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SES残酷物語(番外編)

SES残酷物語の番外編です。

アパレル関連企業で契約社員として働いていたサキは収入の面で将来に不安を感じていた。

ある日ツイッターで目にした「エンジニアは未経験でも稼げる」というツイートに惹かれプログラミングに興味をもち、都内のSES企業に運よく内定を貰えたので転職を決意した。

サキは学生時代あまり勉強したことがなかったが、プログラミングを極めて稼ぐことができるのなら勉強も苦ではないだろうと考えていた。

面接担当者から入社当日の案内メールが届き、当日はオリエンテーションをするらしい。同期も多いので一緒に頑張っていきましょう!と文末に添えられていた。 

オリエンテーション当日

初出社の日、不安を抱えながらもサキは新しい会社でオリエンテーションを迎える。サキの同期はちょうど10人で元銀行員・フリーター・コールセンター勤務など様々なバックグラウンドを抱えた人がいた。

人事「アイスブレイクのためにもお互いに自己紹介しましょう!」

お互いに無難な自己紹介を終えたサキたち一同は今後のスケジュールや研修の進め方について人事から説明を受けたのち、会社が用意した弁当を食べた。

同期1「そもそも、なんでエンジニアになったの?」
同期2「稼げるってTwitterで見て笑」
サキ「手に職を付けることができる仕事がしたくて!」

同期とのお昼は楽しく談笑し、ランチを終えたサキは今後始まる研修のしんどさも同期で一緒に乗り越えることができそうと強く感じた。

プログラミング研修が始める

翌日からプログラミングの研修が始まり、同期と一緒にカリキュラムを進めていく。

カリキュラムはJavascriptとPHPで簡単なアプリを作りながらプログラミングの基礎を学習するというもので研修期間は3ヶ月設けられていた。

サキにはカリキュラムがとても難しく感じたが、同期やメンターに相談しながらなんとか進めていき、3ヶ月が経過した頃に客先へ面談にいくのでまたオリエンテーションがあるので指定の時間に集合するよう言われた。

2回目のオリエンテーション

2回目は営業担当者によるオリエンテーションだった。

オリエンテーションでは再度雇用契約を結び直し福利厚生の説明など2時間ほど要した。

オリエンテーションの中でサキは耳を疑うことを営業から言われた。

営業「未経験はテスターしかなれない。だから、2年程度経歴を盛って開発案件へ営業掛けるからね。」

サキはSES企業は経歴を盛って営業を掛けるのは業界では当たり前と教えられ、面談でボロが出ないように気をつけなきゃと自分に言い聞かせた。

初めての案件提案

オリエンテーションから少し日にちが経ち、サキのもとに初めての案件提案が舞い込んできた。

内容はweb制作会社でHP作成を受託開発している会社だ。

「HTML・CSSが使える人・若い人・コミュニケーションが取れる人・外国籍不可」と案件概要に書いてあり、凄くロースキルな案件だなと懐疑的になりながらもサキは面談へ行くことを了承した。

営業「今回提案させていただくサキです!」
客先「初めまして!よろしくお願いします!早速ですが、マークアップ言語や資料作成に抵抗ありませんか?」
サキ「大丈夫です!宜しくお願いします!」

簡単な質疑応答が終わり初めての面談を終えたサキは、これまで面談練習で練習した内容のことを何も聞かれなかったな〜と思いながらも合格を貰えることを期待して帰宅した。

常駐先が決まる

研修3ヶ月目の中頃、案件先が決まらない同期がサキを含めて3人いた。研修4ヶ月目に入ると弊社ではなぜか待機扱いになり給料が10万円を切るので、サキは不安で眠れない日々が続いた。

そんな不安の中、営業から連絡を受けた。

営業「この前面談に行った制作会社からOK出たよ!」
サキ「ありがとうございます!」

サキは研修終盤ギリギリになって案件が決まり安堵したが、希望するPHPを扱う案件でなかったので複雑な思いだった。HTML・CSSは研修でも習ったが得意というわけでなかった。

初めての現場

研修も無事に終わりサキは現場初日を迎えた。現場で簡単な自己紹介をして早速業務を開始した。

現場リーダー「まずは電話応対をお願いするね、受話器使ったことある?」
サキ「(え???) 前職で使ったことはあります・・・」
現場リーダー「業務に慣れてもらうためにも宜しくね!」

サキはエンジニアとして派遣されているが、職場に慣れるためにも電話対応から始めるんだなと自分を無理やり納得させた。

結局、その日は特にタスクは振られず電話応対で1日が終わった。

雑務ばかりを任さられる日々

現場に入って1ヶ月が過ぎようとしていた頃、サキは相変わらず雑務ばかり任されていた。

内容としては、電話応対・パワポ作成・お茶汲み・簡単なレイアウト修正である。

サキはこれではスキルが伸びないと感じ自社の営業へ今月末で退場したいと連絡した。

営業「契約は3ヶ月なので途中退場は認められません」
サキ「そこをなんとかお願いしたいです。弊社はエンジニアのスキルアップを第一に考えていますよね?」
営業「そもそも先方との契約違反なので途中退場は絶対に無理です」

サキは現場を途中退場できないと知り、絶望した。

現場からクレームを受ける

サキは日々の雑用に嫌気がさし、仕事にも身が入らない日々が続いた。

ある日、営業から連絡がきた。

営業「現場から仕事の成果が出ていないとクレーム来てるよ」
サキ「すみません、パワポ作成が上手く進まなくて。雑用も多いですし」

サキはコードを書く仕事ができず会議の議事録作成や打ち合わせ用のパワポ作成に追われており、ついにはHTMLやCSSさえ触らなくなっていた。

営業「急遽で申し訳ないんだけど、現場から今月末で契約打ち切りって言われたから」
サキ「わかりました・・・」

サキは結局2ヶ月目の月末で契約を打ち切られ、次の現場が見つかるまで待機になってしまった。

会社から転職先を提案される

待機の間は手取り5万になるので、サキは食費や娯楽費を削る生活を余儀なくされた。好きだ服をメルカリで売り生活費の足しにした。

このような不安定な生活ではこの先もしんどいと感じたサキは転職を考え、営業に転職の意思を伝えた。

サキ「転職を考えています」
営業「もうウチ辞めるの?流石に早いと思うよ」
営業「でも、どうしても辞めるのなら仕方ないね」

営業に退職の意思を伝えてから数日後、役員から一通のメールが届いた。

役員「今回は退職するとのことで、残念です」
役員「取引先にサキさんを紹介してみたんだけど、1度面接受けてみたらどうかな?」

募集要項には、ロースキルのサキにはピッタリの会社だった。

年収:300万                            言語 :PHPの経験                          勤務地:渋谷                        

サキは突然の役員からの提案にとても嬉しく感じこの話を受けることにした。しかも正社員の募集なので生活が安定することも即決の理由だ。

役員「ありがとう!では、取引先へサキさんの提案をしておくね」

役員からの提案のおかげか、面接もサクサク進み紹介から1週間後にはサキのもとに内定連絡がきた。

サキは当然、内定を承諾した。

転職先の試用期間で必死に頑張る

サキは渋谷のIT企業で心機一転エンジニアとしてデビューすることになる。

初日は午前中に雇用契約を結び社内のオリエンテーションをして、午後からは部内のメンバー紹介が始まり持ち前の明るさに自信のあるサキはこの会社ではすぐ馴染めそうな気がした。

チームリーダー「サキさんまずは簡単な修正から経験して慣れていってね」

サキはPHPでまず簡単な既存機能の修正から入り社内で展開しているサービスやチームのルールなどを懸命に勉強して行った。

入社して2ヶ月目の月末、サキはチームリーダーに呼ばれた。

サキは試用期間が終わり正式に正社員契約を結ぶのかな?とぼんやり考えていた。

チームリーダー「サキさん来月で試用期間が終わりますね」
チームリーダー「申し訳ないですが、サキさんは試用期間満了をもって契約終了になります」
サキ「なぜですか??」
チームリーダー「スタートアップ企業の弊社ですが、資金繰りが難しく今回新規採用を抑えるという結論になりました」
サキ「給与下がってでも雇って欲しいです」
チームリーダー「すみません、今回の採用は見送りということで」

サキが紹介された会社は半年前から資金繰りが難しくなってきており、新規採用をしている余裕がなかった。しかし、取引先の役員から紹介された子なので無下に断るわけにもいかず試用期間で判断しようとしたとのことらしい。

サキはIT業界に就職して結局1年も経たずにもとのアパレル業界に戻った。

今は契約社員として、店舗に立ちプログラミングとは一切関係のない仕事を続けているらしい。

終わり。






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