《Before the map》

何も言わずにこっちを見つめてる。
夏の暑さが身に染みる。
二人とも額にはびっしょり汗をかいていた。
元々、僕は多汗症で真夏じゃなくても
汗を大量にかくのだけれど、
外界がどんなに凍えるような
冬の冷たさであったとしても、
心臓がばくばくになると
体の内側が大火事になって
汗が吹き出した。
君はそんな僕をかばうようにして
いつも水色のハンカチタオルを持っていた。
別に恩着せがましい気持ちなどない。
きっと君はそう答えただろう。
何も話さなくても
二人は満たされていたのだと。
あの日の僕は気づいていた。
ギターの伴奏が心地よかった。
誰かが名前を呼んだ気がした。
いや、僕じゃない。

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