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まるで宇宙船 建築美に浸り五感を呼び起こす〜新宿瑠璃光院白蓮華堂とはどんな寺?〜

新宿の南口、人々が行き交う雑然とした交差点を曲がり、歩いてわずか3分、ひっそりと佇む白い石畳の小道を入ると、まるで空中にポッカリ浮いているような真っ白なホワイトコンクリートの柔らかな曲線に覆われた建築物が現れる。

新宿瑠璃光院白蓮華堂HPより

まるでSF映画でにでも出てきそうな外観のその物体は離れたところから見ると寺だとはまず気づかないだろう、入り口に設けられた蓮の花が浮かぶ池が現れるまでは。

寺正面玄関前の睡蓮の池

建物の足元がキュッと窄まっていて上に向かって広がるその独特なフォルムは建築家竹山聖さんによるもので白蓮花がフワッと咲いていく瞬間を思わせる斬新なデザインに仕上がっている。

Instagramをよく見る人であれば目にしたことがあるであろう京都の寺、紅葉や青葉が写経机に映る光景の別世界のような美しさで有名な京都八瀬の瑠璃光院とこの新宿瑠璃光院白蓮華堂は、同じ無量寿山光明寺の分院なのだそうだ。それならこの芸術的な外観にも納得がいく。

一見不安定に見えるこの建物は、地下33メートルまで掘られた杭と一面堅固なコンクリートで支える設計により、なんと震度7の3倍くらいの揺れを想定されて建造され、一般的な避難拠点の基準を遥かに凌ぐ耐震性を備えているという。

現代のすべての人に寄り添う寺を目指して

新宿瑠璃光院白蓮華堂の美に対するこだわりは外見だけでない。寺の内部の隅々にまで趣向を凝らした建築オタク垂涎の寺なのだ。

ランダムな細い窓は計算され尽くした配置

壁に設けられたランダムな細い窓の配置は全て計算され尽くしていて、中庭や本堂、如来堂の内部に風と光を導き、美しく快適な空間を演出する。

新宿瑠璃光院白蓮華堂HPより

中庭の水盤には、自然を感じる風情のある音色が響き、階段室にはこの水の音を増幅して響かせる装置が埋め込まれている。そして上階から覗くこの絶妙に下に窄まる紫色の階段室がハッとするほど美しい。

そこに訪れる人が光や風、水の流れやその音色、美しいこだわりの建築に彩られ、癒され、感性が刺激され活気づく。コンサートや仏教講和、坐禅の会などが毎月のように開催され、檀家だけでなく一般の人も気軽に参加でき、この五感を震わせる卓越した美の空間に浸れる、まるで美術館のような寿楽堂のような場所なのである。

イベントの一つマインドフルネスと薬膳がゆの会に参加した。

マインドフルネスと薬膳がゆの会

会場である寺の4階の部屋に入るとお坊さんが3名、参加者が8名ほど既に集合、腹式呼吸の練習からスタートである。瞑想する際は雑念の深追いをしないよう意識の保ち方、足の組み方と姿勢のレクチャーが続く。その後、隣の空ノ間に移動し、いよいよ呼吸と瞑想のマインドフルネスを実践する。座布の扱い方を学び、15分位の瞑想を2回実践する。

新宿瑠璃光院百蓮華堂HPより

空ノ間は幅5.5mほどの細長い空間だが、天井が高さ8.7mとかなり高く、真っ白な壁は平行ではなく傾くように設計されている。これも人間は肩から上で空間の広さを認識するために広く感じるようにするための工夫だ。目を瞑るとボーっという換気の音が聞こえるので、上部に吸い込まれ空に向かって宇宙の果てまで連れていかれるSF映画ばりの妄想が頭をカスめたが慌てて追い払う。普段は1分と持たない集中力なのだがその後は意外にも雑念は湧かない。家でもできるといいのだが、まず無理である。まんまるい座布のおかげで足も痺れず、終了後は頭がスッキリして気分がいい。自律神経が整い免疫力の向上や血圧の低下、眠りの質の改善、ストレス耐性の向上などに効き目があるという。

そして瞑想が終わった後いただく薬膳粥。これがまた美味い。

薬膳粥

しかも下のメニューにあるように11種類もの穀物が入っていて8種類ほどのトッピングが用意されている。

薬膳粥の食材と効能が書かれている

心尽くしの優しいお味のお粥で香の物も美味しく、お坊さん方も気さくにお話をしてくださる。こんな心安らぐ至福の時間を参加費500円で過ごせる。

土曜の午後のコンサート

違う日に開催されている土曜の午後のコンサート(第3土曜日)にも参加した。
如来堂に置かれたグランドピアノから奏でられるショパンやシューベルトなどの美しく心地よい音色が優しく心を包み癒してくれる。この日は、一見ランダムに壁に配置されているように見えた小窓から光が差し込みお釈迦様が光り輝く御姿を拝見できた。これもすべて完璧に計算され尽くした窓の配置なのだそうだ。感受性豊かで美のこだわりの強い亡くなられた先代の意向だという。

壁のランダムな窓からの光で美しく輝く阿弥陀如来像

子孫に負担をかけない納骨堂という墓の選択

ここ新宿瑠璃光院白蓮華堂には墓もある。
新宿瑠璃光院の墓は、期待を裏切らない美的感覚溢れた、新しい時代を見据えた納骨堂になっている。もしかしたら納骨堂と聞いてもイメージが湧かない方もいるだろう。仕組みとしてはいわゆる立体駐車場をイメージするとわかりやすいかもしれない。

お参りの空間はゆったりとしていて周りと仕切られ、四人ほど腰掛けられる椅子や、荷物置きなどが用意されている。カードを挿入すると、十秒程で曇りガラスの扉が開く。

落ち着いたお参りの部屋

そこには心落ち着く美しい壁絵を背景に、骨壷の入ったBOXが嵌め込まれた立派な墓石、その両脇には新鮮な供花が手向けられ、亡くなられた人の写真と戒名や日付の入った電子アルバムが添えられている。そこで香を焚きゆっくりとお参りして、親族と語らい故人との時間を過ごすことができる。掃除や草抜き、供花の用意も不要という手軽さと新宿という便利な立地、天候に関わらず普段の生活の間に気軽に立ち寄れるのもありがたい。

もちろん葬儀や法要も執り行ってくれる。

合同法要

継承する親族がいなくなっても、阿弥陀如来像を安置する本堂の須弥壇と宇治にある天ヶ瀬メモリアル公園内の月の庭に埋葬され、永代にわたり供養してくれるという。生前から予約することももちろん可能だ。墓じまいなどの心配なく子孫に負担をかけない納骨堂という墓の形も今後は増えていくのではないだろうか。

美と心地よさにこだわり抜いた寺で日常のひとときを過ごしたり、いずれは迎えることになる永遠の眠りの場所の選択肢としても検討してみてはいかが。




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