見出し画像

次代の教育のあり方を模索しよう

 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実という大言壮語が教育界を席巻している。教員であれば、もはや誰もが耳にしている言葉だ。
 本書はこれからの教育のあり方について、幼児教育、海外教育、協同学習、フレネ教育、個別化・個性化教育などさまざまな視点から捉えられている。

 先日、NHKで「学校のミライ」という番組が放映された。現在、日本では不登校児童・生徒が30万人にも上り、これまで揺るぎない基盤を築いてきた学校教育がイノベーションの必要性を問われている。これだけ時代は劇的に変化しているのに、学校教育はほとんど変わっていない。教育基本法は戦後ずっと使われているし、画一化された管理教育がずっと蔓延っている。

その抜本的改革を目指すのが「個別最適な学び」と協働的な学びの一体的な充実であると考えている。もっとも、日本がこれまで大切にしていた一斉指導そのものを否定するわけではない。ねらいによって、十分効果的であるからである。


要は「観」の転換である。教師観、子ども観、教育観。海外の教育書の翻訳をされている吉田新一郎さんに教えてもらった、こんな図がある。

これを読むと、「それは昔からそうだ」と思う方もいるかもしれない。でも果たして本当にそうだろうか。例えば学びだけでなく、学校生活の中でも、前へならえの整列、体育座り、シャーペンやペンの禁止、赤白帽子の着用など私たちがもっと存在意義を見直す必要のあることが多々あると思う。


…あまり横道に逸れてはいけないので、本の内容へ。本書はさまざまな視点からテーマについて捉えられている。

私が注目したのが、大豆生田啓友さんが書かれた幼児教育。学校はもっと幼児教育から学ぶべきだと強く思わされた。例えば、保育園や幼稚園では、子どもの自発的な遊びから活動をつくり、取り組みとして発展させていくことが多い。そして、環境を整える。ある制作をする場合、その材料をたくさん準備しておいて、子どもが自身の必要に応じて自由にアクセスできるようにする。指導者は環境をガッチリ整備しておくのだ。
さらに、本章では対話による子どもの声を聴き、市民性を養うことの重要性も説かれている。サークルタイムを通して、子どもたちが遠足に行きたい場所を決める場面は、とても学べるものがある。


次に「きのくに子どもの村」の実践。第14章。1992年に設立された当校は、自己決定、個性、体験をキーワードとして、「プロジェクト」と呼ばれる体験学習を中心にした実践を続けている。

プロジェクトは週14時間も当てられらている体験学習だ。実際生活(衣食住)と結びついたホンモノの仕事であり、知性と手と体を鍛える総合学習である。本書で紹介されているのは、「学校から寮への近道づくり」。これだけ見ても何とダイナミックで、子どもらしいプロジェクトかが、お分かりかと思う。子どもたちがどうしてこのプロジェクトを選び、どのような問題に向き合い達成していったかはぜひお読みいただきたいところである。

このプロジェクトはカリキュラムの中心であり、基礎学習や個別学習など教科の学びがここで活用されていくのだ。

本書では、他にも愛知県の緒川小学校や山形県の天童中部小学校の単元内自由進度学習の実践、知識構成型ジグソー法による学習、奈良の学習法、協同学習や学びの共同体、フレネ教育など多岐に渡っている。


これからの教育を捉え直す際には、これらの実践はやはり知っておかないといけないだろう。
本テーマに関する本は続々と発刊されているが、体系的に知りたい方は是非読まれてはどうだろうか。章立てが細かいので、読みたいところだけ読むことも可能だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?