ファンビジネスの特異性

成田さんのこのツイートから色々考えたら思考が止まらなくなったのでメモ。

ファンとは何か?

私の採用している定義では

ファン=好きになってくれた人

だけど、ちょっとこれだと色々と片手落ち感があるなと。

ファンマーケティングとファンビジネス

私の中ではファンマーケティングとファンビジネスって違うものと捉えている。

ファンマーケティングとは
商品、サービス、あるいは売り手本人などのファンを中心にコミュニケーション設計や商品開発を行い、売上を拡大させるマーケティングの手法

ファンマーケティングはブランドロイヤリティを高めることで、LTV伸ばして行こうぜって話だと思っている。

簡単に言えば、めっちゃ好きな人がいっぱい増えたら、その人たち向けに商品ブラッシュアップして、適切にプロモーションをかけていけば商品は売れるし、長く使ってもらえるよねって話。

ファンビジネスとは
”好きな人にお金を払う体験”が商品。ファンはその人が好きだから、その人を応援するためにお金を払うビジネスの構造
この記事では便宜上、ファンビジネスを行う人を「タレント」と呼ぶ

アイドルやバンドなどのマスメディア、ユーチューバーなどのネットメディアなど、どこでファンにするかの媒体は様々。

ファンマーケティングとファンビジネスの一番の違いは、ファンを作ることが手段か目的かの違いだと考えている。

ファンマーケティングは、業績アップが目的で、ファンを作ることが手段。
ファンビジネスは、ファンを増やすことそのものが目的で、ファンにする(そしてビジネスとして成り立たせる)手段として金銭が発生している。

また、ホストやキャバクラなどの対面接客業でもファンビジネスは可能であることから、美容師などでもファンビジネスを行う人もいる。

ユーチューバーはファンビジネス。成田さんがやっているのはファンマーケティング。

ファンビジネスの特異性

マーケティングの仕事をしていると、ファンビジネスはめちゃくちゃ特異に写る。

一般的に、ファンマーケティングだろうとなんだろうと、マーケティングメッセージはYouメッセージを基本とする。

「あなたがこの商品を買うとこんなメリットがあります!」
「あなたにとってこの商品がベストな理由は〜〜です」
「あなたがこんなお悩みをお持ちなら、〇〇が強みの弊社にお任せください」

というようなものだ。

これはIメッセージに書き換えれば

「私たちの商品を買ってください」
「私たちの商品があなたにとってベストです」
「私たちの強みは〇〇です」

という、誰も聞きたくないようなセールストークになる。
これでは通用しない。

しかし、これが通用するのがファンビジネスだ。

ファンビジネスの基本構造は、挑戦するタレントと、応援するファンという構造になる。
そのため、発信するメッセージングはIメッセージが基本になる。

これは別に、お金に限った話ではない。

「武道館ライブ目指しています!」
「センターになりたい!」
「〇〇アワードを獲りたいから投票してください!」

ここでのファンのメリットはその人の応援をしている自分になれることだ。

なので、冒頭のツイート

「俺が今日最高記録を達成したいから、買ってくれ!」

このメッセージは、ファンビジネスの本質というか、挑戦するタレントと応援するファンという構造をふんだんに盛り込んでいるなと思った。

購入することで顧客たるファンが得られるメリットは、タレントの挑戦を応援して良きファンになれることである。

ファンビジネスそのものが悪いわけじゃない

ファンビジネスが悪いとも、詐欺とも思わない。

私も好きなネットラジオがあり、そのファンコミュニティに課金するのもファンビジネスの顧客になっている。

ただ、程度の問題もあるけどファンビジネスであることがぱっと見でわからないようなパッケージになっていると、個人的には悪質だなと思う。

例えば冒頭の、何か商品をお勧めするとした時のシチュエーションは商品そのものにお代を支払うので、その商品を買っている気分になる。

が、実際に顧客が欲しいのは、ファンである自分。

顧客が自分が何に金を払っているのかがわからないようなモデルは、私の感覚だと不誠実だなと感じる。