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3 坂道のマネージャーは人気者

ある日、収録スタジオの廊下を〇〇が一人で歩いていると、ふと声をかけられる。


スタッフ「〇〇さん、乃木坂メンバーについてお聞きしたいことがあるんですけど、少しお話聞かせてもらってもよろしいですか?」


そこにいたのは普段お世話になっている乃木坂工事中のスタッフだった。
とはいえ、収録で顔を見知った程度で特別仲いいというわけでもない。

そんなスタッフから声をかけられるなんて、珍しいななんて思いながら返事を返す。


〇〇「えぇ、俺が答えられることでしたら」


真剣な話なのだろうか、ここでは、と歯切れが悪い感じで案内されたのは、空いている打ち合わせ部屋だった。





スタッフに普段使わない打ち合わせ部屋へと呼ばれると、番組で使うので乃木坂についてインタビューを受けるという話だった。


ああ、そういうことかと、質問されるがままインタビューに受け答えていく。


最初は乃木坂全体の話を少しして、次にメンバーのことについて聞かれた。




スタッフ「それでは、メンバーについてもお伺いしたいんですが、生田さんからよろしいですか。彼女はどんなメンバーでしょうか?」




〇〇「うーん……そうですね、綺麗で可愛くてメンバーの中でも頭一つ出て歌が上手いですね。あとはああ見えて優しくて場の空気を柔らかくしてくれる存在ですかね」




スタッフが何を聞き出したいのかいまいちわからず、〇〇は当たり障りない所から答えていく。





スタッフ「なるほど。それでは反対に彼女の欠点みたいなところってありますか?」




〇〇「んー、いや、特にないですね」




スタッフ「本当ですか? できれば、ここだけの話にしとくのでなにか教えていただけると」



スタッフが食い下がるので珍しい〇〇の語気が強くなる。




〇〇「本当にないんですって。絵梨花はもし自分に足りない部分があるとしたら、しっかりと自身を見つめ直して足りない部分を補おうとしっかり努力する人間です。それも踏まえて彼女に欠点があると思ってません」





スタッフの質問に答えるが、それでも粘ってくるので〇〇の声色は次第に圧が発せられていく。





スタッフ「…いや…ほら、だとしても少しくらい改善した方が良い点と良いますか…」



スタッフのその一言で〇〇の堪忍袋の尾が切れた。





〇〇「申し訳ないですが俺からお伝えできることは何もありません。俺は生田絵梨花という存在が大好きで心の底から信頼しています。先ほどもお伝えしたように彼女に欠点なんてありません。どんなところも絵梨花のいいところだと思ってます。もしそれでもそんな事を聞きたいなら俺じゃない方におねがいします。失礼します」


スタッフ「え、あ、ちょっー!」





最後は冷徹な口調で言い放った〇〇は、止めようとするスタッフの制止を無視して立ち上がると、そのまま部屋の出口に一直線に向かう。



ドアノブに手をかけた瞬間、上から水滴がポツリと垂れてきた。

空調かなと、瞬間的に思ったのもつかの間。
ポタポタととめどなく水滴は落ちてくる。

ふと見上げるとそこには。



〇〇「うおっ!!!えっ!?誰!? 絵梨花!?」




絵梨花「〇〇さん~~!わだじも!ずぎでず~!」




目の前で何が起きているのかは全く読めないが、全身タイツの様な姿で絵梨花が号泣しながら天井に張り付いている光景に、〇〇は混乱しながらただただ焦る。




〇〇「と、とりあえず、下に降りてから話を…って、冷たっ! 涙が!」



先程の水滴は絵梨花の涙だったらしい。
グシャグシャな顔でバタバタと手足をバタつかせる絵梨花。


そんな光景に半ばあきれながら、先程〇〇にインタビューをしていたスタッフが、いつの間にか現れていたカメラスタッフとともに二人のもとに近寄ってきた。

スタッフ「はぁ…だから言ったじゃないですか。生田さんが〇〇さんに自分の改善点がないか聞いて欲しいっていうから、無理矢理あんな質問させてもらいました。申し訳ございませんでした」




〇〇「え、あ、そういうことですか!?」





絵梨花の涙の雨が降り注いでいるのを気にもとめず、スタッフは申し訳無さそうに〇〇に頭を下げる。





絵梨花「〇〇ざぁーん! おろじで~! ぎゅうじだい~!」





〇〇「いや、これ、どうしたら良いのか分かんないだけど!? とりあえずスタッフさんー、絵梨花をおろしてあげてー!」






バタバタと手足を動かす絵梨花に〇〇は困惑したままスタッフに絵梨花の救助をお願いする。




スタッフが絵梨花を地面へと下ろすと、その瞬間に〇〇に飛びかかるように抱き着かれ、周囲に苦笑の輪が広がるので〇〇は周りに謝り倒して絵梨花を引き取るのだった。






ヘンテコな全身タイツから着替えを済ませてから楽屋に戻り、〇〇は絵梨花に向き直って軽いお説教をはじめる。


〇〇「あのねぇ…絵梨花、ああいうのは良くないと思う。もし絵梨花が聞きたいこととかあったらちゃんと、質問してくれたら答えるしさ?」




〇〇「はーい!」


まるでお説教をされている人とは思えない、ニコニコ笑顔で話を聞く絵梨花。






〇〇「いや、俺の話きいてます? 絵梨花さん?」





絵梨花「聞いてますよぉ~。えへへへっ」
















玲香「いくちゃん、〇〇さんのお説教を幸せオーラ全開で弾き飛ばしてんだけど…あれ…なに?」




真夏「さ、さぁ? まぁいくちゃん本人が、幸せそうだし良いんじゃない?」




少し離れたところから〇〇と絵梨花の行く末を見守る玲香と真夏であった。










〇〇「まったく、おーい、話聞いてるかー? 絵梨花さーん?」




絵梨花「えー、なーんですか~? 呼んだだけ? もーう、仕方ないですね~〇〇さんだ大好きないくちゃんはここにいますよ~」










〇〇「…よし、後はキャプテンと真夏に任せる。俺じゃ、無理だ…」





玲香「いや、急に匙投げてこないで下さい!」

真夏「絶対めんどくさいやつ! 〇〇さんが頑張ってくださいよ!!」



絵梨花「え〜? 玲香に真夏が話聞きたいって〜? しょうがないな〜」



ニヤニヤしながら玲香と真夏のもとに歩み寄り、ガシッと二人の肩に手を回す絵梨花。

あぁ、これは逃げられないやつだ。

普段からジャイアン絵梨花を体験している二人は、黙って絵梨花に身を委ねるしかなかった。


二人を犠牲にしてこっそりと逃げようとする〇〇を怨めしそうな目で睨みながら。



玲香&真夏「「(〇〇〜!)」」



〇〇「(すまん…二人とも……)」





その後、数時間拘束されて心身ともに疲れ果てた玲香と真夏に〇〇がこっ酷く怒られるのは、また別のお話。






つづく


この物語はフィクションです
実在する人物などとは一切関係ございません


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