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時間と建築(30Words / kud_lab)

時間は常に万物と切っても切り離せない関係にある。
時間は有限だからこそ、人は活力を見出し、創造する。より、高見を目指して生きていこうとする。時間を建築に絡めて考えてみたいと思う。

時間とは何なのか。

そもそも時間とは何なのか。
少し物理的な話になるが、時間とは現象の経過と順序を記述するために用いる一次元の連続変数である。ある出来事の発生と経過は,場所を三次元の空間座標で,時刻を一次元の時間座標で表すのが普通である。3個の空間座標と1個の時間座標とは,古典物理学では独立な変数とみなされている。しかし,相対性理論では,両変数は独立でなく,両変数を合わせた四次元の時空座標 (時間・空間座標) が時空世界 (四次元空間) を形成し,各基準系の時間は系の運動状態によって異なることになる。すなわち,ある基準系の時間に比べて,この系に対し運動している基準系の時間の歩度は遅れると考えられている。
しかし現状として、一般的に時間はみんな平等に流れているものである。生きている限り、時は流れるものであり、締め切りや約束の時間に追われることは多々ある。どう悪あがきをしても1日は24時間であるという事実は揺るぎないものである。しかし、体感時間は人それぞれ違うものであり、同じ人でもその時の行動や空間によっても異なる。心理的な要素で伸び縮みするのである。この体感時間というのは、そのアクティビティが本人にとって新しいものかどうか、ということが重要である。よく一般的にいうのが、子供の時は時間が長く感じていたが、大人になってからの1年はあっという間に過ぎてしまうということである。これには新しいものを体験しているかどうかという話が関わってきている。小学生の時、幼稚園の時、とにかく子供の時は日常生活で体験することの中で初めて行なうことが沢山ある。これまでに行なったことのない新鮮さを感じることで時間は長く感じる。逆に言えば、大人になり、年を経ていくにつれて新しいことを体験することは少なくなっていく。多くの人が仕事をしてご飯を食べ、寝るというように同じような単調な日々を送っているため時間が短く感じるのである。毎日違う変化を感じる日々だとしたら、より体感時間が長くなるということである。


建築が体感時間を変える?

違う変化を作り出すための一つの要素として、建築によって体感時間を操作することもできるのではないかと考える。環境や日常の暮らしのなかで起こるこのような時間の揺らぎをどのよう空間に表現し、明確に可視化することができるのだろうか。
 建築は時間を設計していると内藤廣は言う。建築を設計することはその建築を利用する人の生活を設計することであり、そこにどんな生活を生み出せたか、そこに住む人がどのように生きている時間を持てたかということである。また、建築の耐久性、どのくらいそれを長い時間そのままの状態を保たせることができるかを考えるのが設計であると考えているそうだ。確かにその通りであり、建築によって感じられる生活感は異なり、生きやすさも変わってくるだろう。

時を感じる要素

建築で時間を感じるにはどのような要素があるか。建築物の汚れや劣化具合、使われている素材、その時代に流行していたであろうデザインなどから感じることができるであろう。また、その場を常に利用する人にとっては室内で利用する建具や家具から、身体的にも経験的にも時間的変化を感じることができるだろう。時間による建築の変化は設計者にとっては良いものではないかもしれない。更に、時間が経ってしまった建築物に対してリノベーションを行い再利用させることは、元々設計した人の意図を摘み取ってしまうかもしれない。しかし、建築家グループACTの手によってパリ中心部の元駅舎が1986年、オルセー美術館に生まれ変わったというように建築の再利用があらゆるところで行われている。駅舎が美術館になったという事実を初めて聞いた時はとても驚いた。大空間に多くの作品が展示され、多くの人々が訪れている。1建築に昔と今という2つの時間が共存しているのはとても興味深い。

【reference】
・早稲田大学渡辺仁史研究室 時間―空間研究会『時間のデザイン:16のキーワードで読み解く時間と空間の可視化』(2013)鹿島出版会
・10+1web site 時が建築を成す
http://10plus1.jp/monthly/2017/06/issue-02.php
・東西アスファルト事業協同組合 『建築にできること』 内藤廣
https://www.tozai-as.or.jp/mytech/98/98_naito05.html
・コトバンク 時間 ブリタニカ国際大百科事典
https://kotobank.jp/word/%E6%99%82%E9%96%93-72507

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