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TVアニメ『SHINE POST』放送1周年

自分が久しぶりにどっぷりハマったTVアニメ『SHINE POST』が始まったのは昨年の今日、2022年の7月12日。夏クールの新作として見始めた一本でしたが見事にハマって中盤以降は毎回リアタイしながらTwitter実況していました。コロナの影響による度重なる放送の延期や放送時刻の深さ、また昨今多いアイドルアニメということで食傷気味の空気もあってか今ひとつ盛り上がりに欠けた面も否めませんが、個人的には昨年ベストと言っていい作品になりました。その後も関連のイベントやライブなども追っかけていて、最終的にはこの作品きっかけで新しい仕事につながるという思いもよらぬ余波もありましたが、そのあたりの事情はまた後日。

推しのコンテンツはなるべく長く楽しみたというのがファン心理。今回は自分がハマったきっかけなど記録に残しつつ作品紹介を少し書いておこうと思います。

SHINE POST』はゲーム会社のコナミと企画会社ストレートエッジによるメディアミックスプロジェクトで、現在は小説、漫画、アニメ、ライブ、ゲームと展開しています。ちなみに企画の石原明広氏はあの名作ゲーム『ラブプラス』のディレクターだった人物です。

アニメーション制作はスタジオ櫂。『スーパーカブ』『風都探偵』『ウマ娘プリティダービー2』などの作品を制作しており、クオリティに定評のある制作会社です。監督は及川啓氏。『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』シリーズ、『ヒナまつり』『ウマ娘プリティダービー2』など人気作品を手掛けているベテランです。

アニメ化に先立って駱駝氏執筆による全3巻の小説が先行して刊行されており、アニメの内容もこの小説の内容を基本に構成されています。

基本的ストーリーラインは青天国春玉城杏夏聖舞理王(後半に伊藤紅葉祇園寺雪音の二人が加入)の3人組の駆け出しのアイドルグループ「TINGS」が、メンバーそれぞれが抱える葛藤を乗り越え成長していく王道のアイドル物ですが、面白いのは王道でありながらアイドル物のセオリーを外しているところです。
登場人物もグループアイドル物としては少ないので、一人々々のエピソードもより深掘りされていて、毎回描かれる各キャラクターのエピソードが引き立っています。石原氏のインタビューでもキャラクターのドラマを描くことに注力した作品だったことが伺えます。

表現や物語は現実寄りな方向性で、もう一人の主人公でもあるマネージャー日生直輝の行動や、従来は描かれることの少なかった地味なアイドル活動の部分も描かれています。

そしてここがキモなのですが、この物語は「」が大きなテーマになっています。アイドルという輝きはその光の強さ故、強い影をも作り出しますが、その象徴としてのタイトルの「SHINE(輝)」に対して「」としての「」が描かれます。
アイドルアニメといえば元気いっぱいに活躍するキャラクター自体が大きな魅力ですが、この作品の主要キャラクターは全員大きな葛藤を「」という形で抱えており、それを解消していくことでグループとしての成功に導くプロセスを中心に物語が進行して行きます。そしてこの「」は見ている視聴者に対しても巧みに仕掛けられていて、物語の大きな転換に繋がります。これ以外にも作品全体に視聴者に対してのミスリードや意図的な情報隠匿が多く存在します。

演出的にも言葉よりも絵で見せるシーンが多く、また嘘やほのめかしもあり、その分今どきの作品としてはわかり難いとも言えますが、そのわかり難さもこの作品の特徴であり魅力と言えるかもしれません。要所で表情やリアクション、声の演技などが丁寧に演出されているので、一周して最初から見返すと初見ではわからないその時のキャラクターの感情や仕掛けが理解でき、そういうことだったのか!と納得できて、より深く作品を楽しめることに繋がっています。直接的な情報は隠されていますが作品中だけでなくホームページやエンドクレジットに至る各所にそのヒントとなるものは仕込まれているので、そういった情報を探しながら考察していくのもこの作品の楽しみの一つでした。

アイドルアニメの見せ場になるライブシーンは楽曲も素晴らしく、魅力的で完成度が高いです。3DCGをベースに作画で描かれたライブシーンは作画的ケレン味が存分に生かされた躍動感ある表現になっています。CGと作画の使い分けや1カット内での切り替えも巧みに処理されていてCGと作画がシームレスに繋がっています。
場所の意識も明確で、会場の違いによるカメラワークで地下のライブハウスから武道館までそれぞれのシチュエーションに合わせた実感のあるシーンを表現しています。
特に1話冒頭のライブシーンはこの作品の方向性を表すに十分な内容で、作品にかける本気度が伝わってきます。歌詞もよく見るとこの作品を象徴するような内容が含まれています。

ライブシーン以外でも1話での「TiNgS」のレッスンシーンは3人のメンバーそれぞれに能力に差があり、それをしっかりと表現しているところも画期的です。ダンスは正確だが教科書どおりの杏夏、明らかに苦手で苦戦する理王、二人を気遣いバランスを取っている春、とそれぞれの力量差とフィジカルの差が短いシーンの中できちんと描かれています。これはこの後のストーリーでも非常に重要な要素になって来ます。それを踏まえた2話での3人揃ってのライブでのダンスシーンでは初めて実力の片鱗を見せる春のダンスのキレを表現しつつ、振りを揃える部分では、正確に踊る杏夏を基準に理王のテンポの遅れと差がつかない様に少しタイミングをずらして3人の動きが連続しているカノンの様に見せる春の高い調整技術も表現しています。尺も短いのでこれは初見ではなかなか分かりづらいのですが何度か再見していて驚いたポイントです。自分自身、この2話を見て本作品のポテンシャルを確信しました。

とりあえず導入部分に限って紹介してみましたが、自分自身、1話2話を見て今までにないものを感じ、そのままハマっていくわけです。
現在もprimevideoで無料で見られますし、各種配信サイトにもあると思いますので鑑賞は可能ですので興味を持たれたらぜひ一度見てもらいたいなと思います。

物語は原作準拠でいったん終了していますが、この後スマートフォン向けのゲームがリリース予定です。アニメにも登場する複数のグループを含めた育成系の内容という事が公表されていますがシナリオはグランドホテル形式で原作やアニメのストーリーとその裏でなにが起こっていたかなどもキャラクターごとに描かれるようです。かなりのボリュームがあるようなのでこちらも期待して始まったら遊んでみようと思います。


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