アニメ化と聞いて「あれっ」と思った

アニメ化すると聞いて「あれっ」と思った作品がある。

「D.Gray-man」と「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」だ。どちらも少年ジャンプ作品である。

まずは「D.Gray-man」。はじめてアニメ化したのは2006年、火曜日の18時だったかな。このころ、夕方アニメがまだ盛んだった。特に火曜日は「スクールランブル」「エレメンタルジェレイド 」「capeta」など、毎週楽しみに見ていたアニメが多く、思い入れも強い。

2008年に「D.Gray-man」のアニメは終了。作者の星野桂はこのころかなり体調を崩していため、連載も停滞していた。当然、単行本もほとんど出ないから、話題にすらあがらない。そのまま10年近くが経過した。

そして時は過ぎ2015年。なんの音沙汰もなかった「D.Gray-man」のアニメ化が突然発表される。

正直「えっ」と思った。しかも時間帯。昔夕方にやっていたアニメを、今度は深夜2時からやるという。声優のキャストも変わっていた。

もともと「D.Gray-man」はジャンプ作品にしては大人向けで、戦争ものだから血が流れる描写も多い。それをあえて夕方に放送し、小・中学生に見てもらってますます人気を博した。

10年前にアニメを見ていた人が大人になったからつぎは深夜で、ということもあるだろうし、それは構わないのだけれど、がっかりしたことがひとつ。10年越しに2期をやるくらいなら、1からアニメを作りなおしてほしかった。「Fate」みたいに「リメイク」という形をとるべきだと思うのだ。

マンガのアニメ化は、そのマンガのファン層をコアにして当然だし、普通は層であるべきだ。けれど単行本の売り上げが2,000万部クラスの「D.Gray-man」はそれに留まってはもったいないと思ってしまう。

単行本が100万部も売れていない、巻数もたまっていない、そんな作品とはわけが違うのだ。だから深夜にやるにしても、第1巻からアニメを作り直して欲しかった。

もうひとつ、「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」という作品のアニメ化。個人的には「D.Gray-man」や「家庭教師ヒットマンREBORN!」とともに、ジャンプの一時代を彩った作品だと思っているのだけれど、残念ながらコミックスはそんなに売れなかった。「魔人探偵脳噛ネウロ」と同時期にはじまった作品だったのかな、たしか。

ぼくはとても好きだったけれど、いまひとつ芽が出ないまま2008年に打切りで連載が終了。「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」という作品は、そこで終わるはずだった。

だが2018年、「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」のアニメ化が発表される。今年いち衝撃的な出来事だ。なんでいま、なんで「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」なんだ。

同時にジャンプ+にて、10年ぶりに続編の連載がはじまる。たしかに集英社は昔の作品を効率的に、コスパよく使って儲けたいって思想があって、「シャーマンキング」なんかもそのひとつ。打ち切られたのにウルトラジャンプがどこかで続編が連載された。

「シャーマンキング」はわかる。熱烈なファンがいて、アニメも1年ほどやった。ぼくが小学生のころ大人気だった。たしか連載再開を願う署名活動も行われてたと思う。

でも「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」にそこまで熱烈なファンがいたとは思えない。いったいなぜ。

ちょっと考えると、ひとつ思い当たる節がある。

電子書籍だ。「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」は、連載終了後の10年間、堅調に電子書籍の売り上げを伸ばし、一定の「ライン」に達したのではないか。もちろん集英社は終了した作品の売り上げを公開していないから確証はない。だがいくら考えても、それっぽい答えはこれしか見つからない。

連載が終了して10年もたつ作品、しかもそこまで人気がなかったものを、ずっと置いておけるほど書店に余裕はない。スペース的にも経費的にも。だから書店、紙という形で「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」を見かけることはもうない。

だがここ数年で何度か、ぼくは「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」を見た。読んだ記憶もある。

ジャンプ+、電子書籍でだ。思い返せば、集英社は年に1回か2回、「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」を50話まで無料公開、的なことをしていた気がする。

そしてぼくはそれを読んで続きを久しぶりに読みたくなり、コミックスをまとめ買いした。

「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」は、ぼくが小学生〜中学生くらいのころに連載していた作品だから、当時の読者は大人になっている。しかも楽しみに読んでいた世代は、いま独身で、金銭的にも余裕がある20代、30代が多いのではないか。

だから電子で売れた。年に数回も、ジャンプ+で50話も無料公開していたら、露出としては十分だろう。下手な雑誌なんかで連載するよりもずっと影響力があるはずだ。

そして電子版のデータをみて、集英社は実験へとふみだす。アニメ化、そして再連載だ。一度打ち切った作品をふたたび同じ雑誌でやるのはメンツが立たない。紙でやって採算があうかわからなかったというのもあるだろう。

だからジャンプ+で連載をはじめた。過去に不人気で打ち切られた作品が、電子書籍のおかげでふたたび日の目を見ることになる。

「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」はその第一例で、今後はもっとそういった作品が増えてくるかもしれない。

それはもはや過去作品のリメイクではない。「発掘」だ。

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