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英語の基本数式

日本を代表する英語系Youtubeチャンネルといえば「Kevin's English Room」。そのInstagramアカウントの、2023年1月23日投稿の動画テーマが、「日本語は助詞を言わない」だった。

具体的には「スーパーへ行く」「スーパーに行く」の、「へ」と「に」の問題が日本語にはあるけれど、実際には「スーパー行くね」のように、日本語は助詞を省略する方がむしろ普通だ、という話。

僕が人に英文法を教える時、ほぼ必ず紹介する観点なのでつい興奮し、コメントを書いてしまった。

日本語ってこうなんですよね。「母ちゃん、僕美容院次月曜?」とか。

…助詞等を省略しないで書くと「母ちゃん、僕の次の美容院予約は月曜日だっけ?」だけれど、口語では「僕美容院次月曜?」でも全然通じてしまうわけだ。

ちなみに「美容院次月曜僕?」でも同じ意味として通じるだろう。

これで通じるのが日本語のいいとこよね笑

と、他の方からのコメントをもらった。ですよね。

ただ、英語学習という観点では、この日本語の特性が大きなネックになる。

I read your email.

これを全部訳すと「私はあなたのEメールを読みました」となる。

でも日本語では「メール読みました」が自然だ。

「私は」「あなたの」「E」「を」

…日本語ではこれらを全て排除する方がむしろ普通。たった4語のきわめてシンプルな英文を和訳するだけでも、日本語と英語ではここまで大きな差が生まれる。

この例文ベースで、英語学習で問題を引き起こす要素は2つ。

1.主語を省略する→「主語」の理解が曖昧になる

2.「を」を省略する→「目的語」の理解が曖昧になる

ちなみにKevin's Roomで挙げられた例における問題はこれ。

3.「へ」「に」を省略→「副詞」の理解が曖昧になる

まとめると、「主語」「目的語」「副詞」を作る「は/が」「を」「へ」「に」などの助詞を重要視しないという日本語の傾向が、文法の意識を鈍らせていて、英文理解においてはネックになってしまうということ。

英語は日本語に比べて語順の自由度が低い。「は」「が」「を」に相当する「単語」よりむしろ、「語順」によって、文の意味を作る傾向があるからだ。

My life didn't please my wife.

この英文は「SVO」語順なので、

"My life"「は」"my wife"「を」"please"させなかった

と訳すことが最初から決まっている。一方日本語は「は」や「を」を省略しがちだったり、場所も固定的ではなかったりする。結果、「My lifeは」と訳すべきところから早速、「My lifeを」や「My lifeで」のような訳し方をしてしまうのが、英語学習者あるある現象。

なぜそうしてしまうのか。

「なんとなく雰囲気で」なのである(ちなみにこの英文の直訳は「私の人生は私の妻を喜ばせなかった」)。

英語は、日本語に比べて相当にシステマチックで、ほとんど数式のような言語。「足し算と引き算は、掛け算と割り算を先にしなくてはならない」というくらいの、白黒はっきりした、デジタルのような言語。

「なんとなく雰囲気で」のゴリ押しだけで英語力が伸び続けた人はほとんど見たことがない。スポーツ競技では、どんなに体力自慢でも、ルールを覚えることから逃げ続ければ、すぐ退場処分で万事休す、というのと同じだ。

ということで、英語学習に必要なのは、英語における数式のような基本フォーマットを覚え、それに則って英語を読み、聴き、書き、話すこと。

  1. S+V

  2. S+V+C

  3. S+V+O

  4. S+V+O+O

  5. S+V+O+C

Sは主語。「は」か「が」で訳す。
Cは補語。第2文型ではS=C、第5文型ではO=Cで理解する。
Oは目的語。「を」か「に」で訳す。

この5文型が英語の基本数式。そしてできればもう1段階の数式を加えて覚えるのが望ましい。

5文型+where/when/why/how

5文型要素の後に、「どこ」「いつ」「なぜ」「どうやって」の要素を添える。これが英語の基本数式、基本フォーマット。

例文を見てみよう。

I can show you the world.

"A whole new world"冒頭の歌詞。SVOOの第4文型。直訳は「僕は君に世界を見せることができる」。

A secret makes a woman woman.

漫画「名探偵コナン」の中のセリフ。SVOCの第5文型。直訳は「一つの秘密が一人の女性を女性にする」。文型を知らなければ、"woman woman"を見て、誤植と思ってしまう可能性さえありそうだ。

Don't wait until their funeral to visit them.

Don't wait=V
until their funeral=when
to visit them=why

直訳は「待つな/彼らの葬式まで/彼らを訪れるために」。意訳は「その人の葬式まで会いに行くのを待つな」。もっと分かりやすく言うと「いつまでも会わないままでいたら次に会うのはその人の葬式になるぞ」。

5文型+where/when/why/how

この数式に慣れてしまえば、正確に読めるだけでなく、上記のように適切な場所で区切って意味を取ることができるので、後ろから前に戻すような読み方をしなくて済む。読解の速度と正確性は爆発的にアップする。リスニングやライティング、スピーキングに効果があるのは言うまでもない。TOEICや英検への効果も絶大だ。

最後に、少しだけ長めの例文でもう1つだけ。

Schroeder always ignores Lucy by playing Beethoven on his toy piano.

SchroederとLucyは、スヌーピーが主人公の漫画「PEANUTS」のキャラクター。

Schroeder=S
ignores=V
Lucy=O
by playing Beethoven=how
on his toy piano=where

シュローダーは/無視する/ルーシーを/ベートーベンを弾くことで/自分の玩具のピアノで

「5文型+where/when/why/how」の基本数式は、数学の公式のようなもの。公式を覚えなれば、計算に時間がかかり過ぎてしまうか、最悪、答えにたどりつけずに終わる。

眼鏡のようなものだと言ってもいい。この眼鏡を手にしない限りは、視界はいつまでたってもぼんやりとしたままなのだ。

この数式を学ぶことは、品詞を学ぶこととイコールでもある。すると例えば「派生語」を理解できるようになる。"different"を覚えているなら、differently, difference, differという語を新たに別個に暗記する必要がほぼなくなるので、語彙暗記にかける時間を大幅に削減できる。 

「主語」と「目的語」を正確に理解できるようになるので、関係代名詞で学ぶ「主格」と「目的格」も即座に理解できるし、「関係副詞はwhere, when, why, howだ」と聞いて、すぐに腑に落とすことができる。

読解中に語彙の意味が分からなくても、その語の場所から大体の意味推測をすることもできるし、「どう思う?」が、"How do you think?"ではなく"What do you think?"でないといけない理由もすぐに理解できる。

「5文型+where/when/why/how」の学習を軸に据えることのメリットは枚挙にいとまがない。英語を見る時も、日本語を見る時も、もっと細かく言えば、俳句などを鑑賞する時も、これまではDVD画質だった景色が、超高解像度である8K画質のそれに見えるようになる。5文型ベースのギャグもあったりする。

…と、熱弁を奮ってしまったけれど、この内容、息子たちに将来国語や英語を教える時に、この話をして、その必要性を分かってくれるかな。…不安しかないな。反発される気しかしない。

今の彼らは可愛すぎる。先の不安は置いておいて、今は今を楽しもう。いつまでも可愛く(広い意味で)い続けてくれることを図々しく祈りながら。自分の言語スキルを更にきっちり、貪欲に高めながら。

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