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2 坂道のマネージャーは人気者
七瀬「〇〇、疲れた~」
収録終わり。
楽屋に戻ってきた西野七瀬はキョロキョロとあたりを見回すと、ちょうど楽屋のソファーの前でしゃがみこんで何やら作業をしていた〇〇の姿を見つけると衣装のままテクテク近寄っていった。
そして、躊躇なんて微塵もない感じで体重を預けるように〇〇の背中に落ちるように抱きつく。
「うおっ…ぐぅっ…こ、こらっ…しゃがんでる人間に全力でのしかかったら危ないって何度言えば…」
七瀬は全身の力を抜いて〇〇の首に背後から両手を回して抱きつくと、目を閉じてゆっくりと深呼吸する。
七瀬「…あぁ、〇〇の匂いやぁ……落ち着く…」
〇〇「文字通り息を吸うように変態行為を行うんじゃない」
七瀬「ええやん、減るもんやなし」
〇〇「俺の信頼というかけがえのないものが減るんだよ! 世の中で一番汚いモノを見るような瞳で飛鳥が見てるから、マジでやめて!」
七瀬「イヤや〜、疲れたんやから労って〜」
〇〇の言葉を気にすることなく、七瀬は背中に抱きついたまま背中に顔を埋める。
そのとき、申し訳無さそうにスタッフの声が七瀬を呼んだ。
スタッフ「すいませーん、西野さんと高山さん、ちょっと追加で撮影お願いします」
七瀬「ちぇっ、しゃーないな。ほなまたな〇〇」
〇〇「はーい、行ってらっしゃい」
七瀬はゆっくりと〇〇の背中から起き上がると、ゆっくりと呼ばれたほうへと歩いていった。
背中から七瀬に開放された〇〇は一息つこうとソファーに腰を下ろす。
ところどころに散らばって楽屋にいるメンバーを眺めながらしばしの休憩を取っていると、視界に一人の美女の姿が入り込んできた。
何故かその美女は楽屋のソファーに座った〇〇の所へ近寄ってきたなと思ったら、ソファーと〇〇の間に座って背中に頭をつけている。
先ほどまでいた西野七瀬がいつもしている光景。
女神と呼ばれる彼女の珍しい行動に、他のメンバーからの視線が集まるが、彼女はやめようとはしなかった。
純粋に綺麗で可愛い。
女神と言われるのも頷けるとつくづく思う。
でもソファーの背もたれの間って大丈夫なのだろうか。
キツくないだろうか。
苦しくないかな。
七瀬には絶対しないであろう心配を白石麻衣にはしてしまう。
心のなかで密かに七瀬に謝りつつ、〇〇は背中で無言を貫く麻衣に声を掛ける。
〇〇「麻衣? どうした?」
麻衣「んー」
背中に顔を埋めているせいか、こもった声とともに背中にむず痒さが走る。
〇〇「どうしましたかー?」
麻衣「なぁちゃんの真似」
〇〇「あら珍しい。甘えん坊麻衣ちゃんを楽屋で見れるなんて」
普段はしっかりしている麻衣にそんなことを投げかけると、両腕が〇〇のお腹に回ってきてキュッと抱きしめる。
珍しい。
そんなことを思いながらふと首を回して背中に視線を向けると彼女の頭がみえた。
顔は背中に押し付けられて見えないけど、髪の間から覗く耳が赤く染まっていた。
乃木坂の顔として、絶対的なエースとして、彼女を見るファンの目。
そして、尊敬と憧れの目で見る後輩たち。
いつしか乃木坂46の白石麻衣という偶像は彼女をどれだけ縛り付けていたのだろうか。
いつも笑顔でいる裏側で、どれだけ我慢しているであろう彼女が、本当は甘えたがりなことを〇〇は知っていた。
〇〇はそんな麻衣を見つめながら、なんとも言えない歯がゆさを感じながらゆっくりとお腹に回った彼女の手に、自らの手を重ねる。
七瀬の真似なんてしなくていいよ。
もっともっと麻衣に甘えて欲しい。
もっと甘えられるようにするから。
そう伝わるようにお腹にまわる彼女の腕をゆっくりとぽんぽんと、一定のリズムで優しくたたく。
やがて、麻衣がゆっくりと言葉を発する。
麻衣「…私もしてみたかったの。〇〇の背中にくっついて、麻衣は仕方ないな〜、って笑って欲しかった」
そういいながらこつんって小さく肩に頭突きをしてくるこの人は可愛すぎる。
しかし、不意にお腹に手を回す麻衣のちからがゆるんだと思ったら、再び彼女が言葉を投げかけてくる。
麻衣「なんてね、ごめんね、甘えちゃって…」
どこか物悲しげにそう言って腕をほどいてその場から立ち去ろうとする麻衣。
しかし、〇〇はとっさに麻衣の腕を握りしめて自らの身体に先ほどと同じように抱きしめさせると、彼女にしか聞こえないような小さな声で言った。
〇〇「麻衣」
麻衣「…」
〇〇「麻衣の重圧は俺には全てはわかってあげられない。でも、甘えたくなったらいつでも甘えてよ。いつでも受け止めるからさ」
麻衣「…いいの? 私、結構面倒くさいよ?」
〇〇「知ってるw でもさ、何年の仲だと思ってんだよ。デビューしたときからマネージャーなんだから、いまさら面倒くさいとか思うわけないよ」
麻衣「そっか、ふふふ、そうだよね」
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そういうと、麻衣は再びぎゅっと力を込めて〇〇の身体に抱きつきながら背中に顔を埋めた。
麻衣「ありがとう、〇〇。もうちょっと甘えてていい?」
〇〇「おぅ、もちろん」
マネージャーとアイドル、戦友、良き理解者
〇〇と麻衣を表す関係はいくつもある。
どれが一番かなんてわからない。
でも、麻衣にとって自分の弱さをさらけ出せる場所が〇〇なのは今までもこれからも変わらない。
そんな関係を居心地良く思いながら麻衣は〇〇の背を抱きしめるのだった。
七瀬「ただいま~、ってあれ?」
〇〇「おかえりー七瀬」
〇〇の背中ではあのあとそのまま眠りについてしまった麻衣が気持ちよさそうに寝息をたてていた。
七瀬「まいやん、珍しいな」
〇〇「まぁ、たまにはね」
七瀬「しゃーないな、んじゃ、まいやんが起きてからにするわ」
そう言ってソファーの空いているスペースに座りながら麻衣が起きるのを待つ七瀬。
その後
〇〇に抱きつきながら眠る麻衣をスマホの写真に収める七瀬とそれを起きてから見て赤面する麻衣のじゃれ合いに巻き込まれた〇〇だったのだか、それはまた別のお話。
つづく
この物語はフィクションです。
実在する人物などとは一切関係ございません。
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