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日本の外国向け観光業の向かう先

年末年始にテレビを見ていたら、2023年は外国人観光客の数が徐々にコロナ前の水準へ戻ってきているとの報道がありました。せっかくなので自分できちんと調べようと思ったので、ここで発信します。

中国・韓国・台湾への依存

この図は、日本政府観光局(JNTO)が公開している1990年から2023年までの訪日外国人の数を示しています。青い棒グラフで全ての訪日外国人の数、実線で各国の訪日外国人の数を示しています。

観光目的の訪日外国人数の時系列

まず、青い棒グラフに着目して欲しいのですが、2015年くらい急激に増加していることが分かると思います。この増加の要因が、緑・赤・紫の実線で示した中国・韓国・台湾の観光客数の増加です。青・オレンジの実線のアメリカとイギリスの訪日者数はあまり変化していないのに対して、緑・赤・紫(中国・韓国・台湾)の実線は大きく増加していることが分かると思います。茶色の実線はこの3つの国を合計したものですが、全体の半分程度を占めています。

アジアからの観光客は多いと思っていましたが、全体の半分までとは・・って感じです。余談ですが、訪日観光客数が増加した2015年の流行語は「爆買い」でした。これは、日本の観光業はアジアからの客に支えられているといっても過言ではないでしょう。

訪日外国人旅行者1人当たりの旅行支出額も公開されていて、最新データの2019年ではおよそ16万円でした。グラフの訪日外国人数は3千万人なので、単純計算で4兆5千億円、そのうち半分の2兆円が中国・韓国・台湾の人が消費しているということになります。

2020年からコロナの影響で一度数が減りましたが、数が戻ってきた2023年もアジアの国が多いという構成比は変わりません。しかし、またコロナのような非常事態が起こる可能性もあります。したがって、アジアへ依存するという構造を変える必要があるのではないでしょうか。

客単価は変わらず稼ぐ力は変化していない

この図は、先ほどと同様に日本政府観光局(JNTO)が公開している訪日外国人旅行者1人当たりの旅行支出額を示しています。

訪日外国人旅行者1人当たりの旅行支出額の時系列

訪日外国人の数は2015年くらいから右肩上りでしたが、日本で消費していく1人当たりの金額は15万円位からほとんど変化していません。むしろ、「爆買い」の2015年から減少しています。

ここから何を読み取れるかというと、日本の外国へ向けた観光業の利益は数によって得られていたということです。木下斉さんの言うような生産年齢人口が減少している供給制約の時代に、これまでと同様に数で勝負するのは難しいと言えます。

また、先ほども書いたように再度コロナのようなことも起こりかねない中では、1人当たりの消費価格を向上させるような取り組みをした方が、生き残れる可能性は高いのではないかと考えています。

おわりに

データから読み取れた問題点をまとめると、

  • アジアへの依存

  • 客単価が変わらずに数で勝負している

です。これにより何が起こるかというと、

  • コロナのような事があると観光業は成り行かなくなる

  • 供給制限のためどこかで破綻する

という結果になると思います。

なので、日本は「訪日外国人の数が増えた!」と喜ぶのではなく、「1人当たりの消費金額」を増やす方法を考える必要があると考えました。

気になったことを自分で図にして考えたり調べたりすることは本当に大事ですね。いまは具体的な提案ができませんが、その背景が整理できるので、日常生活のなかで考えられるようになります。

データ出典「日本政府観光局(JNTO)」

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