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[記事翻訳]朝鮮の「核武力法令」採択への総論的理解(1)

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朝鮮政府は去る9月8日、74年目の「朝鮮民主主義人民共和国創建日および政権樹立日」(以下、9.9節)を前日に控え、金正恩総秘書による施政演説と最高人民会議法令<朝鮮民主主義人民共和国の核武力政策について>(以下、核武力法令)を全会一致で採択し、朝鮮の核保有に関する法制化を完了した。
そこで、これらが持つ意味を以下のように計3回にわたって分析してみる。

1.朝鮮の核保有法制化と談論的認識変換点
2.朝鮮の核保有法制化が持つ政治的意味合いに対する理解
3.自主統一運動の“新しい”局面に対する理解

筆者は2020年9月、6.15米国委員会に招請された講演会で「9月平壌共同宣言2周年 民間統一運動の方向と課題」というテーマで講演し、その内容を統一ニュースで「朝鮮の核保有を前提とした統一運動転換の必要性」というタイトルで記事化した。後に『統一で平和を歌う』という著書の中で、核保有を前提とした自主統一運動を次のように強調した。

「(中略)朝鮮の核保有が韓半島での軍事的緊張と戦争の要因ではなく、むしろ朝鮮が核を持っていたために強力な核抑止力で韓半島での戦争を防止し、最後には平和と繁栄、統一を実現する自主・民族・統一の核(筆者強調)になるという認識が非常に重要になった。根拠も明確である。朝鮮政府が常々言うように、朝鮮の核は同族である南を攻撃するための武器ではなく、米国の対朝鮮敵視政策の産物であり米国との対決を終結させるための戦略武器であるという点だ。またシンガポール朝米首脳会談のように朝米首脳会談を導き出すことができる強力な手段でもある。まさにこれらの事実から、朝鮮の核は韓国における反米自主運動を繰り広げるにあたって何の障害でもない。自信を持って朝鮮の核保有に基づいた反米自主運動を力強く繰り広げていこう。(『統一で平和を歌う』281ページ参照)

このように国内の学者として、また統一運動家として、あるいは著述家としても恐らく筆者が初めて「朝鮮の核保有を前提とした自主統一運動論」を唱えたと思われる。

それから約2年の時間が流れた今日、朝鮮は核武力法令を採択した。その結果、朝鮮の核保有は不可逆的になり(朝米間の政治交渉物ではないという意味)、また私たち民族にとっても朝鮮の核を前提とした自主統一運動と平和運動を展開するしかない新局面に至った。

2年前の筆者の一主張が、今や核保有を前提とした自主統一運動論が確立されなければならない理由として、より鮮明になったと言える。

1. 朝鮮の核保有法制化と談論的認識変換点

9.9節を一日控えた9月8日、全世界の人々の予測を朝鮮は軽々と飛び越えた。核ミサイルを用いた行進やICBM発射や核実験などの予想を裏切っただけでなく、制裁局面下でも米国に勝てるという自信を確たるものとして示した。

そういった意味で今回の金正恩総秘書の施政演説と核武力法令の採択は非常に意味が大きい。労働新聞が翌9日に報道した内容では施政演説と核武力法令について次のように述べられている。

「人民大衆の自主性を実現するための社会主義建設のたゆまぬ発展と前進を確実に導く戦いの旗であり、遠大な理想と目標に向かって進む我が国と人民が取り組まなければならない百科全書的な革命文献、不滅の大綱になる」

その意味で今回の施政演説と核武力法令採択の意味を総論的に解釈・理解すれば次のようになる。

(1)第一に、非核化談論に誘惑されてはならない。言い換えれば「韓半島平和体制樹立において、非核化談論はもはや席を失った」ということだ。
思い起こされるのは2019年に第2次朝米首脳会談が決裂した後、
「米国は千載一遇の機会を逃した。今後このような機会は再び来ないだろう」
とした朝鮮の声明と正確に一致する。

その声明は3年後に
「私たちの核を巡ってこれ以上交渉できないように不退の線を引いたことに核武力法令法制化の重大な意義がある」(施政演説から抜粋)
となった。
これは今後朝鮮は米国相手にいかなる形態での核交渉も絶対に応じないという宣言も同じで、百歩譲歩して交渉があるなら「核のない世界」及び「すべての帝国主義と大国主義が消える」そういった世界の非核化を前提とする核軍縮交渉の場合のみであることを予言する。

(2)第二に、朝鮮の核教義政策の明確な理解が必要である。(※核教義…核兵器を生産・配備し、使用する目的を明らかにする原則)
朝鮮の核保有は労働新聞9日付の解説で
「核武力政策に関する法令の採択は責任ある核保有国、尊厳高い自主強国としての我が国の地位を不可逆的なものにし、革命の根本利益と人民の安全を徹底的に守護しようとする共和国政府の自主的な決断と堅実な国権守護、国益を死守する意志の明確な誇示となり、朝鮮半島と地域、世界の平和繁栄に資する信頼できる法的武器を備えた重大な政治的事変になる」
と述べられいる。

法令では
「朝鮮民主主義人民共和国の核武力は、国家の主権と領土完整、根本利益(筆者強調)を守護し、韓半島と東北アジア地域で戦争を防止し世界の戦略的安定を保障する威力ある手段である」(核武力法令から抜粋)
と記されている。

少なくとも二つの目的が達成されなければ核教義政策が変換されないことを示唆する。一つは韓半島統一であり、もう一つは全世界から帝国主義が除去される時である。
これを前後関係で見ると、朝鮮の核武力が韓半島統一を成し遂げる強力な手段であり、その結果によって「世界の戦略的安定」が推し進められる。核の使命は韓半島統一を促すことであり、それによって世界の戦略的安定が完成する。

(3)第三に、朝米間あるいは私たち民族と朝米対立について「変化した」構図への理解が絶対的に必要である。
つまり9月8日の施政演説と核武力法令の採択は、今後朝米関係は米国が白旗降伏をしない限り、政治交渉あるいは平和交渉による問題解決は根元から無くなったことを意味する。

もう少し解釈すれば、まず多くの専門家が依然として期待しているシンガポール朝米合意は完全破綻したということは疑う余地がない定説だ。つまり米国が朝鮮の核保有を認めた上で朝米関係正常化へと進められなければ、今後平和的な核交渉は絶対に無いということが今回の法制化を通じて明確になった。

第二に、今後の朝米関係は軍事的対立や政治的対立を越えた体制対立、すなわち「朝鮮の社会主義体制」対「米国の帝国主義がぶつかる全面戦」という意味である。
金正恩総秘書は今回の施政演説で
「社会主義と帝国主義との対立と闘争は避けられないもの」
と述べたが、これは社会主義“朝鮮”と帝国主義“米国”との全面対決が避けられないという意味で、朝鮮の反米戦争あるいは反米抗戦だと言える。
つまり朝鮮はこの対決で勝利し、現存する帝国主義あるいは大国主義のあらゆる覇権を終わらせ、人類は「新しい」社会主義の姿を見ることになるという確信を表現したものと言える。

第三に、祖国統一三大憲章-祖国統一三大原則、高麗民主連邦共和国創立方案、全民族大団結十大綱領による祖国統一を最後まで放棄しないが、韓国政権が米国の対朝鮮敵対政策に付和雷同して韓米同盟を維持し、吸収統合と対朝鮮先制攻撃の野望を止めない限り、軍事的統一による道も開かれたという非常に重大な意味がある。

次の法令がその証明である。
法令第1章<核武力の使命>第2条
「朝鮮民主主義人民共和国の核武力は戦争抑制が失敗した場合、敵対勢力の侵略と攻撃を撃退し戦争の決定的勝利を達成するための作戦的使命を遂行する」 

また、第6章<核兵器の使用条件>第1条から5条までの内容である。
1)朝鮮民主主義人民共和国に対する核兵器または他の大量殺害兵器攻撃が敢行されたか、差し迫ったと判断される場合、
2)国家指導部と国家核武力指揮機構に対する敵対勢力の核および非核攻撃が敢行されたか、差し迫ったと判断される場合
3)国家の重要戦略的対象に対する致命的な軍事的攻撃が敢行されたか、差し迫ったと判断された場合
4)有事に戦争の拡大と長期化を防ぎ、戦争の主導権を掌握するため作戦上不可避の提起がされた場合
5)その他国家の存立と人民の生命安全に破局的な危機を招く事態が発生し、核兵器で対応するしかない不可避の状況が造成される場合
によって証明される。(続く)

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