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20年ぶりの驚愕

長く訪れていなかったところへ久しぶりに行くと、新たな気付きを得ることがしばしばあります。若い頃は気にも留めなかったことでも、実は凄いことだと感じる場合もあります。20年ぶりに乗った神戸電鉄はまさにそれでした。

神戸電鉄の急勾配。フリー画像で区間は不明ですが、おそらく鈴蘭台→鵯越だと思います。

阪神梅田からの直通特急を新開地で降り、神戸電鉄の三田行きに乗り換えます。平日の昼前で車内はガラガラですが、4両編成のうち1両は女性専用車になっていました。ラッシュ時はかなり混雑するということです。

新開地と次の湊川は地下駅ですが、湊川を出ると電車は突然ギアチェンジしたかのように急坂を上っていきます。東急東横線の渋谷から代官山に至るまでの坂と雰囲気は似ていますが、坂の長さは比になりません。次の長田までの1.9kmの間に、標高はなんと70mも高くなるのです。

とはいえ、この辺りはまだ序の口です。鵯越を通過すると車窓から人家が消え、坂はさらに険しくなります。窓の外は箱根登山鉄道の塔ノ沢とか大平台と大差ない感じですが、スピードは全く違い、ものすごい迫力です。20年前の自分はいったい何を見ていたんだ、と思いました。

鵯越から次の鈴蘭台までの勾配は最大50パーミル。20mしか進まないうちに1m標高が上がります。この数値は南海高野線の山岳区間(高野下~極楽橋)と同じですが、高野下までは難波から快速急行で1時間ほどかかるのに対し、鵯越までは新開地からわずか8分です。南海高野線に置き換えると、天下茶屋から堺東に着くまでの間に宅地開発もできないような山林が広がっているということです。

そして、坂を上った先には鈴蘭台という巨大なベッドタウンがあります。女性専用車が必要なくらい混雑する電車に乗って、多くの人が毎日この区間を利用して通勤・通学しているのです。そんな鉄道は日本では間違いなくここだけでしょう。もしかすると世界でも唯一かもしれません。

手軽に乗れる山岳鉄道・神戸電鉄。当たり前のように多数の乗客を運んでいるだけに見過ごされがちなところはあるでしょうが、実は非常に魅力的な観光路線だと思います。

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