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アルセウスがすごく良かったよという話

 『Pokémon LEGENDS アルセウス』がすごく良かったよという話。

 私はポケモンシリーズが大好きだが、昨今のアクションゲームはとても苦手だ。難易度をEASYにして、ようやくまともに遊べるか遊べないかというありさま。某蒙古を斬るゲームなどは、叔父さんを助けるのがゲームクリアだと勘違いしており、なんとか必死に戦って助け出したものの、どうもまだストーリー全体の3分の1くらいらしいと知って、すっかり諦めてしまった。

 そんなレベルの運動音痴なので『アルセウス』がアクション仕様の外伝と聞いて、最初は手を出す気にならなかった。しかし、どうやら新種のポケモン(舞台は過去なのだが)が登場するなど、本編シリーズに準ずる重要な作品らしいと聞きつけ、これはやはりやっておかねばなるまいと思い購入したのだった。

 で、図鑑のページをすべて完成させ、無事にアルセウスを入手するところまで遊びました。

 なんでかといえば、すっごくおもしろかったからだ。せっかくなので良かったなと思った点を書く。


「静」のアクション

 『アルセウス』はボールを投げてポケモンを捕まえるゲームだ。気づかれないように近づき、相手が油断している隙に投げる。どちらかといえば要求されるのは、せわしなく動くスキルよりも、物陰に息を潜めてタイミングを待つ忍耐力だ。おかげでアクション操作が苦手でも、リアルタイムでキャラクターを動かす醍醐味を味わうことができる。

 また、同じようにボールを投げるアクションが求められる『ポケモンGO』や『Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ』に比べ、捕獲率を上げる方法が多く用意されている。面倒な運ゲーになりにくい。

 そうはいっても、あっさり見つかったり、操作ミスで狙いが外れたりすることは多々ある。でも、うまくいかなかった場合は、従来のシリーズのように手持ちのポケモンを使って、戦闘で弱らせて捕まえることもできる。このあたりのバランスがとても上手くできている。

戦闘がアクションじゃない

 一番良かったというかホッとしたポイントはこれ。野生のポケモンや、トレーナー(『アルセウス』ではトレーナーと呼ばないけど)とのバトルが、アクションによるものでなく、コマンド選択式のものである点だ。

 本編シリーズとはシステムが異なるものの、近い感覚で遊べる。シームレスに戦闘画面に移行するからストレスもない。「ハヤワザ」「チカラワザ」の仕様も、捕獲のために相手のHPを調節するのに非常に便利で、のちに『シャイニングパール』などを遊んだ時に、思わずLRボタンを押してしまったほどだ。

 必ず『動』のアクションを要求されるキングやクイーンとの戦闘は、個人的にはとても難易度が高かった。もし通常の戦闘も同じようにリアルタイムのアクションになっていたら、私は間違いなく途中でボールではなくゲームを投げていたはず。戦闘がコマンドバトルで大変助かった。

進化・技覚えの仕様

 地味に良かったとこ。従来シリーズのポケモンでは、手持ちのポケモンが進化レベルに達すると勝手に進化する演出に突入する。進化させないためには、ボタンを入力し進化キャンセルをしなくてはならない。これはレベルが上がるたびに発生する。「かわらずのいし」を持たせれば常に進化させないことも可能だが、持ち物を縛ることになるし手間である。

 だが、『アルセウス』では進化可能なレベルに達すると「進化可能」と通知されるのみで、以降は任意で進化を行うことができる。好きなタイミングで進化させられるのだ。

 同じように技についても、従来は技を覚えるたびに既存の技を忘れさせるか否かをいちいち選択しなければならず、また、一度忘れた技を確認したり思い出したりするには特別な手段が必要だった。『アルセウス』ではストックのような形で覚え、常に確認することができ、自由に入れ替えることができる。

 総じて本編において、伝統ではありながらも煩わしかった点が解消されている。本編に逆輸入してもいいのではと思うくらい便利だった。

バトルの簡略化

 先ほども述べたが、『アルセウス』の戦闘はコマンド形式ではありながらも、本来のターン制バトルとはシステムが異なる。「FFX」の「カウントタイムバトル」のように敵味方の行動順がころころ入れ替わり、これが勝敗の鍵を握っている。また、技の種類がごっそり削られ、「はどう」系の技などは仕様も異なる。「ねむり」「こおり」といった状態異常も「ねむけ」「しもやけ」に変更された。

 「ハヤワザ」「チカラワザ」の導入も含め、従来のポケモンを遊びまくっていると最初はやや戸惑う変更ではあるが、総じてスピーディな進行に一役買っており、慣れてしまえば快適である。

 また、「がんばレベル」の導入で後天的なステータスの底上げが簡単にできる。いわゆる「厳選」をあまり気にしなくて良い点も遊びやすい。特に使うつもりのない伝説ポケモンでも一応なんとなく厳選をしたくなり、そのために捕まえず後回しにした結果、捕獲を忘れてしまいがちな私としては大変ありがたい。

 「とくせい」や「もちもの」が存在しないせいで弱体化してしまうポケモンが出てくるのは少し残念なものの、このあたりはバトルを複雑化させている原因でもあるので、シリーズに親しんでいない人にとってはハードルを下げる要素となっているかもしれない。

逃がすことのメリット

 本編シリーズでは孵化厳選等によって生まれた大量のポケモンたちを逃がすことにより、謎の罪悪感を覚えることがあった。だが、今回はガンバリ系のアイテムを入手するために、むしろ積極的にポケモンを逃がした方が良い。このあたりは『ポケGO』『ピカブイ』における「アメ」のシステムを踏襲しているといえる。(あちらはあくまで「送る」だが)

 大量に捕獲し、大量に野に放つ。倫理的にはやはりどうなんだという気もしなくもないけれど、ただ増えて邪魔になったから逃がすだけにならない点はシステムとして素晴らしい。

シリーズファン向けの要素

 『アルセウス』の舞台であるヒスイ地方は『ダイヤモンド・パール』の舞台・シンオウ地方の過去の姿であり、地名などで随所にそのつながりが表現されている。ゲームの進行に伴い、「コトブキムラ」のBGMに、聴きなじみのあるフレーズが現れる演出は憎い。

 また登場人物のほとんどがシリーズの「誰か」を彷彿とさせる容姿や性格をしている。それどころか、以前に登場したキャラクターその人さえも出てくる。本編を熱心にプレイしている人だけが「おっ!」と思える要素であり、完全なファンサービスである。考察も絶えない。

 それを抜きにしても、『アルセウス』のキャラクターは魅力的だ。ストーリーに積極的に介入してくるのも嬉しい。私が心を奪われたのはギンガ団のシマボシ隊長。普段は任務に必要なことしかしゃべらず冷たい印象だが、ここぞという場面で熱いところを見せてくれる。基本的にはクールで格好良く、ギャップで可愛い一面もある。

 ちなみにシマボシは主人公の上司であり、未知の危険な生物の生態を調べる調査隊の長である。無愛想な振る舞いも含め、あの兵長を意識したキャラクターではないかと私は勘ぐっている。
 


 そんなわけで、『アルセウス』は、手を出さなかったら非常にもったいないソフトだった。

 本編シリーズ最新作となる『スカーレット・バイオレット』において、現在発表されている情報では、ヒスイ地方のポケモンも登場することがわかっている。ヒスイ地方のポケモンたちにも、新たに「とくせい」が設定されるはず。どんな特性がつくのか、本編仕様のバトルでどんな活躍をするのか今から楽しみでしかない。

 一方で『アルセウス』のフォーマットでの続編もぜひ遊んでみたい。世間的にも高評価だったようだから、きっとプロジェクトは動いているはず。動いててほしい。

 『スカーレット・バイオレット』の次は、順番的にも『ブラック・ホワイト』のリメイクが期待されている。これに関連して過去のイッシュ地方が舞台になるかもしれない。そういえば『アルセウス』にはイッシュのポケモンがやたらと多い。これも伏線なのかしら。

 イッシュ地方のモデルは、ニューヨークおよびアメリカだ。開拓時代、まだ荒野や森林が広がるイッシュ地方を駆け回り、未知のポケモンを捕まえる大冒険。わくわくするじゃないですか。

 タイトルはなんだろう。幻のポケモンがタイトルにつくなら『Pokémon LEGENDS ゲノセクト』とかだろうか。象徴的な要素から取るなら『Pokémon LEGENDS N』もあり得る。

 『Pokémon LEGENDS やまおとこ』の線もなくはない。