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#25 特別支援学校高等部(知的)の入試問題を比較してみる

 タイトルの通り、今回は4都道府県の教育委員会に公開される入試問題から、特別支援学校高等部において求められる能力を分析します。
(内容に関しては基本的に知的障害特別支援学校高等部になります)
 また、本記事は以下の記事にある入試問題について、掘り下げた内容となります。

1 東京都

 東京都では、特別支援教育の普通教育を施す「普通科」の他に、職業教育を専門とする「就業技術科」「職能開発科」があります。
この職業教育を専門とする科の入試問題は「適性検査」として公開がされています。
 以下は検査内容になります。

適性検査問題1ー1
適性検査問題1ー2
適性検査問題1-3
適性検査問題2
(リンク先は令和5年度の入試問題になります)

適性検査は、上記4つから構成されていますが、年度によって問題の傾向が異なるものの、1ー1は基本的な読み書き計算、1-2は認知能力や生活経験、1ー3は作業能力、2では作文能力が求められています。

2 大阪府

 大阪府でも東京都と同様に「普通科」の他に、「職業学科」と呼ばれる職業教育を専門とする学科で適性検査があります。
東京都とは異なる点としては、問題が「筆答問題」「作業問題」の2つにまとまっていることが挙げられます。
筆答問題は、大問1〜4が基本的な読み書き計算、大問5〜9が認知能力や生活経験、大問10で作文能力が求められています。
作業問題は、東京都の問題と同様で作業能力が求められていることが確認できます。
 東京都と大阪府の適性検査は、出題内容が似ているように思います。

3 広島県

 広島県は、「普通科」を基本とした上で「普通科に係る知的障害のみ」と「普通科職業コース」の2つに分かれており、それぞれ入試問題が公開されています。東京都、大阪府と大きく異なる点としては、「学力検査」としていること、英語が独立の冊子となっています。なお、職業コースを除く普通科においては学力検査は3教科以上とし、理科社会の学力検査を実施することもあります。
 「普通科に係る知的障害のみ」では、国語で文字なぞり、ものの名前、反対語、簡単な文章の読み取り、作文といった内容が出題されています。数学では小学校1〜2年生程度の内容が中心となっています。また、英語ではアルファベットや数字、ものの名前などのリスニングアルファベット・英単語の記述外国の生徒に紹介したいものを日本語で書く、といった出題となっています。
 「普通科職業コース」では、国語で聴くテスト、ことわざ、文章の読み取りが出題されています。数学では小学校3〜4年生程度の内容が中心となっています。英語では「普通科に係る知的障害のみ」と内容自体は同じですが、小学校〜中学校1年入門級程度の内容となっています。

 東京都・大阪府と広島県では「適性検査」と「学力検査」という違いが見られます。

4 北海道

 北海道は、「普通科」に加え、東京都・大阪府の職業教育を専門とする学科にあたる科が非常に細分化されています。
例えば、農業科・木工科・工業科・家庭総合科・クリーニング科・被服デザイン科…など、多岐に渡ります。
志願者は「学習状況検査」と呼ばれる検査を受けることになります。
検査内容は非常に幅広く、広島県の国語・数学に傾向の近い問題に加え、基本的な英会話の選択問題生活経験、こんなときどうする?のようなオープン問題などが出題されています。
 特徴としては、東京都や大阪府、広島県と比べて問題の難易度の幅が非常に広くなっていることが挙げられます。


 ここまで、4都道府県の特別支援学校高等部の入試問題を見てきました。
今回はサンプル数が少ないこともありますが、「基本生活能力的側面の強い自治体」と「教科学習的側面の強い自治体」で分かれるのかな、と感じました。
これは、試験を「適性検査」とする自治体ほど前者の傾向が強く、「学力検査」とする自治体ほど後者の側面が強くなる、といったイメージです。
とは言え、どちらであっても「基本的な読み書き計算能力」は問われるものであり、その内容は、特に職業系の学科に関しては共通しておおよそ小学校中学年程度です。
 ちなみに、今回の4都道府県以外にもいくつかの自治体の入試問題を調べていましたが、小学校5〜6年生程度の内容を出題する自治体もあります。また、その自治体の問題は教科学習的側面が強く、試験は「学力検査」としています。

 特別支援学校高等部の入試を受ける生徒は様々ですが、自治体によって入試問題の内容、求められる能力もまた様々であり、受験者や担当者はその傾向をよく知っておく必要があります。
また、中学校の教員だけでなく、小学校の教員もまた特別支援学校高等部進学から就業までの流れを知ることで、より円滑な進路指導に繋げることができるのだと思います。

 今回の内容が特別支援に携わる人に少しでも役に立てば幸いです。

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