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戦場体験放映保存の会の「戦場体験百人展in長野」に参加し決意固まるー独自展示会前史・その2

 公益社団法人マスコミ世論の会、戦場体験放映保存の会(いずれも東京)による「戦場体験百人展in長野」が2014年の11月21-24日まで、長野市のトイーゴ「長野市生涯学習センター」を会場に開かれました(表題写真)。

 主催団体はその名の通り、戦場体験者の証言を集めて後世に残すとともに、それらをパネルや映像、あるいは体験者本人の講演で伝える活動を各地で展開していました。長野市での「百人展」も、文字通り、これまで集められた大量の証言からえりすぐった証言100人分を、当時の写真や体験者の会が作ったパネルなども展示し、証言集会で伝えるとの企画でした。

ご当地に合わせて長野の人の証言も多数展示

 この団体の活動の根幹に「無色」という言葉がありました。それぞれの個人の主義主張や立場を尊重しつつ、戦場の実体験を後世に伝えるという一点において協力し力を合わせるという考えです。体験証言集会で、中田事務局長は「個人の体験が、政治史や外交史では出てこない戦争の姿を浮かび上がらせる」と意義を強調しておられました。

 信州戦争資料センターも戦争と庶民のかかわり、というか、戦争の時代に庶民が体験していた環境を後世に伝えるため、2007年からモノを集めることに取り組んでこの時、7年になっていました。長野で百人展が開かれることを知り、長野を中心に集めた「モノ」で何か協力できないかと申し入れたところ、快くご理解をいただき、会場にセンター提供の戦時下実物資料約20点が並べられました。事前に中田事務局長が、アクリルケースを用意してくださったことに、今でも感謝しております。

信州戦争資料センター収蔵品の展示の一部

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 この百人展では6人の方の体験証言集会もあり、わたしはシベリアに抑留された中島裕さん(静岡県出身・東京)の体験を聞かせていただきました。中島さんは終戦の時に18歳。満州でソ連軍の捕虜となり、タイシュットという、シベリアで最も寒い地域に抑留。1948(昭和23)年6月に帰国することができました。当時の様子を描いた絵を映写しつつ、証言してくださいました。(2023年、亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします)

自分で描かれた当時の様子を写しながら話す中島さん

 一時間があっという間に感じる中身の濃いお話。「私がいた地域は零下60度にもなるところ。零下40度までは屋外で作業をさせられました」「40度となると、鉄を素手でさわろうものなら張り付いてはがれない。レール運びでうっかり張り付き、手をはいだら皮がむけるという感じでした」「肉や野菜を切るのに包丁は通用しません。のこぎりを使います」-。そんな厳しい環境の中、森林を伐採して鉄道を敷設する作業をされます。ノルマを達成するため、ちょうど手ごろな太さの木を選ぶのがこつだ、といった知恵も披露していただきました。
 しかし、何より厳しいのは食事が一日1000キロカロリー程度。4000キロカロリーは必要とされる労働環境下ですので、たちまち栄養失調になります。「夕食を食べながら、隣の仲間と話をしていたんですね。そうしたら、急に返事がなくなる。どうした、と肩に手を置いたら、ぱたっと倒れた。座ったまま死んでしまったんですね。毎日同じものを食べ、同じ仕事をしている仲間。あすはわが身と思いました」

 上の写真で投影している絵は、死んだ仲間の埋葬風景。火をたいているのは火葬ではなく、凍った土を溶かすため。もえつきるころ、15センチほど掘れる。これを3回ほど繰り返し、まとめて数人を埋めるというのです。だれが埋められたのか記録も残らず、今も犠牲者が判明しないのです。
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 パネルの体験も、死を死と思わなくなる現実や、孤島に取り残されて飢餓線上をたどった体験、戦闘の凄惨な現実など、多くの人に見てほしいものばかりでした。シベリア抑留を含め、戦争さえなかったら、こんな体験をしなくて良かったのに、とつくづく思わされました。
 人が人を殺す、ということを当たり前にしてしまうのが戦争の本質。しかも、それは戦場に限った話ではありません。将来、どんな場面に直面するにしても「殺し合いだけは避けたい」という単純だが大切な思いを強くし、それだけでも避けるように知恵を絞り、行動していきたいとの思いを強くしました。
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 この戦場体験放映保存の会との連携の体験は、信州戦争資料センターとしての展示会に生かされていきます。真摯な方たちとの出会いは、確実に前進の力になりました。中田事務局長はじめ、会の皆さんが毎回展示に足を運んでくださり、現在も同じ方向を向く同士として、頑張っています。

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