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窓について考える。

窓展とTOTOギャラリー間講演会

先日、東京国立近代美術館で行われている「窓展 - 窓をめぐるアートと建築の旅 - に行ってきた。そしてその前には現在TOTOギャラリー間で増田・大坪展「それは本当に必要か。」に伴って行われた講演会にも行ってきた。増田大坪の建築手法として特に考えられているのが「窓」。ちょうど窓展にも結び付いている。

これまでの個人設計では窓について考えるのはとても難しいと感じ、あまり触れないようにしてきた。通風や採光はもちろん、デザインとしてもかなり重要にはなってくるが、建築全体のデザインをぶっ壊す要素にもなり得ると考えていたからだ。特に3次元的な曲面をもつような建築において、開閉する開口を考えることは非常に難しいと思う。室内の空調はすべて機械に頼ってしまっているものも多いのではないだろうか。そんな考え方は間違っていると思わせるほど、窓の力を感じられる展示と講演会であった。

窓の歴史

窓は建築に用いられているものではあるが、アートの世界においてもよく利用される言葉である。特に窓展で用いられていたものは絵画の額縁は窓であるということである。窓が外の景色を切り取るように、絵画の額縁は絵を切り取っているものだから窓ともいえるのでは、と使われてきた。そんな絵画の中に窓を取り込んで描いているものもたくさんある。特に私が驚いたものは、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」である。

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この絵に対する印象としてはまずはタイトルの通り食事をしている風景が思い浮かぶ。そして、イエスのユダの裏切りの予言というかなり重々しい状況を感じることができる絵である。これまでは深く考えていなかったが、この食事の風景の奥にある3つの窓は非常に大きな役割を果たしていると思われる。重々しく暗い情景の中、奥の窓から光が差し、外の情景が見えているのは何とも感慨深い。

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アントネッロ・ダ・メッシーナの「書斎の聖ヒエロニムス」は窓を通した室内の風景を描いている。室内から窓の外を書いている作品は多いが、外から室内の様子を描いているものは珍しいのではないだろうか。そして、増田大坪が考えていることはこの作品に通ずるものがあるのではないかと考える。

絵画以外のアートにも窓はよく用いられている。

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レアンドロ・エルリッヒの作品は窓を利用したものが多い。
更に最近日本の森美術館で行われていた塩田千春さんの作品にも窓は利用されている。

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窓の家

塩田千春さんの「魂がふるえる」に伴ってのインタビュー記事。

たくさんの失われた窓のためにー内海昭子

これは新潟で行われている「越後妻有 大地の芸術祭の里」で展示されている作品。内海昭子さんの「沢山の失われた窓のために」という作品。窓から見える風景を通して外に広がる妻有の風景をもう一度発見するための窓である。

そして、もちろん、建築についての窓も歴史として表されている。

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ミース・ファン・デル・ローエの「バルセロナ・パヴィリオン」
窓の配置の仕方、利用法、構造も考えさせられる非常に有名な作品だ。

バルセロナパヴィリオン3

窓がファサードの全体的なデザインとされている作品

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日本のメタボリズムを代表とする黒川紀章の”中銀カプセルタワー”

中銀カプセルタワー_200130_0063

それぞれの個室の丸窓がファサードに出ており、オウムを連想させるような大きな塊にも見える。取り壊すか、再生保存していくか、というところで未だに協議が進められている。再生保存を進めるために、ビルの特集や見学会も行われているので、興味がある人は要チェック!

そしてジャン・ヌーベルの「アラブ世界研究所

アラブ

幾何学模様のガラス張りのファサードというデザインのみではなく、カメラのレンズのように絞り機能がついているため、建築内部に取り込む光の量を調節することができる。

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内部からみるとこんな感じ。

そして最近の建築物として挙げられているのがこの2点

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展示場に実寸大のモデルのある藤本壮介のHouse Nと増田信吾+大坪克亘の躯体の窓。どちらの作品も実際に見に行ったことがないので写真がないのだが、藤本さんの実寸モデルはこんな感じ。

藤本壮介 ハウス

開口位置の異なるフレームが重なって見え奥行き感を感じる。角度によって内部が見え隠れするのが非常に印象的だ。そして、フレームという構造であるのだが、四角で切り取られた景色が見えることによってそれが一つの窓や額縁を模しているようにも思える。

藤本壮介1

実際の住宅をみれたらより良さを感じることができるのかもしれないが、あまりにも期待しすぎてしまったせいか、個人的には感動が少なかった印象。関係ないがモンペリエの集合住宅が見たい。利用状況を目にしてみたい…。

そして躯体の窓は写真がないので、皆さん検索してください。
こちらは増田さんのインタビュー記事。

構造のRCと窓のサッシのずれが生む浮遊感のような雰囲気とガラスに反射する外(庭)の景色。更に2階建てであるにも関わらず屋上部分にまで窓が作られている。上部から大きなカーテンがつるされているところからも、階層ごとに分かれているのではなく、大きな一つの部屋のように感じさせられる。これは、ファッション誌の背景として利用できるような建築にしたいというお施主さんからの要望によりインテリアの見える大きな窓としたらしい。

窓とは何か。

窓とは一体何なのか。と非常に考えさせられる展示と講演会であった。ただの建築の一部としてとらえるのではなく、人々にとっての意味や窓の可能性を考えていきたい。本当はほかにも載せたいものがあったのだがあまりにも長くなってしまったのでこの辺で。

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最後に

窓展では沢山のパンフレットが無料でもらえた。この展示会は2月2日まで!みんな急げ~!学生さんでキャンパスメンバーに所属していると、な、なんと500円で見れちゃいます。そして、TOTOギャラリー間の増田信吾+大坪克亘展は3月22日まで。こちらはなんと無料です。私もまだいけてないのでいっくぞー!


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