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2023春アニメ 所感

2023年の春クールスタートのTVアニメーションも今週ですべて出揃ったので少し所感などメモしておこうと思います。
前提として今回も4月にスタートした作品の1話に関してはほぼ全て鑑賞しました。録画の場合はもちろんノーマルスピードで見ています。タイパ?なにそれ。
現在は視聴数を絞って再放送を含め43作品ほどを視聴中です。

すでに話題になっている作品もいくつかありますが、中でも『【推しの子】』は初回90分枠での放送と劇場作品並の尺を当てたことでも驚きました。

初回や最終回を1時間枠にする作品はたまにありますが、普通は2話分をまとめて流すという形になります。しかし今回の『【推しの子】』は84分と30分枠のTVアニメの制作尺としては4本分に相当する時間の1話になっていました。実際に放送を見て内容的に90分にした意味がよくわかりましたが。
本作は放送に先駆けて劇場公開もされていました。プロモーションイベントでの先行上映会などは他の作品でもよく行われていますが、完全新作のTVアニメーションが放送に先駆けて全国の劇場で一般公開というのは珍しいと思います。一般の映画興行ではない形態でしょうが、話題作りや収益確保の手段として結果がどうだったのかは気になります。
直近では『鬼滅の刃』もTV放送した前シリーズと新シリーズをまとめて劇場公開していましたが40億を超える興収を上げています。

もう一つ面白いことになっていると思ったのは『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』です。こちらも1話放送時点で評判が良かった作品です。

この作品はバンダイナムコエンターテインメント原作の作品ですがアニメーション制作はCygamesPicturesが担当しています。バンダイナムコが持つ作品をグループのバンダイナムコフィルムワークスバンダイナムコピクチャーズでなく競合他社が作る状況には興味はありますね。

CygamesPicturesはCygames傘下のアニメーション制作スタジオでCygamesのソーシャルゲーム原作の『プリンセスコネクト』や現在も「ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP」などを制作しています。傘下の会社とはいえゲーム業界で競合する他社の作品を制作するというのは他の業種ではなかなか見られない状況だと思いますが、アニメ業界では一部の会社を除く多くの制作会社が自社制作の作品でも他社の制作協力を得たりアライアンスを組んで制作していることが普通ですし、その意味では不思議ではないのですが、これはちょっと驚きました。両社とも意外と懐が深いんですね。NDAとかどうなってるんでしょうか。

アイドルマスターシリーズといえば来年『アイドルマスター シャイニーカラーズ』が制作されることが既に発表されていますが、こちらは大手3DCGアニメーションスタジオのポリゴン・ピクチュアズが制作します。ハードな設定のSF作品が多かった同社制作のアイドルアニメがどんなものになるか注目しています。
また、こちらの作品も放送に先立って劇場での先行上映が発表されています。

話を戻します。
1月スタートの作品が制作スケジュール面で大変だったことは前の記事でも書きましたが、実のところ今季もまだその影響があるかと思っていました。しかし今の所、思ったほどの影響は出ていないように見えます。もちろん現場は相変わらずのスケジュール感でギリギリの制作環境なのはSNSを通して聞こえてくるので、状況が大きく変わったということはなさそうですが、それでも今季は質の高い作品が多いように思います。どの作品も1話は特に力が入るのは当然ですがその後も質が維持されている作品が多い印象です。作品ごとに制作や予算の状況は大きく違っていますので各々の状況までは知る由もありませんが、昨年大きな劇場作品が終わったことによる影響もあったりするのでしょうか。
ネットでの声を拾ってみると、ここのところ毎クールごとに「最高の出来」「大豊作」などとボジョレー・ヌーボーの売り文句のような言葉が散見されるのですが、話半分としても徐々にTV作品全体の質が底上げされているのは事実でしょう。これは配信が始まったことでクオリティの向上を求められることが増えたり、一部のTV作品でのオーバークオリティーともいえる質向上のインフレーションも大きく影響しているのではと考えています。
質が上がるのは悪いことではないですが、その向上をどう実現したかまでを考えると単純に喜べない複雑な心境にはなりますね。

また今季は本編以外でもオープニングとエンディングが秀逸な作品も多いと思います。作品の顔ともいえるオープニングは当然ですが、手の込んだ作りのエンディングもあって楽しめます。オープニングに比較してエンディングは比較的自由な表現のものが多く、特に担当する人の作家性が色濃く反映するものもあるのでバラエティに富んだエンディングが見られるのは楽しいです。

とにかく今季は面白い作品が多い印象なので最後までこの感じで推移するのか、それとも中だるみしてしまうのか注視したいと思います。それによって最近少し聞かれるようになった業界の環境変化の話も絡めて考えられることもありそうに思います。

最後に。
個人的には『ワールドダイスター』の久しぶりにやられた感のある1話が印象的だったので、今後を楽しみに見ています。違和感はあったのに途中で気づかず、見直したら周到に演出されていてこの仕掛を見抜けなかった自分の目の節穴ぶりが悔しかったので…

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