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まずい鰻に自分の実力を教えてもらった気がする。

ふるさと納税、何を買えばいいかわからなかったので、周りの人に聞いてまわったら、九州のうなぎがおいしかったと言う人が多い。
実家に帰っていたので、両親にふるさと納税で欲しいものがあるか聞いてみたらうなぎがいいと言うので、ランキング上位にあったものを注文してみた。
冷凍のうなぎ4パックで22,000円位だった気がする。
ちょうど土用の丑の日に届くように配達されたが家族で寿司屋で鰻を食べに行くに行く予定があったので、ふるさと納税鰻は冷凍庫で保管され、2週間ほど経った週末の夕飯に鰻丼として提供された。

美味しくない。

専門店で調理するように炭火であぶるわけにいかないので臭みが消えない。
寿司屋できちんと調理された美味しい鰻を食べてしまったので余計に美味しくなさが際立つ。
母がオーブンで炙ってはみたものの、スーパーで買ううなぎよりはちょっとマシ位にしかならない。
寄付の返礼品に文句をつける方が間違っているのだろうが、個人的にはちょっとがっかりしてしまった。
しかも、両親が気を遣って黙々と食べてくれているのが余計に悲しい。
なけなしのふるさと納税枠のほとんどを費やしたとはいえ、美味しくないならおいしくないとはっきり言ってもらったほうがよっぽど救われた。

ぐにょぐにょした鰻を噛みながら、こんなんでふるさと納税枠の殆どを費やしてしまう自分の経済能力の低さが恨めしくなった。

最近ちょくちょく実家に帰るので、実家のありがたみを存分に受けている。
同時に一人暮らしに戻ると生活レベルが一気に落ちるので辛い。
回らない寿司屋に連れて行ってもらえるので、一人暮らしに戻って、チェーン店の寿司屋に行くと何を食べても美味しくない。風呂が自動でわかないので、湯船につかるハードルがあがる。部屋が狭すぎて1日布団でごろごろしてしまう。何を食べるか自分で決めなければいけない。

自分で給料をもらって生活しているのだから、本当はちょっと部屋が狭いことも蛇口をひねらないと風呂がわかないことも自活している証として誇りに思いたい。

実家に帰っているときに発熱し、初めて仕事を休んだ。療養2日目の夜、父親は、母親に「サボりかもしれないからちゃんと見はっとけよ」と命令しているのを聞いた。
26歳にもなって理由なく仕事を休むような人間だと思われるのは腹立たしい。瞬発的に何も言えないで、Twitterに愚痴を垂れ流している時間が大嫌いだ。
次の日、熱は何事もなかったかのように下がっていたので出勤することができた。狭い部屋の中で、ふるさと納税のまずい鰻について考える。
自分ではまずい鰻しか買えないくせに、いくらでもちゃんとした鰻を食わせてくれる父親の、ちょっとした軽口に深く傷ついてしまう。
親の脛にぶら下がりながら親の悪口を言うのは格好悪い。次の週末、実家に帰ろうか悩んでいる。嫌なこと言われるんだから帰らなければいいのに、一人きりで過ごすのは寂しい。
世界で1番情けない甘ったれだと思う。

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