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とある一人の男が占い師になるまで #5 ~信用金庫職員編~

研修期間を終え、M支店への配属が決まり、不安と緊張を抱えながらも、配属日初日は支店長と1年先輩の女性職員のお陰で、少しだけ前向きな気持ちになれた一人の男。
そしていよいよ、この男の社会人生活が本格的にスタートする!

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「それでは、新入職員を紹介します」

いよいよ、今日からM支店での勤務が本格的にスタートする。
その日の朝、支店長が支店の職員を全員集めてくれて、私を紹介してくれた。

「今年入社した山内君です」
「それじゃあ、挨拶をしてください」

支店長に言われ、私は全員の前で挨拶をする事になった。
自慢じゃないが、私は人前で話すのは本当に本当に苦手なのだ…。
気持ちを落ち着かせようと思っても、身体が勝手に緊張して震えてしまい、それに伴って声も震えてしまうのだ。

『し、新入職員の山内です!』
『い、一生懸命頑張っ……頑張りますので、よろしくお願いします!』

案の定、声が震えていた上に、途中で噛んでしまっていた。
それでも、職員の人達は全員拍手をしてくれた。

(よ、良かった……。)

挨拶が終わり、担当業務へ就く事になる。
どうやら、私は1年間本出納業務を担当する事になるらしい。

最初は先輩職員と二人で業務を担当しながら仕事を覚えていき、慣れてきたら一人で本出納業務を任される事になる。

支店長の話によると、本出納業務とは、支店の大切な現金を管理するところであり、支店の心臓とも呼ばれているところで、絶対にミスの許されない大切な業務という事だ。

もし手元の現金と機械の数値が1円でも合わなかったら、一致するまで職員全員が帰れないので、「現金その場限り!」という言葉を常に意識し、緊張感を持って仕事をしなければいけないとの事だ。

何かその話を聞いただけでプレッシャーを感じてしまった……。

詳しい業務内容については割愛させて頂くが、簡単に説明すると、機械で出し入れするお金だけでなく、新札や両替機用のお金などの手持現金も扱っているため、特に手動でお金を出し入れする際には十分注意しなければいけないとの事だ。

そして、気になる私に仕事を教えてくれる先輩職員だが、入社して10年目ぐらいのベテランの女性職員であり、支店長の話によると「厳しい人」という事だ。

その先輩は普段は良い人でしっかりと指導してくれるのだが、怒ると結構怖いし、日によって機嫌の善し悪しが若干ある人だったように思えた。

私は何回も先輩職員に注意され、時には叱られ、その都度メモ書きをして、同じミスを繰り返さないように必死に仕事を覚えていった。

ただ、その先輩職員も含めて、M支店にはそんなに嫌な人というのはいなかった。
もちろん、内心腹の立つ事が全くなかった訳ではないが、私にしてみれば、同期生たちとの研修期間に比べたら遥かにマシな方だったと思う

1週間、2週間と経ち、4月も終わりに差し掛かった頃、M支店の歓送迎会が開催された。

歓送迎会……

正直、あまり気持ちは乗らなかったが、私も新入職員である以上、ある意味主役の一人でもあるため、出席しない訳にはいかなかった。

そして歓送迎会当日、テンションが上がってしまったせいか、私はとんでもないビッグマウスな発言をしてしまったのだ!

To Be Continued ➤


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