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【掌編小説】腐った青

 先生を殺すのは1年ぶり4度目だった。
 小6の担任のお面のように割れた額から脳みそが零れて、崩れていく。腐臭が鼻に障った。青いジャージは、どろどろの腐肉にまぎれてもまだ青かった。
 
 学校に置きっぱなしの青いジャージを毎日着ていた先生は、臭かった。オジサンっぽい脂と煙草の混ざった臭い。女子は特にそれを嫌がっていたけれど、先生は男子にも女子にも、スキンシップをとりたがる。近づくと、口からドブの臭いがした。
 ある日の放課後、女子を代表して私と何人かが、スキンシップをやめてほしいと先生に言った。人が傷つくようなことを言うなとものすごく怒った先生にひとりずつ教科準備室に呼ばれて、「お説教」の後、みんな暗い顔で帰っていった。終わるまで待っていて、と誰にも言えなかった私ひとり、いつもよりうんと遅くに家に帰った。初めて先生を殺した日。残りの半年、小学校を卒業するまで、どう過ごしたか覚えていない。中学受験はできなかった。
 
 中学の社会の授業で女性参政権のことを習った日、小6のときに殺したはずの先生が、忌々しいあの青いジャージを着て宿題を邪魔しにやってきた。先生から漂う肉が腐ったような臭いに堪えきれすゲエゲエ吐いた私は、胃が空っぽになった後、反撃に出た。おばあちゃんの裁ちばさみを先生に投げつけると、目玉からはさみを生やして、先生は後ろに倒れていった。制服についたゲロを濡らしたタオルで叩いて落として、衣替えまで母の目を誤魔化して過ごした
 
 通学途中に痴漢に遭ったとき、裁ちばさみが刺さって死んだはずの先生が後ろに立っていた。よく目立つ青いジャージを着ているくせに人込みに紛れて逃げようとしたのを全速力で追って体当たりすると、先生はホームから転げ落ちた。すぐに電車が入ってきた。
 
 都立高校の合格発表の日、ついにやった。私の友達は不合格で、でも塾で彼女より馬鹿だった男子は何人も合格したとわざわざ教えに来た先生を、私は用意していたバールで殴った。頭を狙って、体重を乗せて、何度も何度も、何度も殴った。
 私の心に憑りついた死霊。私が先に進むためには、二度と邪魔をしに来ないようにしなければならない。賢いあの子に聞いた、ゾンビの殺し方。脳を潰すんだって。青いジャージが、どろどろの腐肉にまぎれてもう青かったとわからなくなるまで、私は先生の体を殴り潰した。
 私の脳を潰すために。

**********************************(985文字  1000字未満チャレンジ中)

こちらの企画に参加させていただこうと書いてみました。

普段、ホラー愛好者でないため、全然、企画の主旨と違いますね、これね! 問題があるようでしたらリンクとタグを外します。しかし、枯れ木も山の賑わい、こんなゾンビに出会った人もいるぞということで、仲間に加えて頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します。

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