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東洋経済のアニメーションビジネスに関する記事を読んで

今週東洋経済がアニメーションビジネスに関する特集を組んだことで界隈で話題にのぼっていました。

経済誌の記事ということで若干斜に構えていたのですが実際に読んでみると、思っていたよりも踏み込んだ内容もあって印象は変わりました。
A.Iほど達者ではないですが自分なりに要約すると、活況なアニメーションビジネスの現状からその経済的なポテンシャルについて希望的観測を示しつつも現実的には出資側と制作側の不均衡が大きい業界の問題を指摘しており、さらなる発展のためにはこの点を解決する必要がある、というような感じでしょうか。
その他コラムや記事で声優業界の問題や日本における配信事業のアニメーションの扱いについて、また現在改革に取り組み始めた制作会社のインタビューなどを扱っています。最後は経済誌らしく投資向けのアニメーションビジネス関連銘柄の紹介などもあります。
個人的には現場の自分が関わることの無い製作現場やその上のビジネスがどの様に展開されているかや製作委員会内部の事情など数字を含めて興味深く読むことができました。

いつものことですが、記事が出てすぐにTwitter上でもいろいろと意見が交わされており、自分のTLの範囲では概ね妥当という評価が多かったように思います。
ただいくつか疑問が呈されていましたが、特に言及が多かったのは配信会社による制作会社のランク表と編集部の取材によるTVアニメ1話あたりの制作費の予算モデルの表です。
ランキングについては”外資系配信会社”目線で投資効率から見たランキングであって会社の実情や現場の状況は反映していないのでランクの意味を取り違えると話がややこしくなってしまいます。あくまでビジネス対象としてのランキングとして見る必要がありますね。
予算表に関しては意見が割れていて、妥当というものもあれば明らかにおかしいというような話までそれぞれの部門を担当する方々からの声が上がっていました。
このあたりは現場の人間には自分に配分される予算以外あまり知りようがありませんからそれぞれ語る人によって見え方が違い、どうしてもポジショントークになってしまうので仕方ありません。
総額としては自分も耳にするような金額ではあるのですが、細目に目を通してみると確かによくいわれている予算からはかなり外れた金額もあります。表自体は1話あたりの予算として書かれていますが、多人数で対応する項目の予算がまとめられていたりもしますし、項目ごとの細目も書かれていないのでそのあたり勘案しながら見る必要がありそうです。自分の担当である撮影に関しても総予算に対してこの金額だと少ないかなあと思いますし、撮影に関するその他の費用もこの表にはありませんのでどこに含まれているかは不明です。
そもそも予算は作品でかなり違って来るはずなのでこれに近い金額の作品がなかったとも言い切れないですし、この表自体が編集部が元請け会社への取材を元に作成しているので見方を誤っている項目があるかもしれません。そこは割り引いて見る必要がありますね。
ただ今回取材を元にこのような資料が出た、ということは受け止めておこうと思います。

はじめにも書きましたが経済誌だけに成長産業としての側面と投資的部分についてばかりかと思っていたら、制作現場の問題にも紙面を割いて言及しているのは意外でした。
制作会社として収益の安定化やクリエーターの地位向上に力を入れじ始めたトムスの記事を掲載しながら、他のページで毎年人気の劇場版コナンの現場が大変で作画単価も高くないと語る現場のアニメーターの声を載せているあたりも好感持てますね。
今この問題に踏み込んでいける媒体はどれだけあるのかと思うとそれだけでも評価できると思いました。ちゃんと署名記事ですし。

アニメーションビジネスに関しては世間に出回る情報は長年の商習慣から内情があまり表にでない事もあって色々と誤情報もありますし、ここ数年の配信事業中心への変化で従来と大きく変わった部分など情報アップデートの入門としてもちょうどよいと感じました。

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