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【ネタバレ無】おじさんが予備知識なしで「思い出のマーニー」を観てみた

こんにちは、カニンヘンです。

昨日、2023年1月13日、金曜ロードショーでスタジオジブリ作品「思い出のマーニー」の放送がありました。

私はこの作品はまだ見たことがなく、”たまにはテレビでジブリ作品でも眺めるか・・・”程度の軽い気持ちで視聴しはじめました。

しかし、ラストのエンドロールになる頃、そこには涙ボロッボロでテレビに食い入る40代おじさんがいたのでした。(妻がお風呂に入っていたので遠慮なく号泣できた)

今回は、ネタバレにならない範囲で、「思い出のマーニー」の感想を述べていこうと思います。

簡単なあらすじ

都会で暮らす12歳の杏奈は、血のつながらない、養父母に育てられました。幼い時、実の両親に先立たれ、孤児となったためです。

養母は、杏奈に実の母親のように献身的に接していました。当の杏奈は、小学生だったころは明るくて笑顔もよく見せる子だったのですが、中学生になった頃には、なぜか固く心を閉ざし、喜怒哀楽の表情の乏しい女の子になっていました。中学校でも友達らしい友達はできず、クラス内で孤立しています。

中学校の授業中、杏奈は持病の喘息がひどくなり、学校を早退。養母は自然豊かな場所で療養させたほうが良いと考え、親戚の大岩夫妻の住む家に杏奈を預けます。

杏奈は村を散策していると、湿地帯に建つ無人の洋館「湿っ地屋敷(しめっちやしき)」を見つけます。そのとき杏奈は「なぜだろう、この屋敷のことを知っている気がする・・・」と、その洋館に入ってみたいという好奇心が沸いてきました。

以上が簡単なあらすじです。

家や風景の描写が見事

舞台は夏の北海道、場所は釧路湿原あたりのようですが、実際には存在しない架空の村となっています。

主人公の12歳の杏奈は、持病の喘息を療養するため、住んでいる都会を離れ、この地に来たわけですが、確かにアニメ映像を見ただけで「空気の綺麗さ」が伝わってくるようでした。

また、療養中の宿泊先である、親戚の大岩夫妻の家ですが、これがまた味わいのある木造の家。旅行サイトで見るようなお洒落なコテージといったところでしょうか。

そして杏奈が間借りしている部屋の中に、細い白樺(と思われる)の木が、柱のように付けてありました。この白樺に生えている枝の部分が、荷物をひっかけるのにちょうど良いフックのようになっているのも良かった。

マーニーという12歳の女の子が居る洋館「湿っ地屋敷(しめっちやしき)」も出てくるのですが、これも美しい。モデルの建物は、軽井沢にある「唾鳩荘」というリゾート施設ではないかと噂されています。

もちろん風景も見事なものでした。釧路湿原の、おそらく「藻散布沼(もちりっぷとう)」という場所がモデルとなっていると、いくつかの考察サイトで書かれています。実際にそれらのサイトで、アニメ作画と藻散布沼の風景を並べて比較していますが、まさに瓜二つといった印象。「この大自然なら、そりゃ杏奈の喘息も緩解するわ」、そう思わせる綺麗な風景がたくさんありました。

主人公の内面変化を丁寧に描写

まずこの子、最初はものすごく性格悪いです。

  • 養母のことを「メーメーうるさいヤギみたい」と思っている

  • 村の中学生の信子に、面と向かって「太っちょ豚」と暴言を吐く

  • ボートで助けてくれた村のお爺さんを「トドみたい」と思っている

おそらくこの子は、他人のことを人間として見ることができないのだと思います。「自分には血のつながった両親が居ない、一人っきりの人間なんだ」という孤独感が根底にあり、それがいつしか心の壁となって、周囲の人々を寄せつけくなった、人間を人間として見られなくなった、そういう印象でした。

また、杏奈は外見にコンプレックスを抱えているように思えました。自分の瞳の色がうっすらと蒼いことです。村の中学生の信子に対し「太っちょ豚」という暴言を吐いた原因は、その直前、信子に瞳をのぞかれ、「あなた、瞳の色が・・・」と言われたせいだと考えます。誰しも、一番触れられたくないコンプレックスを刺激されたら、感情が高ぶってしまいますからね。

そんな杏奈ですが、同い年の女の子、マーニーと出会うことで心情の変化が出てきました。マーニーも杏奈と同じ、蒼い瞳を持つ女の子でした。

マーニーと頻繁に会い、お互いのことを話すようになった杏奈は、徐々に表情も豊かになっていきます。大岩夫妻に対しても笑顔を見せるようになり、ジブリ飯をバックバク食べるようになりました。

また、村に着いた当初、杏奈は養母にハガキを出したのですが、その内容は「無事に着きました。大岩のおじさんおばさんも親切です」のような味気ない文を2~3行書くだけでした。それが、物語の中盤には、10行くらいびっしりと書き綴った文章になり、終盤のころには、なんと風景画を描くほどに。

養母に対しても、徐々に心を開いている。そういった杏奈の心境変化が、このハガキの描写から見て取れます。

じっさい、物語の終盤、養母が村に来て、杏奈の様子を見たわけですが、再開したときの杏奈は、ボートの上に立ち上がって笑顔で養母に手を振っていました。

それを見たときの養母の心境たるや。札幌駅の新幹線で見送ったとき、あれだけ無表情で冷たかった子がですよ?

娘を持つ母親なら、あそこは涙腺崩壊シーンのひとつではなかったでしょうか。

ラストの展開で、マーニーの謎が明らかになります。そして杏奈は、自分のコンプレックスも克服します。

最後のエンドロールの描写で、杏奈は信子に「ごめんなさい」と謝ります。そして「来年もちゃんと来るのよ」的なセリフを言い、和解を受け入れた信子。こういったシーンをちゃんと入れるところが、ジブリらしいですね。

きっと来年の夏、本来の性格を取り戻した13歳の杏奈に、信子は会うことになるでしょう。

以上、40代おじさんが初見で「思い出のマーニー」を見た感想でした。

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