とある一人の男が占い師になるまで #4 ~信用金庫職員編~
M支店への配属が決定し、そのまま支店長とともにM支店へ向かう事になった男だが、同期生たちと別れられてホッとしていたのもつかの間、今度は「M支店の職員たちと上手く打ち解けられるのか」という新たな不安と緊張感が湧いてくる。
支店長に案内され、M支店内を一通り見学したが、初日は特段何事もなく終了しようとしていた。
その時、意外な人物が男に声をかけたのだった!
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「大丈夫ですか?」
出勤簿に判子を押し、退勤しようとしていた私だが、その時、一人の女性職員に声をかけられたのだ。
見ると、私とほとんど年齢が変わらないぐらいの若い女性だった。
一瞬、私は驚いてしまった。
というのも、同期生たちの嫌なイメージが染み付いてしまったせいで、私の中では同年代の人達に対してスッカリ苦手意識が芽生えてしまっていたからだ。
研修中も、同期生の女性職員たちは、男性職員たちにつられて、私に対してだけやたら距離を置くような感じになってしまっていたのだ。
それだけに、まさかいきなり同年代の女性職員から声をかけられるとは思ってもみなかったので、私にとっては物凄く意外な出来事に感じられたのだ。
『あ、は、はい、大丈夫です……』
咄嗟の事で、私はしどろもどろな返事をしてしまった。
「緊張しています?」
それでも、その女性職員は優しく声をかけてくれた。
『そ、そうですね……』
どうやら緊張しているのがバレバレだったようだ。
「私も去年の春に入社したばかりで、今年から新しい仕事を任されていて、これから覚えなければいけない事がたくさんあるんですけど、一緒に頑張りましょうね!」
どうやら、その女性は去年の春に入社したとの事で、私の1年先輩にあたる職員のようだ。
緊張している私に気を遣ってくれたのか、あるいは去年の自分の事を思い出して声をかけてくれたのかは分からないが、それでも私の緊張を少しでもほぐすために声をかけてくれたのは間違いない。
『はい、ありがとうございます!』
私はその時本当に嬉しかった。
同期生たちとの嫌な思い出が染み付いてしまっていて、特に同年代の人たちに対しては軽く人間不信に陥っていただけに、配属日当日に1年先輩にあたる同年代の女性職員から声をかけてもらった事は、私の心に救いを与えてくれた気がしたからだ。
もしかしたら頑張れるかも……
とりあえず同期生たちの事は忘れよう。
今はM支店で頑張る事だけを考えよう。
ほんの些細な事に過ぎないが、これだけでも明日からの社会人生活に僅かながら希望を抱く事ができたのだ。
そして、週明けからいよいよM支店での勤務がスタートする!
今度は一体どんな試練が待ち受けているのだろうか?
果たして、私のような人間が本当に信用金庫の仕事をこなしていけるのだろうか?
To Be Continued ➤
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