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【映画】エール!&Coda コーダ あいのうた(2022年2月12日)

フランスとアメリカ、映画作りなのかあるいはそもそも感動するポイントなのか、とにかく両者の違いがよく表れている。個人的には「Coda」の映画としての出来が素晴らしいと思った。

映画感想サイトなどでも多くの方が同じ導線でこの2つの映画を見ているようですね。私もその一人です。「Coda」という映画は、数年前のフランス映画を元にしていて~~、という宣伝(?)に影響されてまんまとアマプラでまずはもとになったフランス映画「エール!」を鑑賞。

ストーリーはすごくいいお話なのに、細かい部分の描き方を省略しすぎていて、後半の感動シーンが突然すぎる。「Coda」でも、親の無理解(特に母親)にイライラするけれど、フランス版はさらに厳しく、家業の酪農(経営は順調)を手伝わされているうえに父親の市長選出馬を手伝わされるという急な展開のなか、歌を頑張るという設定。
そして、そもそも主人公が歌で進学したいという気持ちや、男の子が主人公を恋愛対象として意識していく様子(主人公をいじめる女の子と付き合っているっていう設定だし)も、お父さんが主人公に理解を示す流れも、とにかく突然訪れる。というか描かれていない、に近い。きょうだい設定が主人公と「弟」(中学生化小学校低学年くらい?)という点でも、主人公の友人と弟がデキちゃうっていう設定で、なんというか恋愛に寛容な(?)フランスならではなの?という戸惑い・・・。笑えない・・・。あと、そもそも主人公がそんなに歌がうまくないっていうのも・・・。

と、「エール!」ですでにあらすじを知ってから、劇場にて「Coda」を鑑賞。主人公と「兄」、家業は漁業で貧しく、国の政策によりさらに負担が増えてしまうなか独立して組合を作ろうとする父親&兄、ミスコン優勝者で能天気な母親、という人となりや背景が短い会話などでポンポンとリズムよく提示され、すんなりとストーリーに入れた。さすがアメリカ映画。仲良し4人家族で一人だけ”違う”(マイノリティ)という、仲のいい家族だからこそ余計に疎外感を感じる主人公。自分以外の家族は耳が聞こえないがゆえに家の中の騒音がひどく、対処方法として音楽を流していくうちに歌に親しみがわいていく、という様子が丁寧ながらテンポよく描かれており、あっという間に観客が主人公の味方になった。
そして、主人公を救う教師とのかかわりが前半できちんと描かれる。と同時に、主人公がある意味で「バイリンガル」、つまり、発話語と手話の両方で気持ちを表現するという特性を教師との会話でわかりやすく説明する前半の感動的なシーンは、最後の受験シーンにつながる重要なメッセージだ。

そう!この受験など後半は感動シーンが続くし、フランス版とほぼ同じなのだが、フランス版では何せ前半でその背景がほとんど説明されないので、なんだか泣けないのだ。泣くためにみているわけではないけれど。

一方、「Coda」では、多くの要素が丁寧に背景込みでテンポよく提示されるので、後半のシーンの意味がぐっと深まる。母親とずっと分かり合えない主人公。「毒親」と感想で書かれたりもしているが、母親はミスコンで優勝したほどの美人で、かつ耳が聞こえない点も影響しているのだろう、見た目を重要視する比重が高い。だから、「歌」という見えないものに主人公が能力を持っているという点にまったく興味がない。母親に決して悪気があるわけでもなく、ただ「分かり合えない」という悲しさだけがあり、それでも大好きな家族なんだ、という切ない関係がよく描かれていた。

「エール!」で最も驚いたのが、最後の最後、ラストカット。主人公の笑顔が静止画で数秒。今どきあんな終わり方する映画って驚いたし、フランス映画ってハッピーエンドが苦手なんだなあ、とステレオタイプなことを思ってしまった。広大な美しい農場の風景を走り去る車、というカットでいいのに、なぜか主人公の満面の笑みが画面いっぱいに数秒静止。

「Coda コーダ あいのうた」は、今年のアカデミー賞にもノミネートされているようだし、みんなが見ていい映画だと思うだろう。出来もよかった。
(個人的には作品賞は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」だけど!素晴らしかったな~。)

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