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ブルックリン物語 #78 「ずっと探している。」

パンツに穴が開いた。

新しい家の洗濯機乾燥機の性能がよいので洗濯魔になっている。そのせいか? 尻の穴部分に大きく開いたパンツや前部の片方だけ開いたパンツもある。毎日家を出る前は新しいパンツを買おうと勇んで出かけるのだが、結局外に出たら出たで別のことに神経が行き、別の買い物をしてしまい、食事をして散歩をして帰宅をすると「あ、パンツを買ってない!」ことに気がつく、あとの祭り。

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「Senriさんですか? 僕は音楽をやっているんですがこの路線にお住まいなのですか?」

日本人のドレッドヘアーの若い男性が地下鉄の中で話しかけてきた。驚いて「え、あ、まあ、」と返事をしていたら彼は「今日はこれから何をされるんですか?」と質問してきた。何をするかって言われると、、、

「ランチを食べようかなっと。で、その前に薬を取りに行って、銀行に小切手を入れに行って、、、、、」

この不意打ちですでにパンツは僕の頭にないことがわかる。

彼にバイバイを言って別れた後、改札を抜けて笑った。「パンツを買う」ことを肝に銘じようと思った。駅の近くに行きつけの薬屋があるのでまずそこで薬をもらおうと思う。

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ところがその日はあいにくの日曜日。薬屋は閉まっていた。しょうがないので銀行へ。銀行はATMが開いていたので小切手を振り込む。一個完了。次はサクッとランチ。近くにメキシカンがありそこで好物モレを食べた。また一個完了。今日のミッションが一つずつこなされてゆく。お腹がいっぱいになり外で出ると「天気がいい。別のルートで家に帰るのもいいな。地下鉄を使わずに歩いて帰る。秋だし!」

この時点でまたパンツのことは忘れている。

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てくてく歩くと国道沿いに品のいいガラクタを置いている店を見つけた。電灯や食器、ソファやシングルチェア、テーブル、衣服など一歩足を踏み入れると宝探しの気分だ。店番をしているのは最近はやりのジーンズを上まで引っ張り上げてギュッと絞った履き方をしてる男の子。レジでジャズを聴いている。僕は何気にうろうろしていて目に飛び込んで来たのが一枚の額縁に入った絵だった。

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