プチDAYS「Senry Manryの結束」
「あんた、頭大きくなったんちゃうん?」
いきなりのセリフに寝間の上の時差ぼけのSenryは飛び起きた。
「知らんけど」
失礼しまくらちよこ。
言いたいことを言う。それが兄妹のいいところでも言っていいことと悪いことがある。僕は寝ぼけ眼をクシュッとこする。
「完全に昼と夜とが逆転してるね。晩御飯、あの店まで車で送ったろか?」
「ああ、お願いするわ。助かるしー」
Senry にとって朝ごはんである夕食が始まる。少し早い5時半だが Manry がお店に「もしもし、兄が一人で行きますんで、カウンターよろしくお願いします」と電話をしてくれる。持つべきものは口悪くても妹や。
「ほなら、明日の朝、パパとママに一緒に会いに行くで。電話するわな」
帰省する度にカウンターに現れてグラスワインとイタリア料理の数々を啄むシニアおやじを店の人は笑顔で今夜も(体内は朝)迎えてくれた。
「またN Yから帰ってきてはるんですねえ。何にしますか?」
「ええ、オススメは黒板に書いてある、ですよね?」
「よう分かってはりますねえ」
「はい、じゃあ、甘いトマトとプロシュートのカプレーゼを前菜に、タコのアラビアータ!」
静まり返ったニュータウンの中とは思えない活気と、次々に作り出される「ここはローマか?」と思うほどの美味しそうな料理の香りをクンクンしながら Senry は「ぷは」とまずオリオンビールを開ける。
スパイシーなオリーブオイルにパンをつけて食べる。ピザ窯のある厨房が覗き込めるカウンターの端は隠れ家である。誰からも死角になった、僕がこの店で一番好きなスポットだ。
料理人の旦那さんと接客の奥様が二人でやられている、実家のあるニュータウンでは有名な人気店。昼はスーパーで鰹のタタキ、もずく、トマト、マヨネーズで和えたスパゲッティサラダ、しじみの味噌汁、をつまんだっけ、の Senry。
子供の頃使っていた寝間と毛布と掛け布団とそばがら枕。帰郷する度に背中の筋を寝違える。今回も夜中に(日中ね)なんども寝返りを打ちながら目を覚ます。背中が痛い。やっと眠れた頃に鳥が Senry をちゅんちゅん起こす。
「はい、カプレーゼ、お待たせしました〜!」
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