではない。それらを得たことが幸福だということではない。いかなる困難や試練にも負けずに生きていくことにあるのだ。

≪あとがき≫
最近、私の実父が病気でこの世を去りました。この物語に出てくる伸吉ほど子煩悩でもなく、無口な父でしたので正直、あまり交流がありませんでした。しかしこの小説を読みながら小さい時の父との思い出がよみがえってきて、目に見える愛情表現は少なかったけれど、五体満足、健康で大した苦労もなく大人になれたのは紛れもなく両親のお陰だなとしみじみ思ったりして…。そんなことを考えるきっかけをこの本が与えてくれたのです。
ミステリーだけど、読んだ後感動でしばらくボーっとしてしまいました。

読み終わり、さっそく次の一冊を手にしました。そのお話についてはまた後日ご紹介させていただきます。

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