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マンガ版逃げ恥のみくりが嫌いだ(2021/05/21加筆修正)

1.みくりは無責任な思いつきを言う。私はそれで何回も失敗したのに。


 星野源とガッキーの逃げ恥婚報道を見て、「おお、お似合いだね、おめでたい」と祝福した。逃げ恥は私が珍しく毎週フォローしていたドラマだった。最初はあらすじだけを見て「昔ながらの親のつてで結婚する奴で、都合のよい大人しい男が突然降ってくる女向けのポルノやろ」と馬鹿にしたが、周りの評判があまりにもよいから試しに見てみたら、とうとうはまってしまった。
 そんな喜びの最中、祝賀ムードに反することを思い出した。私はマンガ版逃げ恥のみくりが嫌いだということを。しいて言うとドラマ版もあまり好きじゃない。マンガ版でもドラマ版でも、みくりは無責任に思いつきでものを言う。そこが嫌いだ。
 実は私にも思いつきでものを言う癖がある。それで何回も失敗した。思いつきの実現のためにリスクを取って行動すれば、周りはまだ大目に見てくれる。それでも損失が大きかったり、周りが期待する成果が出せないと迷惑になる。
 だから、私は無責任な思いつきをよいとは思わない。責任を取る度量や信用、行動力を伴わないと思いつきは害だ。しかし、マンガ版でもドラマ版でもみくりは、平匡を口説いて結婚生活を維持する時以外、思いつきを平気で言う。しかもリスクを取る責任感が見えない。それで許されるのは妬ましい。
 「小賢しい」という呪いの言葉は、向こうの都合を無視した思いつきへの評価かもしれない。思いつきの言葉は、何も知らない癖に知ったかぶっているとの印象に与えかねない。これに学歴は関係ないが、高学歴ほど悪印象を与える。「小賢しい」とはマイルドな表現だ。

2.無責任な思いつき屋は自分をアイディアマンだと思い込み、商品企画職をしたがる

 みくりは就活では商品企画などの仕事を探していた。私もそうだった。だからいう、無責任な思いつき屋は自分をアイディアマンだと思い込むと。就活では商品企画職をしたがると。そして実際の商品企画職はリスクを取る態度を見せながら調整や交渉を行うので、無責任な思いつき屋は採用されないと。
 思いつきが素晴らしい機転やコペルニクス的発想の転換になることもある。しかし、責任を取る度量や信用、行動力を伴わない限り、普通は職場でも家庭でも嫌われるだろう。特に技術者や理系研究者で、確実なソースや現実に即した理論がないと承知しない人の場合、無責任な思いつきは激怒するだろう。セレンディピティを尊ぶ研究者もいるが、思いつきがセレンディピティになるとは限らない。平匡さん優しいね。
 だから、友人である安恵の誘導で商店街活性化の仕事をはじめた下りは特に嫌いだった。みくりが思いつきなのかアイディアなのか判別できないことをポンポン言うが、それが歓迎されて実現化していく。
 せめてみくりがリスクを取る態度で方々に頭を下げてまわるシーンがあったら、そこまで嫌いにならなかった。おじさんたちに若い女だからと最初は馬鹿にされても熱意を持って説得するシーンがあると百点満点だった。リアルじゃそううまくいかない。ご都合主義でもおかしくないおとぎ話とわかっていても不愉快だった。妬ましい。

3.それでもドラマ版みくりは真剣な仕事ぶりと風邪の看病エピソードを見てしまうと嫌いになれない

 しかし、ドラマ版みくりは嫌いになれない良いキャラだった。ガッキーがかわいいのも大きいが、マンガ版より好印象なキャラクター設定だった。まず、真剣に仕事をする。派遣先でのコップ洗いという不本意な仕事も丁寧に取り組む。情熱大陸風の演出とガッキーの爽やかで真剣な演技が効いてる。女優と演技の力は大きい。本当は四角い部屋を丸く掃くタイプなのに、仕事では四角い部屋を角の角まで掃く。働く人は美しい。
 彼女にはそれだけではなくホスピタリティがあった。平匡が風邪をひいて家事代行サービスを遠慮したのに、本気で心配して甲斐甲斐しく看病するところには胸を打たれた。仕事終わりに真剣な話をされても、立つ鳥跡を濁さずで爽やかに帰った。しかも彼女ときたら、土鍋でおじやを炊いていた。普通に料理ができる。
 いい子だと素直に思えた。かわいい系美人にあんなところを見せられたら、全男性がガッキー演じるみくりの味方をする。私でもする。たとえ終盤で自己中で感情的な女になっても。


4.一方マンガ版みくりは甘ったれで図々しい(ように見える)

  一方でマンガ版みくりには全く好きになれなかった。マンガ版もマンガ版で面白い。プロットがなかなかうまい。それでもみくりは甘ったれで図々しいと思えて嫌いだった。ドラマ版とは全く印象が変わる、風邪の看病の下りのせいだ。(画像はコミックシーモアの無料立ち読みページから拝借しました)。

風邪なのに帰ってきたシーン


風邪の平匡を放置して帰り、母親に諭されて戻ったのだ。
 帰れと言われたら帰ってもいいのはもちろんだ。ドラマ版ほどのホスピタリティは求めないし、結構こんな感じの人は多いんだろう。しかし、母親に諭されて戻るから、母親が注意しないと何もしない、恐ろしく気の利かない甘やかされた娘に見える。私も気が利かない甘ったれけど。
 「私が風邪をひいてる時、旦那は『食事は僕が用意するよ』と言ったのに、自分の分の食事しか用意しなかった」と夫に憤る妻の話はよく聞くが、それに通じるものを感じた。
 そしておじやの下りで私は違和感を抑えきれなくなった。

おじや1

おじや2

オカンに作り方聞くんか?作り方聞くのは別にええけど、ついでにおじや食べるんか?病人が後でレンチンできるように残しとかへんの?せめて家主に断ってから食べへん?

おじや3

後でおじや代払ったから、食べてもええってもんでもないと思うよ?動けるようになっても病み上がりの人間がなんか食べたくなったら、冷凍うどんを調理するよりおじやを温めた方がましだと思うけど?

5.無責任に思いつきでものを言うわ、甘ったれだわ、図々しいわでマンガ版みくりは嫌い

 そう、私も無責任に思いつきでものを言うし、甘ったれで図々しい。でも当然の報いがあった。せやけどなんでこの女は肯定されてんねん。うちが否定された分返せ(何を返すかは不明)。
 時代錯誤で女性蔑視的なものいいになるが、家事上手で真摯でホスピタリティのあるドラマ版みくりは姑も安心のいい嫁である。一方で、マンガ版みくりは小賢しくて甘ったれで図々しい嫁だ。お姑さんが優しくてよかったね。
 それでもマンガはテンポがよくて面白かった。作者はストーリーテリングに定評があるようだけど、それは本当だと思う。なぜならマンガ版みくりが嫌いなのになんだかんだで読んでしまったから。そしてある程度読んで思った。やっぱりマンガ版みくりが嫌いだ。


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