とてもいいことを思いついた:レビュー論文を書こう
レビュー論文とは、特定の分野に注目して多くの既発表論文に書かれた成果をまとめ、総合的にわかることや今後の見通しに関する意見などを1つの学術論文として発表するものです。
わたしは10年後の定年退職後、フリーランス研究者として活動しようと思っています。ですのでこれから定年までの10年ちょっとの間は下積み期間と考えています。幸い現在勤めている会社でも研究開発職をさせてもらっているのでデータの収集や整理といった基本動作は続けられています。
しかし・・・
最後の論文から既に7年経過している
わたしのかつての専門は大気化学。しかもフィールドに出て観測することを基本としたもの。普通に論文を出すにはおカネと時間だけでなく周囲の理解が必要です。なにしろ今は会社員なのですぐに簡単とはいきません。
とはいえいまの会社は空調施工会社なので大気化学と結びつきがまったくないとはいえません。ですが中途で入ってまだ4年弱。とてもじゃないけれど空調や排気処理のエキスパートではありません。ですので、やはり一朝一夕に現職専門と大気化学の併せ技はできそうにないのが現実です。
なにしろ勉強になる
7年も論文を書いていないので当然それくらいの長期間にわたって関連分野の論文を読んでいません。査読依頼もすべて断ってきたため来なくなってしまいました。全然勉強していないのにフリーランスなんて無理!
しかしレビュー論文を書くとなれば話は別です。なにしろ自分のデータがなにもないのですから、とにかくターゲットにした分野の論文をたくさん読んでまとめなければなりません。これは現役フリーランス研究者になるために必須のことです。さらに掲載されれば1つの論文を発表したことにほかなりません。
レビュー論文の苦い思い出
アメリカにいたころ師匠(むこうは弟子とは思ってくれてないかな・・)だったAlex Guentherに「セスキテルペンのレビュー論文を書いてもらえないか?」といわれました。
セスキテルペンとは、炭素数が15のイソプレン骨格を持った炭化水素類の総称で、植物が放出する揮発性有機化合物(VOC)の1群として当時新たに注目されつつありました。大気中での反応性が極めて高く中途半端に分子量が大きいため分析法も試行錯誤の状態でした。
そんな中で加熱脱着法が主流だったところに目を付けたわたしは溶媒抽出法によるセスキテルペンの濃縮-分析法を作りました。これにより加熱脱着法では検出できなかった酸素原子を含んだセスキテルペンや当時は未知の領域だった炭素数が15を超える化合物も検出できる可能性がありました。当時は教科書にも「そんな大きな分子のものはVOCとして放出されない」と書かれていました。これは拙著論文でのちに理解が変わるのですが、それは別記事で今後紹介します。
いずれにしても!生物起源VOC(Biogenic VOC:BVOC)放出モデルの圧倒的ナンバーワンであるAlex Guentherが共著に入ったレビュー論文を書くということはBVOCの世界においてセスキテルペンの第一人者だと胸を張って言える大チャンスでした。「Detlev Helmigを出し抜くのか。相手は(身長も)でかいし怖いな。」と思ったのと根っからの勉強嫌いからあっさり「いいっす」と断ってしまったのです。
いま振り返ると本当に大バカでした。
というわけでレビュー論文を書こう
レビュー論文を書くことはいまのわたしにはいいことづくめだとわかりました。
○ フリーランス研究者を目指すなら今の論文を読まねばならない
○ 観測もおカネも器械も要らない
○ 8年ぶりに論文を発表できる
年末年始の10連休も論文はネットで読み放題(実は紙両面印刷派)
このテーマは「はじめてのレビュー論文奮闘記」としてマガジンにしていこうと思います。また、読んだ論文のステキなポイントも記事にしていきます。
がんばります!
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