【女湯事件ボ13】東京に男がいるんだ。
私、東京に男がいるんだ。
居酒屋とか喫茶店とかでもなく、
ゴザの敷かれた脱衣場で
話は始まった。
とある中部エリアの銭湯でのこと。
(どこのお風呂屋さんか明かしたところで支障ない気もするが、なんとなく言いたく無い。。そっとしたい、に近い)
あの場の雰囲気を忘れない。
脱衣場で一瞬の緊張感に近いものが走った。
周りは初耳である、と雰囲気からわかった。
告白をしたご婦人を囲む様に
常連さんたち3人ほど、脱衣場にたちすくんだ。
実はさ、この時計もその人からなの。
確か金色の時計で、なぜか生々しく覚えている。
そうだったの!?
と切り出したような声が聞こえた。
ご婦人らは服を着たまま、
動く気配はなかった。
簡単に立ち入れる雰囲気じゃないから、
私は慌てて服を着た事は覚えてる。
もし時代が昭和初期ならば、
言伝しますか?私は東京から来まして、
と聞いたかもしれない。
しかし電話やら何やらある時代に
そんな差し出がましい話はない。
ご婦人は何故、銭湯で話したのだろう。
銭湯友達に、話したかったのか。
何気なく、話したかったのか。
ふと、彼を思い出したのか。
果てしない妄想が止まらない。
そして、その浴室がどんな感じだったか、
正直 記憶は朧げで、
ただただ熱湯だったと記憶している。
銭湯の記憶とは、
時にそのような形で残されてゆく。
やすこ。
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