夢中

ある1人の少女がいた
友人はその少女を好きだった
でも俺もきっとめちゃくちゃに好きだったと今では思う

ある日俺らは3人で高台に登った
そこから見る景色はとにかく美しかった
目の前に広がるは海
それはそれは壮大な枯山水かのようだった
そこに浮かぶ無数の小さな島
その島のひとつはまるで松の生えた氷山かのようだった
頂上から流れ落ちる滝のような大河
その大河に取り憑かれた3人の時間はしばらく止まっていたと思う
気づいたら俺は隣にいる少女を抱き締めていた
再び時が流れ出した
初めて時の流れを心地よいと感じた

どれくらい時間が経っただろう
1日かもしれなかったしあるいは10年だったかもしれない

ある日再び少女とばったり会った
そこで見た少女はとにかく美しかった
きっと俺はそのとき少女の親友の恋人だったんだと思う
少女に触れることすらできない今を死ぬほど悔やんだ
やはり時の流れは残酷だった
歯がゆさと恨みと呪いと切望とが入り混じり、自分がもう壊れる寸前というところで、突然何かが切れる感覚を感じた
切れたのが時の流れだと認識するまで幾分か時間がかかった
やがて止まっていた時が急速に戻り始め、俺は、目を開けた

少女は君だった
他でもない君だった
君だったことがどれほど嬉しかったか、どれだけ救いだったか
俺はまだ夢の中を漂っている

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