ヒーローを目指す道Ⅲ/踏み込め、新天地

来ていいって。言ってもらえた。それが、とても嬉しかった。入団試験みたいな物も無い。ただ、あの場の誰よりも勇敢だったという事だけが、オレクサドルさんを動かしたんだ。
何も取り柄のない僕なんかが。恵まれた仲間と機会が合わさっただけで。僕よりも相応しい人間がいるんじゃないかって思う日だってあるけど・・・
「着いた。ここで面接か」
自信を持てって言われたんだ。そうしないと生き残れない。

「初めましてかな。私がここを仕切るアスミコ・ボルディミールだ。よろしく頼む」
「は、はい。よろしくお願いします」
とても緊張する。中学の入試の時の面接と同じくらいなのを思い出す・・・が
「まぁ、堅苦しいのは無しにして、気軽に行こう」
「・・・はい?」
あれ、なんかおかしくないですか?
「私ね、上下関係とか無しに友達みたいに接して欲しいんだよ。元々、そんな距離感でいいと思っているし、型破りな事をやってみたかったんだよ。長々とした話なんて疲れるだけだろう?だから・・・」
そういう事でしたか。緊張させ過ぎないための配慮だと思っていた。でも、この人はこんな人なんだ。と一瞬でわかった。まるで漫画の中みたいな衝撃の展開だけど。
「歓迎するぜ、ノカルコフ。今日からここが、お前さんの第二の家だ」

びっくりするほど早く終わった面接の後、アスミコさんから分厚い資料を貰って、帰ることになった。
「どうだった?」
「あっさり終わったよ。担当の人、面白い人だったよ」
「それはよかった」
ご飯を食べながら母と面接の話をした。資料はゆっくり風呂に入ってから読もう。
部屋に戻って貰った資料を読む。資料というよりはガイド本みたいな書き方で読んでいて面白い。書いた人のセンスかな。
映画のパンフレットみたいで何度も読みたくなる。
それが、あの人たちが作りたかった理想の軍隊みたいに。
半分ほど読んでいたら眠くなってきた。しおりを挟んで歯を磨いて布団に入った。
資料は、土日を費やして全部読んだ。結構な量で目が疲れたけど、楽しんで読めた。資料と称するにはとても面白かった。
今日は月曜日。このあと10時からオリエンテーションがあるらしい。直接基地に来てくれとアスミコさんから連絡があった。
因みに、オレクサドルさんとアスミコさんからは電話番号を教えてもらっていて、気軽に話してくれていいと言ってくれた。
アスミコさんはとにかく面白くて、お笑い番組の事をメールで送ってくれる。昨日なんて「日本発のチェーン店の牛丼、美味しかった」って写メもくれたし。
本当に親身になってくれるんだな。この人は。
だから、僕もついていかなきゃ。この世界に身を置くのは決まっているし、覚悟もできている・・・つもりだから。
物思いに耽ていたら準備が終わって、玄関を出る。
あいにく外は雨だけど、土砂降りでもないから安いビニール傘を広げて基地に向かった歩き出した。


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