永遠の一瞬  -春高バレー感想 2-

鎮西高校は最初の松本国際戦をのぞいてはすべてフルセットで決勝まで勝ち上がってきました。しかも点数の拮抗した試合ばかりでした。もともとのブロックも「死のブロック」と評されるような強豪校がひしめいているブロックでした。数字をみるとえげつないですよ。

2回戦     松本国際(27-25,25-23)
3回戦      東北(25-21,24-26,28-26) 
準々決勝 福井工大附福井(28-26,18-25,25-20)
準決勝 東山(23-25,25-16,25-23,17-25,15-11)
決勝  駿台学園(25-23,25-22,21-25,17-25,12-15)

舛本くんが怪我をおしてコートに立って、これだけの激戦を乗り越えてきて。勝負強さは本物だと思っていました。でも、さすがに決勝で勝ち切るためには3-0が絶対条件だったんだろうと今でも思っています。(まあ、たらればです。感想なんで多めに見ていただけると)

鎮西の優勝を阻んだ駿台の緻密なデータバレーとそれを支えた個々の技術の高さ、そこまでの戦いの中で足らなかったピースを埋めて、チームとしての完成度をこの春高に向けて仕上がげて来たものだったこと、決勝までの試合を失セット0で戦えたことが彼らの勝因だったのかなと思います。
ボールがまったく落ちない感じのフロアディフェンスもすごかったですし、交代で入った選手が見事に機能したその作戦の選択もチームが組織として機能したのを見せてもらった気がしました。

舛本くんがコートに立ち続けたことにはいろんな意見があると思いますし、それぞれの立ち位置が違えば、違ったものが見えるというのを前提で私の意見を書いておくことにします。

春高は高校生バレーボーラーにとって夢の舞台です。
彼らがすべてをかけてそこに立ちたいという気持ちも、全身全霊をかけていればいるほど、強くなることも想像がつきます。バレーボール人生がそのコートを降りたときに終わる選手にとっては尚更かもしれません。
そんな強い思いで目指す舞台だからこそ、私は若い選手にその選択の意味をちゃんと大人が伝えていくべきだと思っています。

舛本くんがインタビューで語ったように「代表をめざす選手」としてこれからもバレーボールを続けていくのなら、この選択には多くのリスクが含んでたと言わざるをえません。膝も、足首も、腰も身体は消耗品ですから、残念ながら。
無理をすれば無理をするほど、選手生命を短くするかもしれないですし、それを起因とする別の怪我を生むかもしれません。

そんな重大な決断だからこそ、選択肢が存在しててほしいと思っています。そのためにはいくつか選択肢があって、誰が出ても同じようにパフォーマンスを出せるチームを作る(組織で戦う)ことも、圧倒的エースが怪我をして欠場したら戦力ダウンを覚悟することも、怪我をしたら選手の未来を犠牲にして戦い続けることも一つの選択肢でしょう。

それが選べているようには見えなくて、強豪校の伝統の戦い方という固定概念と責任感が選ばせているように見えてしまうのが私がモヤっとするところではあります。
そしてその刹那な戦い方は見ている人の心を鷲掴みにしますしね。

子供の才能はや未来は大人が守るべき、育てるべき大事なもので大人の思惑に搾取されていいものではないと私は考えます。

とはいえ、現場で何が起こっているかは私には知り得ないこともたくさんあります。正しい情報を持っていないのに判断することもまた危険です。だから、ただ、今はそういう刹那的な選択をする選手や学校が減ってくれてくれたらいいなということしか言えることはないかなとも思っています。そして、色んな意見が活発に交わされることでいままで表出化しなかった問題を真剣に考えることにも意味があると思っているので、言葉に残しておきます。

でもこの戦いを戦い抜いた選手にとっての経験はきっととてつもなく価値のある体験で得るものも多かったとは思いますし、その姿を心配しながらも応援し続けたことも目の前にある事実でした。

人の感情はそんなに簡単に白と黒で区別できるものじゃないんですよね、誰にとっても。


(つづく)




 

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