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手術から1年たって〜人生観は病気では変わらなかった〜

2020年10月

10月は乳がん月間だそうだ。さまざまな報道が流れ、イベントが実施されている。
昨年10月21日に乳がんの手術をしたが、その時にはそんなニュースは目に入らなかった。それだけ自分のことに精一杯だったのだろうと思う。

さて、手術から1年が過ぎた。
私の右胸の乳がんサブタイプは、再発リスクが高いのは3年。
また左側は再発リスクは高くないが、10年経った後に再発することもあるという。
きっと今後ずっと乳がん月間になるたびに「あれから○年」と数えることになるのだろう。

「がんになって人生観が変わりましたか?」と聞かれることがある。
死を身近に感じる病気だからこそ、ということなのだろう。
けれども期待に応えられず「特に変わりませんね〜」というのが私の返事だった。

在宅医療という現場に携わって8年あまり。
年間120名以上の自宅でのお看取りをするスタッフたちと共にいて、
生と死は本当に近くにあるものだということを漠然と感じていた。

現実的に一番自分の「死」を近く感じたのは、がんが発覚する7ヶ月前。
大きな交通事故を起こした。わたしの一時停止違反が原因、らしい。
実はその辺りの記憶はまったくなく、気づいたらドン!と田んぼに車ごと落ちていた。夕焼けで止まれの文字が見えなかったのかもしれないし、急いでいたのは確かだった。飛び出した私の車の右側前方に、コカコーラのトラックがぶつかった。
私が乗っていた車ははじきとばされて、道路左側の田んぼに落ちた。
ガードレールもなかったため、道路から1メートル下の田んぼにきれいにストンと落ちた。
車内においていた、蓋のないトートバックから何もこぼれることもなかったほど、ストンと。
車は完全に廃車、あとで写真を見るとこれで身体が無事だったのが不思議だ。
コカコーラのトラックの方も反対側の田んぼに入り、運転手の方も無事だった。
私の助手席にいたスタッフも無事だった。
ホントに、ホントに、ホントに良かった。
わたしも念のために病院に行ったが、むち打ちなどもまったく問題がなく
「ストレートネック」だということがわかっただけだった。

この時が人生の中で一番、
「自分の死」と、自分の過失による「他人の死」を痛烈に感じた時だった。

がんを経験すると、ふとした時に再発の影を感じるのは事実だ。
背中が痛いと、あれ?と思い。頭が痛いと、不安になる。
私が行っている病院は全身のPETや骨シンチなどの検査をやってくれないけれど
それで十分なのか?と考えてしまったりもする。

けれどもがんが再発しなくても、ほんとうは死は意外に近くにある。
一瞬のことで、生のその先には死がある。
人の生き死には誰にもわからない。

命を与えていただいている限りは一所懸命に生きようと思う。

というわけで、いま一番気をつけているのは再発よりも交通安全です。

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