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ドラマ:春の呪い 2話を視聴した感想

前置き この記事は原作を既読者が書いています。ドラマとしての完成度よりは原作と比較した感想になりネタバレもあります。ドラマが好きだったり原作未読者は読まれないほうがよいかと思います。


立花夏美

最初に変と感じたのは葬儀のシーン
夏美が春の棺に写真を入れるのだがドラマでは参列中に自然に入れている。
このシーンは原作でもあるが夏美が棺に入れるまでの過程が違っている。
原作では最初に夏美は春の棺に写真を入れるか入れないか最後まで悩んでいた。これは冬吾を殺してやりたいとすら思っていた夏美にとっては複雑な心境であったはずだ。だが最後は春の遺言に従う。結果としては原作もドラマも同じではあるが、これでは夏美から春への感情の複雑さが表現しきれていない。これは次の冬吾が夏美に交際を申し込む場面でも同様だ。

冬吾が夏美に交際を申し込んだ際にドラマも原作と同様に春の思い出の場所に連れていくことを条件としている。この時はじめて夏美は春への思いを告白する。この時の台詞は原作と似ているニュアンスだが受け取り方が大きく違ってくる。

「この世の中でわたしが好きなのは春だけです。他に目を向けたことがありません…恋愛感情に近いものを妹に感じていた自分が嫌になって悩んでたことがあったほど、春のことが好きなんです。わたしのことを好きでいてくれるのも春だけでした。」

確かに原作でも恋愛として好きか悩んでいたという台詞はあったがこれは結局わからず自分がヘテロかもわからない。つまりは「好き」という感情を春以外に向けたことがなくこの感情が一体なんなのかわかっていないのだ。
原作では夏美は春のために高三で進路を決めて栄養科の大学を専攻する。これは春が治ったとしても病院通いになると思って病院に就職して付き添えるためだ。バイトも学校に通いながら毎日妹のために病院を訪れる。こういったシーンがあるからこそ夏美の「好き」が異常ともいえることがわかるわけだ。
しかしドラマでは栄養士の資格は春の病気発覚前に取っている。つまりは春は全く関係ない。そして就活に失敗してバイト三昧となっている。前にも書いたが結果としては原作もドラマも同じだが過程がまるで違う。このことは1話の感想でも書いたので省略する。

つまり、確かにドラマも原作も夏美が春のことを好きであることは同じだ。
だがドラマではプロローグや作中の台詞だけが春のことへの感情を表現してしまっているので重みが全く違うのだ。

柊冬吾

彼に関しては心中の台詞が少ないこともあり、あまり多くは語れないがやはり疑問が多い。
まず冬吾がなぜ夏美という人間に興味を示したのか。初対面では暗い女と思っていたが春から聞く話では社交的で明るい性格という違和感からだ。前述したとおり姉とはいえ春のためへの異常なまでの献身的な行動。しかし実際に話してみると明るく笑い嫌われてはいないと思い彼は無意識に笑ってしまっている。だがドラマは夏美の献身的な行動は影も形もなく消え去っている。3話で語られるかは分からないが全く冬吾が夏美のことを好きになったかが分からない。

最後のシーンで夏美が飛び降りようとしたときに手を掴み冬吾はこう言う

「お前が死んだら俺も死ぬぞ!」

この台詞は原作でもインパクトの強い台詞だ。だが前述した夏美の時のように過程が違っているせいでよく分からない台詞となっている。まず原作1話のデート以前にも2人がデートしていることが以下の台詞でわかる。

「笑うな お前は様子がおかしいときほど無理矢理笑う。今日は猶更 酷かった。もしかしてと思っていたら案の定だ。」

この台詞から冬吾は夏美のことをよく観察していて今日は特に酷かったから引き返してきたのだ。つまりは夏美のことが本当に好きだからこそ夏美の状態に気づいたのだ。
しかしドラマでは初デートだ。しかもいきなり先ほどの台詞だけを言うせいで夏美と同じようによく分からないことになってしまっている。


演出について

細かな点はいくらでもあげられるがやはり一番ダメと思ったのは夏美が飛び降りようとしたときにはっきりと春の姿が目の前に写っていることだろう。
原作ではもし見透かされていたらと思うと後ろを振り向くことすらできず、最後に振り向いたとき、本当に春は死んだと気づいたのだ。
そもそも春の面影や痕跡を探すために罪悪感に囚われながらも冬吾と付き合い始めたということをよく考えてほしい。


最後に

私は1話を視聴した時はもちろんキレたがしかしもはや別の何かに変わっていたのでこのまま我が道を貫くというなら百歩譲ってよかったが2話は思い出したかのように原作の台詞をbotのように言うのであまりに中途半端になっており1話より完成度が低くとなっていると感じる。

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