おじいちゃん


「兄妹3人で、おじいちゃん殺人計画」


私は決行日当日に知らされた

姉は6個上、兄は4個上


最初は、なんで?って思った

お姉ちゃんがやけに気合が入ってて
お兄ちゃんはなんとかそれを叶えてあげたい、と言う感じだった

でも小さい時からそう。
私は文句を言わず、姉と兄の言うことを聞くばかり

畳の部屋
おじいちゃんはいつもそこにいた

気づいたらもう計画が決行されていて

気づいたらおじいちゃんは血だらけになって倒れてた。

赤くなった畳
和室にピッタリなオレンジ色のライトが
今だけはすごく嫌に思った

「はい、あんたもやって」

姉が包丁を手渡してきた

姉に逆らうのが怖かった
もう、私の知ってるお姉ちゃんじゃなかった
包丁を手に取って、もう息すらしてないおじいちゃんに馬乗りになる

さっき出来たであろう深い傷跡に沿って
包丁をすすめていく

音も、感触も、聞こえないのに聞こえて来るおじいちゃんの声も、ぜんぶぜんぶ気持ち悪くて

すごく長い時間に感じた

私何してるんだろう

こうやって綿毛みたいに、
風に、誰かの感情に、ずっと揺られていくんだろうな
そんな自分が嫌になる

私たちは着替えて家を出た

そこからはよく覚えてなくて、
たぶん姉と兄ははそれぞれの家に帰って行った

私も、一人暮らしの家に帰る



ベットに横になってみる、というかそれしか出来なかった

人を殺した。

おじいちゃんはすぐに見つかると思う
そして警察がやってくる
私は、捕まっちゃうのかな

なんだか怖くなって、家にいても誰かに見られているみたいで落ち着かなかった

携帯が鳴った

その音にも体がびくっとした

電話は叔父さんからだった
案の定おじいちゃんの件

「おじいちゃんのこと聞いたかな?
まだ元気だったのに残念だよね…
体調とかは大丈夫?」

空返事をひたすらに返す

「でもさ、刺されてたって。あみちゃんは何か知ってる?」


ぜんぶしってる、ああ、もうむり、全部言いたい、つらい、こわい、なんで、

「あの…私…刺したんです」

叔父は全部わかってたような口ぶりで
「そうだよね…わかってたよ。つらかったよね」
そんなふうに言った

なんでそんなこと知っているのかもわからなかった

私は泣きじゃくっていた
あの時本当は、そんなことしたくなかった
おじいちゃんのことが好きだった、
なんでそんなことをしてしまったのか、自分でもわからなかった
全部打ち明けようとしたとき





お姉ちゃんがきた



「妹に無駄なことを吹き込むのはやめてもらえますか?」


電話はそこで切られた

お姉ちゃんが私の肩を掴んで言う

「あんまり余計なこと言わないでくれる?」

久々にお姉ちゃんの顔を真正面から見た

あれ?

お姉ちゃんって、こんな顔だったっけ

この人、だれ?

お姉ちゃんじゃない
だれなんだろう

そもそも叔父も全然知らない他人で

おじいちゃんの顔も、本物のおじいちゃんじゃなくて

私は、知らない誰かと一緒に

知らない誰かを殺していた

私自身も

私が誰なのかわからなかった

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