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なぜ、測り続けるのですか? 孤高の放射線研究者・小豆川勝見東大助教に聞く(2023年12月)

今年、2023年8月から、福島第一原発のの処理水が海に放出されるど、原発事故の処理は今も私たちの見えない所で続いています。

「サンタプロジェクトfor福島キッズ」は、これからの時代を生きる子どもたちのために募金を役立てたいと考えています。

今年も募金を全額寄付するのは、東大助教・小豆川勝見先生。放射線測定と研究を続け、福島県の依頼で子どもたちの教育にも尽力されています。

小豆川勝見 1979年生まれ。茨城県で育つ。東京大学卒業。東京大学大学院総合文化研究科 博士課程 修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科 環境分析化学研究室 助教。2016年より世田谷区教育委員会 放射線アドバイザー。福島県からの依頼を受け、これまで約13,000人の小中学生に放射線授業をおこなう。自治体や市民、子どもと対話をしながら、社会の側にたった視点を持ち続ける研究姿勢は世界の研究者からも高い評価と信頼を得ており、東京オリンピック開催時には、各国からの問い合わせにボランティアで対応する。


「サンタプロジェクトfor福島キッズ」とは

世田谷こども守る会のクリスマス募金。地域の協力を得て、これまでに1,353万7,596円を集め、福島県の養護施設や一人親家庭の支援団体、世田谷区の保養団体に寄付をしてきました。13回目の2023年は放射線測定の研究者、小豆川勝見東大助教の活動を支援し、この募金を福島と福島の子どもたちの未来につなげます。募金はこちらから。締め切りは2023年12月26日。

「福島から育て 未来の研究者」
小豆川助教が毎日新聞に

福島県から依頼されての小中高生向けの放射線授業も継続中。これまで教えた児童生徒は約13,000人。11月には、毎日新聞の一面を飾りました。

2023年11月11日 毎日新聞オンライン記事はこちら

2023年11月11日毎日新聞夕刊トップ。小豆川勝見助教の子どもたちへの教育への想いが記事に。

ーー将来の研究者出てこいー!と念じながら、福島県の子どもたちに熱く語る様子が掲載されましたね。

小豆川:
福島県の小中学生は、年2時間の放射線の授業が義務付けられています。そう、義務なんです。毎日新聞の担当記者さんは「福島県を多く取材しているが、放射線の類の授業で小学生たちがハイハイ!と手を挙げ、こんなに楽しそうにやってるのは初めて見た」と驚いていました。

ーー子どもたちがトリチウムのありかを測定器を使って探すだなんて、すごい実験ですね。

小豆川:子どもたちの探究力といい、知識量といい、たいしたものです。「先生! 燃料はウランですよね? ウランの反物質を原子炉の中に入れて反応させたらどうなんですか?」なんて質問がとんでくる。小学校の4年生ですよ! 反物質なんていう単語をちゃんと知っている。

ーー先生は子どもたちに、「いまは原子炉の後片付けが大変。君たちだったらどうする?」と問いを投げるそうですが。

小豆川:ええ。こんな答えもありましたよ。「簡単! 原子炉の中にご飯を撒いておいて、そのゴキブリが入って出て入って出て入って・・・って繰り返してけば、ちょっとずつ減っていくと思います。ゴキブリってどうやら放射線に強いっていうじゃん」とかね!

ーーおもしろい!(笑)

小豆川:たった40分の授業でも、アイディアがバンバン出てきますよ。もちろん、荒唐無稽にみえることもあるけれど、よっぽど楽しいですよ。ニュースではアナウンサーが顔をしかめながらね、「ロボットが入れませんでした」とか「これから処理水の放出が始まります」なんて暗い話ばかり。その一方で、小学生たちは疑問をすっきりさせながら、いろんな意見を言ってきます。ここに未来はあるんじゃないかな。

毎回、学年や時期に合わせて授業を練り直す。白衣は小豆川助教手縫いの放射能標識付き。

大事なのはデータを積み上げること

ーー昨年の募金は、処理水の海洋放出の影響評価を目的とする海水や海産物の測定や、南相馬市,浪江町、双葉町、大熊町など、帰還困難区域の河川に生息する淡水魚の調査に充てていただきました。

大熊町の河川調査

小豆川:目指すのは、効率的な除染技術の確立です。そのためには、測定値の積み上げが欠かせません。そこから真実が見えてきます。

そして考えたくもないけど、万が一再び原子力災害が起きた時には必ず数値が必要になります。将来「あの時の数値は?」と聞かれて「ごめん、デ
ータないんよ」なんて言ったら、次の世代に顔向けできません。

測定中の大熊町の川魚ハヤ、ヤマメ、ギギ等。測定値は国の基準値を超える。

小豆川:今季は山からの放射性物質がおおもとで汚染されてしまった川魚や、原発周辺の魚の調査を進めています。
帰還困難区域内の川魚は、残念ながら向こう数十年は基準値に抵触し続ける、厳しい現実があると推定されます。

川の魚を捕ることは行政だけなく漁協からの許可取りが必要なため、測定以前の困難があります。私一人でのちからではとても無理、でも私には心強いサポーターが現地にいらっしゃるので交渉をお願いしています。できる限りのリソースを使って記録を取り、公開していきます。

自分は、原発は何があっても絶っ対に壊れないと信じていた。そっち側にいた研究者として、今、できることは何かと考えたら、最低限、記録を残しておくことでしょう。それが事故を起こした世代の、せめてもの責任だと思っています。

ネットワークが弱い日本
放射線測定研究者の連携は不可欠

小豆川:さらなる目標は、欧州で実績を出している測定者のネットワークの日本版をつくることです。Ring of Five Task Group というこのネットワーク、地球上のどこかで異常値が検出されると、研究者が集まって我先に分析を始めます。測定技術の高さはもちろん、そのフットワークの軽さ、情報伝達の速さは、「真実」を知るためには欠かせません。

募金はどう使われる?

ーー8月に始まった処理水の海洋放出を受けての海水の測定や、帰還困難区域内に生息する淡水魚の調査にも使っていただいていますが、具体的には?

小豆川:実験用器材・試薬・消耗品、出張費(ガソリン、ETC)、データ通信費、海外出張でのSIMカード代、SLACK  Pro費、学会年会費・エントリーフィーなどです。

ーーSIM カードや通信費まで?!

小豆川:国からの運営費交付が少なく、年30万円のみなんです。光熱費だけで消えてしまいますから、私の研究室は常に火の車(笑)。

ーー東大駒場キャンパスの中で、小豆川助教の寄付「件数」は一番多いそうですね。累積で約1500件と。

小豆川:寄付してくださる多くの市民の方がいることはとても心強いところです。それがあってこそ、僕も「行くぞ、頑張れ!頑張れ!…」と自分でフィードバックをかけられるわけです。

海外の大学からポストをオファーされても「現場近くにいてこその研究」と日本に踏みとどまってくださる小豆川先生。私たちのような小さな活動でも、なんとか力になれたらと願っています。

今年も、サンタプロジェクト  for 福島キッズへのご支援、募金をどうぞよろしくお願いいたします。

募金はこちらから


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