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【短編小説】俺の友達は『パンツの色がわかる超能力』があるらしい

♢はじめに
この物語は、カクヨムのお題「色」に挑戦したものです。
「色」って、純文学でも、ファンタジーでも、ホラーでもいける幅広いものなのに、あえてのパンツ。
色々ネタを考えたのですが、いまいちどれもオチが微妙で。
こんなときは、「頭にふと思い浮かんだワンフレーズで書く」と自分が楽しく書ける、という経験がありましてね。
そしたら「俺って、お前のパンツの色がわかるんだよね」っていうセリフが降りてきたので書きました。
降りてきたのだから、私の意思じゃなくて創作の神みたいな存在の思し召しです(笑)
そんな感じでどうぞ!▼


高校2年生のマモルとケンタは、考査の勉強をしていた。

「あー、テスト用紙に答えが浮かび上がる超能力とか出ねぇかなぁ」

マモルはため息をつきながら言った。

「せっかくの超能力なのに、それじゃ地味じゃない?学生時代しか使えないし」

ケンタが言った。

「ああ、たしかに。じゃあ、無限にお金が湧いてくる超能力」

「あんまり無限だと、家の中が札束でうまっちゃうよ」

「じゃあ、無限に預金残高が上がる超能力」

「お金があってもさ、”マモルさんに売る品物はありません!”とか言われて、買えなかったらダメじゃん」

「え、世界中のお店から売ってもらえないの?俺、大物すぎない?どんな悪党でも買い物はできるでしょ」

二人はいつもくだらない会話をしていた。

「ケンタはどんな超能力がほしいの?」

「俺さ、実はもう超能力があるんだ」

「マジか。何?」

「お前のパンツの色がわかる超能力」

ケンタはマモルの尻を触った。

「今日はグレーでしょ」

「当たり!何でわかるの?!」

「超能力だから」

ケンタはふふん、と笑った。

「だとして、テストの答えがわかる超能力より意味のない超能力じゃね?くだらなさたるや、世界一だよ」

「だよな。わかるの、お前のパンツの色だけだから」

たまたま腰の辺りにパンツが出てたのを見られただけだろう。
マモルはその程度に思っていた。

♢♢♢

翌日、朝登校すると、「おはよっ」と言ってケンタがマモルの尻を触った。

「今日、黒でしょ」

「え?パンツ?」

何色履いてたかなんて、自分でも覚えていなかった。
ズボンの隙間から確認する。
本当だ、黒だ。

「……む、無駄にすげぇ」

ケンタは笑った。

さらに翌日も、次の日も、毎日ケンタはマモルのパンツの色を言い当てた。
本当にそういう超能力があるか、部屋が盗撮されてるかだ。
どっちも微妙に嫌だ。
とはいえ、たかだかパンツの色くらいだ。
友情にひびが入るほどではなかった。

♢♢♢

ある日、母親が血相を変えてマモルの部屋に来た。

「マモル!ミカが塾の帰りに事故に遭ったみたいなの。お父さんとお母さんは病院に行くから、おばあちゃんと留守番よろしくね」

「うん、わかった……ケガは、大丈夫なの?」

「意識はあるけど骨折してるって。今日は検査も含めて入院になるみたい。相手が逃げたらしくて、警察ともやりとりしてくるね……」

ひとまず妹が骨折で済んだのは良かった。
でも、轢き逃げなんて酷すぎる。

部屋を出て一階に降りると、おばあちゃんが仏壇を拝んでいた。

リビングのソファに座って、テレビをつけた。
なんとなく、ケンタに妹の話をメッセージで送った。

『事故現場って、どこなの?』

家の近くのコンビニ前と伝える。

しばらく連絡が途絶えて、一時間後くらいにまたケンタからメッセージが来た。

『犯人は、白のセダン。爺さんが運転してる。車のナンバーは……』

そんなことが書いてあった。
俺は急いでケンタに電話をした。

「あのメッセージ、何なの?」

『俺さ、物が持ってる記憶を読む超能力があるんだ。事故現場で散らばってた、自転車の破片からぶつかった車が見えた。説明が面倒だから、ミカちゃんが見て覚えてたていで、警察に言ってみてよ』

ケンタの言う通り、母親に電話して、妹に代わってもらった。
妹も、白のセダンはわかっていて、うっすら見たナンバープレートの数字もそんな感じだったと言ったので話は早かった。

♢♢♢

翌日の朝、ケンタと挨拶はしたが、尻は触ってこなかった。

「お前……本物だったんだな……」

「まあな」

「まず、ありがとうな。妹のためにやってくれて」

「大事に至らなくて良かったよ」

「……ところでさ、せっかくの超能力を、俺のパンツの色を言い当てるだけに使うのって、健全な男子と思えないんだ。他に、何に使ってるの?」

「……まあ、いいじゃん、そこは。いざ、便利そうな力があってもね、余計なことを知ると幸せになれないよ」

「……それもそうか。たとえば机の記憶を読み取ったら、友達に自分の悪口言われてた、とか?」

「そうそう。小さい頃は、自分の力の意味が分かんなくて、見えたこと全部口に出したら気味悪がられてさ。超能力なんて、あっても面倒くさいよ」

「なるほどね……」

「あのさ、マモルは、俺のこと嫌にならない?まあ、俺がその気になったら、結構何でもわかっちゃうわけで……」

「……そうだな……そうかもだけど……お前は、そう思われるかもしれないのに、妹のために力を使って教えてくれたじゃん?そんな正義の味方に失礼なことはできないよ」

「…………………………」

「大体にして、俺に秘密らしい秘密もないしな!逆に秘密が無い仲って、すごくない?」

「……そう言ってくれるなら……助かるよ……」

「俺は、変わらず友達でいてほしいよ。正義の味方にだって、仲間はほしいだろ」

「そうだな……。まあ、そんな物騒なことに首を突っ込む予定はないけど」

♢♢♢

それから、マモルはケンタの超能力の精度を上げる訓練をし始めた。

「えっと……今日のパンツの色は……マーブルっていうの?色んな色が混ざってるやつ」

「そうだけどさ、そんなあやふやな情報じゃ犯人逮捕にはいかないよ。もっと、見たものを的確に表現しないと」

「そうだけどさ。いや、犯人逮捕って、俺に何させようとしてんの。それに、色の名前なんてわかんないよ」

「ほら、これ。色見本。色の名前をこれで覚えようよ」

「……いっぱいありすぎるよ。わかんねぇ」

「俺もできる限り複雑な色のパンツ買うようにするからさ、お前も頑張ろうよ」

お前はパンツ買うだけじゃん。
ってか、なんでパンツにこだわるんだろう。
そう思ったが、マモルの楽しそうな様子を見て、まあいいか、と思ったケンタだった。

―完―

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