プチDAYS 「RYOKO Meets Jazz」
以前から「森山良子さんはジャズを歌われないのか な?」いろんな人に聞いていた。「森山さんが歌う日本語のジャズを聴いてみたい。」と。それに興味を持ったある人が「マネージャーさん知ってるから今度伝えてみるね。」と言ってくれた。でもなかなかそれが現実に伝わっていたのかどうかはわからない。僕がオリジナルを良子さんに書きたいと言ってもそんなに簡単にその夢が叶うほど簡単な世界ではないのはわかっていた。だけども言い続けることが僕自身のモチベーションにもなった。だから「もし歌われるなら?」その「もし」をイメージしてアイデアを練る日々が続いていた。
例えば「昔亡くなった大切な人を想う」歌詞を。「ぞんざいなくらい若い時はシャイだったあの人が今は天国で何をしてるかしら? 鍵は左のポケットにちゃんと入れてるかしら? 相変わらずサラダはボールのままぱくついてんのかしらね。あたしも歳をとったけど 、そんな私を人混みの中でも今でもちゃんと見つけてくれる?」アイデアはそんなふうにどんどん広がっていった。
ラスベガスの空港でレンタカーを借りてデスバレーを目指しドライブする2人の物語は? 喧嘩もするし相変わらずの頑固さに辟易しながらも何処かコメディな2人の丁々発止の会話なんて面白そう。セドナでモーテルに泊まったらお互いに別々の行動をとって全く滞在中は会わない。良子さんはプールで魚になり相手の男の方は勝手に街で肉をオーダーする。そんなふうに時間を使っても移動の車の中は2人並んでた。いつだって人生はゴールの見えない旅だけど人生が重なり合う貴重な時間、それがドライブなのだ。
ん、いいかもしれないが、もうちょっと練ろう。
ジミースコット、エラ、サラボーン、ナンシーウイルソン、シーラジョーダン、、、、そして最も器楽的と言われるボーカルを歌うトランペッターであるチェットベイカー。良子さんに曲を書くという耳で聴くと、ジャズの名作にはどれだけヒントが隠されていることか。別に隠してないのだろうけど、改めて発見が多い。
そうこうしていてある日のこと。アメリカのマネージャーであるKayが直接、
「秋元康様、今度大江千里トリオのブルーノート公演へいらっしゃいませんか?」
となんとメールを出したのだ。知らないのに。普通日本人だと躊躇するが彼女は躊躇しない。彼女にそれをいうと、
「ええ? なんでですか? 素敵な音楽を素晴らしい人たちに聴いてほしいと想うのは当たり前のことでは?」
と真顔で返された。
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